新型及び季節性インフルエンザに係る流行株の予測等に資するサーベイランス及びゲノム解析に関する研究

文献情報

文献番号
202019004A
報告書区分
総括
研究課題名
新型及び季節性インフルエンザに係る流行株の予測等に資するサーベイランス及びゲノム解析に関する研究
課題番号
H30-新興行政-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 秀樹(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 玲子(新潟大学教育研究院医歯学系)
  • 渡邉 真治(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 高下 恵美(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 岸田 典子(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター)
  • 中村 一哉(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センタ-)
  • 藤崎 誠一郎(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター)
  • 白倉 雅之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 桑原 朋子(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 高山 郁代(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
21,218,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
季節性および新型インフルエンザウイルス株サーベイランス体制の維持・強化。国内においては地衛研、海外においては周辺諸国よびGISRSと連携し、流行ウイルス株の収集力と解析方法の改良とそれらの国際標準化を促進する。
地衛研から分与された臨床検体を用いてウイルスの分離効率の改善が期待できる細胞株の検討や分離株を用いて抗原解析法の改良を試みる。
WHOインフルエンザ協力センターとしての国際貢献およびわが国のワクチン株選定への基礎データを得る研究を行い、国内および世界のインフルエンザ対策に直接的に参画し、研究から得られた成果、情報を適宜提供し、国内外の対策に貢献する。
研究方法
A/H3N2亜型ウイルスの分離・増殖効率を改善する細胞株として、上気道咽頭由来のDetroit 562細胞についてAH1pdm09、Bビクトリア系統、B山形系統ウイルスの増殖性の評価を行った。
A(H3N2)流行株の抗原性解析系として確立した中和試験法Focus Reduction Assay (FRA)の更なる改良と標準化を行った。
2019/20, 2020/21シーズンに国内および海外から収集した分離ウイルス株について遺伝子配列を決定し、アミノ酸解析、進化系統樹解析を実施した。
地衛研における薬剤耐性株検出検査の精度評価試験を実施した。
新潟市内の高齢者施設のスタッフと入所者に対し、2020-2021年シーズンHAインフルエンザワクチン(4価)を用法に基づき皮下接種した。接種前と接種3-4週間後の2回、血清を採血した。
結果と考察
サーベイランスに用いてきたMDCK細胞の代替となる細胞を検索し、咽頭由来株化細胞のDetroit 562細胞について検討し、導入可能かを検討した。A/H3N2亜型だけでなく、A/H1N1pdm09亜型、B型山形系統およびB型ビクトリア系統ウイルスも、同程度増殖し使用できることになった。
近年のH3N2亜型のノイラミニダーゼ(NA)は151番目アミノ酸アスパラギン酸がグリシンや他のアミノ酸に置換(NA D151X)することでNAのシアル酸結合能及び感染能を獲得することを確認した。これは、中和試験法でのヘマグルチニン(HA)の正確な抗原性評価を妨げることから、MN/FRAの中和反応時にNA阻害薬であるオセルタミビルを添加する新手法を取り入れた。
2019/20, 2020/21シーズンのウイルス分離株について遺伝子解析を実施した結果、A(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B型Victoria系統ウイルスの遺伝子が多様化し抗原性が異なる集団も存在するため、来シーズンへ向けての流行ウイルスの監視が必要である。
2019-2020年シーズンにおけるインフルエンザワクチンの効果はA/H1N1pdm09を除き、成人層、高齢者層共に良好であった。今年度からA/H1N1pdm09とA/H3N2のワクチン株が変更となったが、A/H1N1pdm09は抗体価上昇が低く終わった結果であった。来年度も同じ株が選択されれば抗体価は徐々に上昇していくと考えられる。一方で、A/H3N2は新しい株に変更になったにもかかわらず、高い抗体価の上昇が認められ、免疫原性が高いことが示唆された。調査を行った情報は、次のシーズンのワクチン株の選定のために有益であるため、今後も調査の継続が必要である。
動物由来インフルエンザウイルスのヒトへの感染リスク評価試験の一環として、インドネシア及びネパール国において分離された株の遺伝子解析及び抗原性解析を実施した。
国内およびWHOのインフルエンザ株サーベイランスおよびワクチン候補株の検索と選定を支援するための抗原解析法の技術改良やHA, NA蛋白の変異検索など基礎的研究を進め、これらの基盤強化への貢献をした。
 また、本研究班では薬剤耐性株検出検査精度の調査の調査を行い、本研究の目標達成に前進が見られた。さらに、各年度の国産ワクチンの有効性評価の一環として、免疫原性を国際基準に照らし合わせて評価した。
結論
ウイルス分離・増殖効率を改善する細胞株の探索を継続した。
前年度に確立したA/H3N2亜型分離株抗原性解析法に感染細胞巣減数試験法(Focus reduction assay, FRA)をさらに改良し正確な抗原性解析ができる系を構築し検証した。
ワクチン接種者のヒト血清を用いることで、フェレット感染血清では捉えることができなかったA(H1N1)pdm09の抗原性の変化を捉えた。
A(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B型Victoria系統ウイルスの遺伝子が多様化し抗原性が異なる集団も存在するため、来シーズンへ向けての流行ウイルスの監視が必要である。
地衛研での薬剤耐性株検出検査精度が良好であることが確認できた。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202019004B
報告書区分
総合
研究課題名
新型及び季節性インフルエンザに係る流行株の予測等に資するサーベイランス及びゲノム解析に関する研究
課題番号
