文献情報
文献番号
199700441A
報告書区分
総括
研究課題名
医療用具の生物学的評価試験の国際調和に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
中村 晃忠(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
- 田中憲穂(食品薬品安全センター)
- 堤定美(京都大学)
- 黒澤努(大阪大学)
- 武久正昭(ラジエ工業、協力研究者)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 医薬品等国際ハーモナイゼーション促進研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国際標準化機構(ISO)は、否応なしに医療用具のスタンダードの国際調和の舞台となった。厚生省は、ISOは任意基準であるとの従来認識を転換し、医療用具ISOに日本の意見を反映することとなった。本研究は、医療用具関連ISOの中でも、基盤的(horizontal)基準となるISO/TC194「生物学的評価」、ISO/TC198「滅菌」の委員会に、日本の提言を反映させる基礎を作るためのものである。今年度の目標は、(1) 放射線滅菌保証法に日本の方式を盛り込むための基礎データを採る;(2) 細胞毒性試験の国際調和を可能にするために日本の標準材料を使った国際ラウンドロビンテストを実施する;(3) エチレンオキサイド(EO)滅菌用具に残留するEOの許容基準に関するISO 10993-7の適用法を検討し、日本案を提案する;(4)いろいろな医療用具関係ISO/TCsの国内審議団体間の情報流通促進のために、TC194, TC150国内委員会のインターネットホームページを作成する。
研究方法
(1)D値決定の際に用いる諸条件の変動による実測値の変動について検討する。また、長い誘導期を持つ菌の存在を理由とした最低滅菌線量15kGyの妥当性を検証する;(2) 日本の生物試験ガイドラインに採用した標準材料を各国の試験機関に配布し、同一の実験プロトコルで試験し、データを集める(ISO/TC194/WG5の公式プロジェクトとして実施);(3) ISO 10993-7の個別医療用具への適用方法について、米国のAAMI/TIRを参考にしながら、国内事情も勘案しつつ、日本案を作る;(4) 各TC責任者がホームページを開設し、お互いをリンクすることによって、情報の流通の促進をはかる。
結果と考察
(1)D値による滅菌線量決定法(いわゆるログ法)の基礎データ:ISO/TC198の作成した放射線滅菌に関する国際規格ISO 11137におけるバイオバーデン菌のD値決定の際の諸条件の違いによるD値実測値の変動について検討した。その結果、リン酸緩衝液を菌懸濁媒体する方法はISO 11137に規定するTSB懸濁と同等のD値が得られることが分かった。また、日本のガイドラインでの最低滅菌線量は15kGyとされたが、それは長い誘導期のある菌の存在を考慮したものである。しかし、B. megaterium (ATCC 19213)の諸データを基に計算した結果、最低滅菌線量を10-6SALで15kGyとせねばならない根拠を見つけることはできなかった。(2)細胞毒性試験用の標準材料:ISO/TC194が作成したISO 10993シリーズが医療用具の生物学的評価の枠組みの国際調和版とされている。そこに規定されている試験項目のうち、細胞毒性試験はどんなカテゴリーの医療用具についても必須のものと位置づけられていて、最も重要なものである。ところが、このシリーズのPart 5 「細胞毒性試験法」には感度も表現法も異なる様々な試験手法が羅列してあるだけで、各手法間の優劣や得失に全く触れていない。すなわち、各国で採用している試験手法を羅列したのである。相互に関連性のない試験方法によって得られたデータを比較してみても、細胞毒性試験結果から医療用具の安全性の評価に関するなんらの結論も得られない。ここに本ISOの欠陥がある。我々は、共通の物差しとして、強度の異なる毒性を有する二つの陽性対照材料を製造し、それらを恒常的に頒布可能とすれば、これらを常に試験し試験材料の結果と比較することで、異なる手法間でもデータを比較することが可能になると考えた。このような観点から、ポリウレタン材料中にzinc diethyldithiocarbamate (ZDEC), zinc dibutyldithiocarbamate (ZDBC)を添加したフィルムを製造し、これらの細胞毒性とin vivoでの組織刺激性との間の相関性を確かめ
