障害者の支援機器開発に携わる医療・福祉・工学分野の人材育成モデル構築に資する研究

文献情報

文献番号
202018039A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の支援機器開発に携わる医療・福祉・工学分野の人材育成モデル構築に資する研究
課題番号
20GC1013
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
出江 紳一(国立大学法人 東北大学 大学院 医工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 永富 良一(東北大学大学院医工学研究科)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
  • 浅川 育世(茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科)
  • 大西 秀明(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部)
  • 中尾 真理(国立大学法人 東北大学 大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
支援機器開発には様々な専門職が関わるが、実践する人材の不足などが課題であったため、各専門職等に求められる諸条件を普及啓発する連携体制を構築するための方策をマッチング事業などの実践を通して抽出し、人材育成のプログラムおよびプログラム改善の仕組みを組み込んだ支援機器開発人材育成モデルを構築する。
研究方法
1)各専門職に求められる諸条件の調査として、①支援機器開発人材育成(パイロット版)研修会を実施した。②医療従事者、工学系教員、医学・工学系大学院生、学部生を対象に医工融合ワークショップを実施した。
2)理学・作業療法士には養成課程における支援機器等開発に関する教育の実態調査、リハビリテーション科専門医には支援機器開発に関する意識調査を行った。
3)①福祉工学の定義、当該分野の20年の変遷および現状の課題について動向を調査した。②1996年に実施された全国の理工系大学、大学院等における福祉工学関連の講義に関す調査結果を精査するとともに、現状把握のための関連科目のシラバス調査を実施した。③構築する人材育成モデルの構成要件を抽出するとともに、支援機器の参加型デザインに関する国際動向について文献調査を行った。
結果と考察
1)①支援機器に関わる研究者や臨床家、医療機器開発人材育成教育の経験者らが参加する支援機器開発人材育成パイロット版研修会を実施し、支援機器開発には専門知識に加え、医と工の連携、当事者に共感してニーズを洞察する能力が必要であることが共有された。医工連携経験のある参加者には半構造化インタビューを行い、次年度目標である連携体制構築の方策を抽出する準備と位置づけられる。②東北大にて理学療法士、理学療法学専攻学部生、工学系大学院生を対象に支援機器に特化した医工連携教育プログラム開発ワークショップを実施し、前後に行ったアンケートの結果、デザイン思考・バイオデザインへの理解、支援機器への理解が深まることが確認された。一方で、ワークショップ中の思考時間の確保、調査時間の設定がより必要なことが明らかとなった。
2)支援機器開発教育の実態と専門医の意識の調査を実施し、PT、OT養成課程においては医工連携教育、支援機器開発に関連する教育ともに不十分な状況であることが明らかになった。リハビリテーション科専門医の調査では、支援機器開発に求められる能力が示された。
3)①福祉工学の定義を調査した結果、工学として位置づけようとする定義と、工学技術を核とした新たな学問分野として位置づけようとする定義がみられた。一方で、当該分野のあり方や思想、エビデンスの構築、社会への技術移転に関する観点が抽出された。② 理工学系大学等における福祉工学関連科目の調査から、関連するキーワードが記載されている科目が約75%の学部で設置されていたが、科目名にそれらのキーワードを含む科目を設置している学部は40%弱にとどまり、理工系の大学等においてこの分野への関心が高まっているものの、専門性を高める科目はまだ十分ではないことが示唆された。また、実習科目では障害に関連する体験や、当事者の参加が学習に大きく影響することも示され、参加型デザインの重要性につながる結果が得られた。③人材育成モデルの構成要件については、バイオデザインの人材育成モデルに支援機器関連の内容を組み合わせる必要性が指摘された。それを受けて支援機器開発における参加型デザインに関する海外の動向について文献調査を実施し、関連するデザイン手法が抽出され、これらを核としたワークショップが盛んに行われていること、当事者参加の重要性が示された。
結論
支援機器開発に必要な知識とスキルから各専門職等に求められる諸条件を調査・収集した結果、現場を観察しペイシェントジャーニーマップを描いてニーズを探索し解決策を見出すというデザイン思考に基づいて多職種で支援機器開発を推進する能力を身につけることの重要性が確認され、かつ教育現場にニーズのあることが分った。医工双方の多職種に共通して必要な知識・能力として、「潜在ニーズと顕在ニーズの理解」「障害者の潜在ニーズを洞察する能力」「他職種と目標を共有し協働するためのコミュニケーション能力」が挙げられた。また、医療者側が身につけるべき能力として「障害者のニーズを聞きだすスキル」「工学系専門職に製品の要求性能と制約条件等を正確に伝える技術」、工学系専門職に必要な能力として「工学の専門用語の説明能力」「医療者から製品のニーズと要求事項を正確に聞き出す能力」が挙げられた。加えて、工学系専門職は開発プロセスにおいて医学知識を深堀りするポイントをペイシェントジャーニーマップから洞察する必要があり、それには医療者の協力が必要である。目標とする人材育成モデルは、実践的学びを通してこれらの知識、能力、態度を身につけるものであると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,197,272円
人件費・謝金 2,405,308円
旅費 0円
その他 5,936,420円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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