H30-新興行政-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 秀樹(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 真治(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 中村 一哉(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センタ-)
  • 岸田 典子(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター)
  • 藤崎 誠一郎(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター)
  • 桑原 朋子(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 高下 恵美(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 齋藤 玲子(新潟大学教育研究院医歯学系)
  • 白倉 雅之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 高山 郁代(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
季節性および新型インフルエンザウイルス株サーベイランス体制の維持・強化。国内においては地衛研、海外においては周辺諸国よびGISRSと連携し、流行株の収集と解析方法の改良と国際標準化を促進する。
地衛研から分与された臨床検体を用いてウイルス分離効率の改善が期待できる細胞株の検討や分離株を用いて抗原解析法の改良を試みる。
WHOインフルエンザ協力センターとしての国際貢献およびわが国のワクチン株選定への貢献をすべく研究を行い、国内および世界のインフルエンザ対策に直接的に参画する。
研究方法
A/H3N2亜型ウイルスの分離・増殖効率を改善する細胞株として、上気道咽頭由来のDetroit 562細胞について検討。
A(H3N2)流行株の中和試験法Focus Reduction Assay (FRA)の改良と標準化。
2018/19, 2019/20,2020/2021シーズンに国内および海外から収集した分離株について遺伝子配列を決定し、アミノ酸解析、進化系統樹解析を実施。
地衛研における薬剤耐性株検出検査の精度評価試験を実施。
新潟市内の高齢者施設のスタッフと入所者に対し、2020-2021年シーズンHAインフルエンザワクチン(4価)を用法に基づき皮下接種し、接種前と接種3-4週間後の2回、血清を採血した。
結果と考察
サーベイランスに用いてきたMDCK細胞の代替えとなる細胞を検索し、咽頭由来株化細胞のDetroit 562細胞について検討したところ、A/H3N2亜型だけでなく、A/H1N1pdm09亜型、B型山形系統およびB型ビクトリア系統ウイルスも、同程度増殖することが明らかとなった。
最近のH3N2亜型ウイルスのノイラミニダーゼ(NA)の151番目アミノ酸アスパラギン酸がグリシンや他のアミノ酸に置換(NA D151X)することでNAによるレセプター結合能、感染能を獲得することを確認した。これは、中和試験法でのヘマグルチニン(HA)の正確な抗原性評価を妨げていることから、MN/FRAの中和反応時にオセルタミビルを添加する新手法を確立した。
2018/19, 2019/20,202/2021シーズンの分離株について遺伝子解析を実施した結果、A(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B型Victoria系統ウイルスの遺伝子が多様化し抗原性が異なる集団の存在を確認した。
鶏卵分離埼玉株のノイラミニダーゼ(NA)蛋白を詳細に解析し、本株のNAがシアル酸レセプター結合能をもち、赤血球凝集素蛋白(HA)によらない感染様式で感染を成立させることを解明した。また埼玉株以外のHAでも、埼玉株以外のA(H3N2)ウイルスのHAと鶏卵分離埼玉株NAを持つウイルスを作製し、鶏卵で継代したところ、鶏卵で5代継代後もHAに変異は入っていなかった。したがって、埼玉株NAを持っていると、埼玉株以外のHAでも、鶏卵馴化による抗原変異が起こりづらいことが示唆された。
日本国内においてヒトからヒトへの感染伝播を起こしたと思われるオセルタミビル・ペラミビル耐性A(H1N1)pdm09およびバロキサビル耐性変異A(H3N2)を検出した。抗インフルエンザ薬耐性株は薬剤未投与患者からも検出されており、ヒトからヒトへの感染伝播の可能性が示唆された。
インドネシア及びネパール国においては、未だヒト感染例が絶えず報告されていることから、今後も継続的なグローバルサーベイランスの実施が必要であると考えられる。
ネパールで1例目となるA(H5N1)ウイルスのヒト感染例から検出されたウイルスは、ネパール周辺国の鳥の間で流行し続けているクレード2.3.2.1aのウイルスで、引き続き、この地域の国々では、A(H5N1)ウイルスへの感染リスクが大きいと考えられた。
結論
ウイルス分離・増殖効率を改善する細胞株の探索を継続し、国内およびWHOのインフルエンザ株サーベイランスおよびワクチン候補株の検索と選定を支援するための抗原解析法の技術改良やHA, NA蛋白の変異検索など基礎的研究を進め、これらの基盤強化へ貢献した。
薬剤耐性株検出検査精度の調査の調査を行い、地衛研での薬剤耐性株検出検査精度が良好であることが確認できた。
さらに、各年度の国産ワクチンの有効性評価の一環として、免疫原性を国際基準に照らし合わせて評価した。海外ワクチンの情報(非公開)と比べて、国産ワクチンは免疫原性が低いことが示唆され、今後の国産ワクチンの改良を検討する。
A(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B型Victoria系統ウイルスの遺伝子が多様化し抗原性が異なる集団も存在するため、来シーズンへ向けての流行ウイルスの監視が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019004C

収支報告書

文献番号
202019004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,218,000円
(2)補助金確定額
21,218,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,597,727円
人件費・謝金 0円
旅費 34,556円
その他 1,585,717円
間接経費 0円
合計 21,218,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
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