地域で暮らす障害者の地域生活支援の実態把握及び効果的な支援方法、その評価方法についての研究

文献情報

文献番号
202018033A
報告書区分
総括
研究課題名
地域で暮らす障害者の地域生活支援の実態把握及び効果的な支援方法、その評価方法についての研究
課題番号
20GC1007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
田村 綾子(聖学院大学 心理福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 青石 恵子(熊本大学大学院 生命科学研究部)
  • 鈴木 孝典(高知県立大学 社会福祉学部)
  • 相馬 大祐(福井県立大学 看護福祉学部社会福祉学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は2か年計画において、支援を受けて地域生活をしている障害者の状態像と利用サービス等、障害種別や支援区分、生活形態、状態像等に応じたサービスの特徴に関する実態把握と、支援内容に対する障害者本人による主観的評価と支援者の評価について把握することを目的とする。そのため、今年度は、①地域で生活するさまざまな障害種別の当事者と、その支援者を対象としたフォーカスグループインタビュー調査を行い、障害者本人にとって生活に満足をもたらす要素を把握することを目的とした。また、支援者は、障害者総合支援法に基づく計画相談支援を担当する相談支援専門員が中心となるが、障害をもつ高齢者には介護保険優先の原則があることや、65歳以上の高齢者のなかにも障害福祉サービス等を利用する者もあることから、②居宅介護事業所の介護支援専門員を対象とした概況把握を行い、次年度の大規模調査に向けた実態把握を目的とした。
研究方法
本研究は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、初年度に実施を予定していた大規模調査を見送ることとなり、研究期間内に介入研究や経年での比較研究は実施困難であることに鑑み質問紙法とインタビュー法を用いた横断面調査による実態把握、及び支援に関する評価のアウトカム調査を行った。
①インタビュー調査(令和2年11月~令和3年3月)
多機関の支援者による連携に関する勉強会や、オンラインでのプレインタビュー調査を実施したのち、障害者とその支援者を1組としたフォーカスグループインタビューを4組に対して実施した。
②質問紙調査(令和3年2月1日~2月28日)
居宅介護支援事業所の介護支援専門員を対象として、障害者支援に関する実態把握のための質問紙調査を実施した。
結果と考察
①障害者の地域生活及び支援に関する調査~本人と支援者の語りの分析から
 地域で生活する障害者とその支援者を対象としたフォーカスグループインタビュー調査を、異なる障害種別の4組に対して実施した。障害種別は、精神障害、身体障害(肢体不自由)、難病(筋萎縮性側索硬化症)、高次脳機能障害である。障害者の基本属性や障害種別をはじめとして状態像、生活環境や利用しているサービス内容などもそれぞれ異なる4組のインタビューで共通していたのは、調査対象者が、自らの希望や強みに丁寧に寄り添う支援者、あるいは同じ境遇にある人々との出会いによって、レジリアンスを獲得し、希望の創発、客観的な自己理解、生活課題に対する対処技能の獲得に至ることがうかがえたことである。また、支援者をはじめ、自らの支えとなる人々との関係を醸成する過程のなかで、新たな生活様式の獲得や自己実現の達成に至ることが示唆された。
②地域で暮らす障害者に対する居宅介護事業所における支援の実態把握
 居宅介護支援事業所の介護支援専門員843名より回答を得た(配布数3,000名分に対して、回収数は960通で回収率は32%であった)。居宅介護支援事業所の支援を受けて介護保険サービスを利用している者のなかには、障害福祉サービス等を利用したことのある者や、現在も利用している者が一定数含まれていることが把握できた。その割合は障害種別によって異なることや、利用しているサービスにも違いがあるが、居宅介護を利用していることは共通していた。また、介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のものといえる「同行援護」「就労継続支援」の利用が見られた。これらのことから、次年度に障害者の地域生活の支援計画を作成する者として、相談支援専門員に加えて介護支援専門員を加えることが適当であると考えられた。
結論
①障害者の地域生活を支えるうえで、支援者や同じ疾患・障害をもつ仲間との出会いやかかわりが有用であること、障害福祉サービス等の利用によって生活基盤が支えられたうえで、自分らしい暮らしを構築することが生活の充実感や満足感に関係すること、障害当事者によるサービス提供主体として実践は、サービスの受け手・担い手という固定化した役割のみからは見出すことのできない支援の効果の評価のあり方を示唆しているといえる。
②介護支援専門員が有する障害、及び障害者総合支援法のサービス体系に関する知識や、障害福祉サービス事業所等との連携状況などは今回の調査からは明らかにできなかったものの、回答者がケアプランを作成している者のなかに、障害者総合支援法による障害福祉サービスを利用している人が一定数含まれており、約半数の介護支援専門員がいわゆる障害者の地域生活支援に携わっていることから、地域で生活する障害者の実態や利用サービス等に関する調査対象として、居宅介護支援事業所の介護支援専門員を加えることの有用性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018033Z