児童・思春期精神疾患の診療実態把握と連携推進のための研究

文献情報

文献番号
202018045A
報告書区分
総括
研究課題名
児童・思春期精神疾患の診療実態把握と連携推進のための研究
課題番号
20GC1019
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 隆(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小枝 達也(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部)
  • 小倉 加恵子(国立成育医療研究センター)
  • 奥野 正景(医療法人サヂカム会 三国丘病院 精神科)
  • 西牧 謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子どもの心の診療を実施していて、関係機関と連携を行った症例を収集し、診断名や年齢、連携を行った機関などに関する事態のあらましを明らかにして、子どもの心の診療実態と関係機関との連携に関する全国調査に向けた資料と影響することを目的とする。
また COVID-19が流行していることから、予期せぬ事態が生じた際の全国のこどもたちの生活・健康の実態を経時的に把握し、諸問題の早期発見や予防、さらには適切な政策や対策につなげていくことを目指す。
研究方法
1)精神科領域における調査(分担研究者 奥野正景)
児童精神科領域の研究協力者より、該当症例を収集し、分析を行った。
2)小児科領域における調査(分担研究者 小倉加恵子)
本邦の先行研究となる平成17~19年度柳澤班の調査をレビューし、平成19年度『「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会』報告書における三類型それぞれについて調査が必要と考えられた。本分担研究においては、第1型の一般の小児科医および第2型の子どもの心の診療を定期的に行っている小児科医を対象に実施することにした。小児科領域の研究協力者より、該当症例を収集し分析を行った。
3)関係諸機関との連携の視点からの調査(研究分担者 西牧謙吾)
処遇困難ケース(児童虐待)、視覚障害・聴覚障害と発達障害の合併例を中心に診療をしている国立障害者リハビリテーション病院における該当症例を収集し、分析を行った。
4)収集した症例の総合的なまとめ(研究分担者 小枝達也)
1)~3)の症例をまとめて、精神科領域小児科領域における症例全体像の分析を行った。
5)COVID-19が子どもの心に与える影響に関する調査
保護者と子どもを対象とした新型コロナ流行期におけるこどもの健康・生活に関する全国調査「コロナ×こどもアンケート」を実施する。対象は7歳から17歳の小児と0歳から17歳までの小児を養育している保護者とし、オンラインで実施する。
結果と考察
1)精神科関連では計91事例が収集された。連携先は医療・保健機関7事例、福祉機関42事例 教育機関35事例 司法4事例 その他(複数など)2事例であった。精神疾患にかかわるもの8事例、発達障害にかかわるもの69事例、家庭問題にかかわるもの28事例、合併・共存25事例であった。年齢(複数年にわたる報告事例を含む)は2歳から19歳までの報告があり、13歳が18事例、14歳が17事例、9歳と10歳がそれぞれ16事例、11歳が13事例、12歳が11事例であった。9から14歳で事例全体の60%以上を占めた。
2)全国の診療所・病院に勤務する12名の小児科・小児神経科の専門医の協力が得られ、全ての施設において子どもの心の診療を定期的におこなっていた。
 2施設以上と連携を必要とした事案は34あり、それらの類型は次に示す3型に分けられた。①同時一括型連携:支援会議等を通じて、関係者が一堂に会する連携。②同時多発型連携:医療機関がハブ的役割を果たして関係者と連携。③継時・変容型連携:①、②に時系列が加わり、継時的に連携先や連携方法が変化する連携。
3)22例、対応機関として30ケースが抽出された。全例が教育機関との連携を進めていた。在籍する学校とは全例、一部、教育センター、教育委員会との連携も含まれた。福祉機関都の連携は6例で、全員市役所福祉課が関わっていた。
4)精神科領域を専門としている医師より91事案が、小児科領域を専門としている医師より32事案が収集された。これら合計123症例について分析を行った。
専門領域別に見た患者の年齢では、小児科領域の医師が見ている患者の年齢は精神科領域の医師が見ている患者よりも有意に若年であるという結果であった(t=4.44, p<0.001)。また、小児科領域の医師は幼児から中学生までの年齢の患者を診ているが、精神科領域の医師では幼児から思春期までの患者を診ていた。
5)7~17歳のこども2,591名と、0~17歳の子をもつ保護者6,116名の計8,707名から回答を得た。回答したこどもの76%が、友人と会えないことに困っていると回答した。過去1ヶ月に受診や健診などの予定があった者のうち30%が、過去1ヶ月に普段なら医療機関を受診するような症状があった者のうち45%が、受診を控えた・できなかったことがあったと回答した。オンライン診療や電話診療・処方箋発行などを利用して受診したのは7%に過ぎなかった。
結論
子どもの心の診療実態と連携の概略を把握することができた。実数を把握するためには、カルテ記載に基づいた後ろ向きコホート調査を計画する必要がある。
COVID-19の流行により75%の子どもが何らかのストレスを感じていて、病院受診を控える事例も少なくないため、ハイリスク者への支援体制構築や啓発が急務と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
4,285,000円
差引額 [(1)-(2)]
6,715,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 606,900円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 1,140,100円
間接経費 2,538,000円
合計 4,285,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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