た。その結果、組織刺激性を細胞毒性試験結果から予測できることが明らかとなった。さらに、これらの標準材料の製造方法を詳細に検討し、恒常的に品質保証下で供給可能とすることができた。現在、世界にこのような品質保証の確立した標準陽性対照材料はない。そこで、昨年のTC194総会において日本の標準材料を用いた国際ラウンドロビンテストの実行を提案し、了承を得た。そこで、各国の主要試験機関に標準材料を提供し、まず一定の試験プロトコルでの試験結果を収集することにした。現在、ほぼデータは集まり、解析中である。(3)エチレンオキサイド(EO)滅菌医療用具に残留するEOの基準値:従来、米国ではFDAの規制基準案に基づき、日本では医材協自主基準案に基づいて運用されてきたが、ISO 10993-7が出版されて以来、この国際規格の取り扱いが問題となってきた。というのは、この国際規格は患者当たりの暴露量という単位で基準値を設定しており、用具当たりの残留量へどのように換算すべきかについて国際的なコンセンサスのないままに、国際調和が叫ばれる状況になったのである。その点について、暫定的であっても日本の方針案を公表する必要に迫られた。米国の技術情報報告(TIR)も考慮しながら、従来の規制値とのバランスをとった方針案を作成した。(4)ホームページの充実:医療用具関係ISO/TCの数は16にも及び、それらは相互に関連するものであるが、国内では各TCの審議団体間の連絡や情報流通はあまりよくない。このような状況では、日本からISOへのインプットにも齟齬を来す。そのために、従来は、情報交換のための会議がもたれたこともあったが、あまり有効とは思えなかった。そこで、各TC国内委員会が自主的にホームページを作成し、それをリンクすることを提案した。手始めに、TC194国内委員会、TC194国際委員会、TC150国内委員会のホームページを作成した。最初に完成したTC194国内委員会HPへのアクセス数は、現在、1日100件以上、1ヶ月2000件以上におよび、意見のインプットも増えつつある。
た。その結果、組織刺激性を細胞毒性試験結果から予測できることが明らかとなった。さらに、これらの標準材料の製造方法を詳細に検討し、恒常的に品質保証下で供給可能とすることができた。現在、世界にこのような品質保証の確立した標準陽性対照材料はない。そこで、昨年のTC194総会において日本の標準材料を用いた国際ラウンドロビンテストの実行を提案し、了承を得た。そこで、各国の主要試験機関に標準材料を提供し、まず一定の試験プロトコルでの試験結果を収集することにした。現在、ほぼデータは集まり、解析中である。(3)エチレンオキサイド(EO)滅菌医療用具に残留するEOの基準値:従来、米国ではFDAの規制基準案に基づき、日本では医材協自主基準案に基づいて運用されてきたが、ISO 10993-7が出版されて以来、この国際規格の取り扱いが問題となってきた。というのは、この国際規格は患者当たりの暴露量という単位で基準値を設定しており、用具当たりの残留量へどのように換算すべきかについて国際的なコンセンサスのないままに、国際調和が叫ばれる状況になったのである。その点について、暫定的であっても日本の方針案を公表する必要に迫られた。米国の技術情報報告(TIR)も考慮しながら、従来の規制値とのバランスをとった方針案を作成した。(4)ホームページの充実:医療用具関係ISO/TCの数は16にも及び、それらは相互に関連するものであるが、国内では各TCの審議団体間の連絡や情報流通はあまりよくない。このような状況では、日本からISOへのインプットにも齟齬を来す。そのために、従来は、情報交換のための会議がもたれたこともあったが、あまり有効とは思えなかった。そこで、各TC国内委員会が自主的にホームページを作成し、それをリンクすることを提案した。手始めに、TC194国内委員会、TC194国際委員会、TC150国内委員会のホームページを作成した。最初に完成したTC194国内委員会HPへのアクセス数は、現在、1日100件以上、1ヶ月2000件以上におよび、意見のインプットも増えつつある。
結論
それぞれの課題で所期の目的を達した。放射線滅菌に関する課題は本年をもって一応終了する。細胞毒性標準物質とEO問題についてはTC194の推移を見守りながら、継続する。ホームページの充実については、他のTC国内委員会も視野に入れる。
公開日・更新日
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