強度行動障害者支援に関する効果的な情報収集と関係者による情報共有、支援効果の評価方法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202018031A
報告書区分
総括
研究課題名
強度行動障害者支援に関する効果的な情報収集と関係者による情報共有、支援効果の評価方法の開発のための研究
課題番号
20GC1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園 総務企画局 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 潤(北海道教育大学旭川校教育学部障害児臨床教室)
  • 井上 雅彦(鳥取大学 大学院医学系研究科 臨床心理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、見えにくい個々の障害特性を理解し、適切な環境調整を行うことが支援原則とされる強度行動障害者支援の現場において課題となっている支援対象者の全体像の理解や、効果的、効率的な情報収集と情報共有について研究を行い、ICF(国際生活機能分類)やICT(情報通信技術)などを含めた支援現場で活用できるPDCAサイクルを示すことである。具体的には、①ICFを用いて、支援対象者の全体像を理解する、②解決につながる、当事者自身のニーズ、活用できる特性やニーズを「氷山モデル」の様式で整理し支援の焦点を明確にする、③情報収集の労力負担の解消や客観的データ収集を目的としたICTの活用、④支援チームによる支援結果の分析と支援計画の修正を行う、といったプロセスである。
研究方法
令和2年度は、支援現場で活用できるPDCAサイクルを示す「運用マニュアル案」作成のため、以下の3つの調査・研究を行った。
①強度行動障害者支援に関するアセスメントと記録、情報共有等についての先行研究調査:強度行動障害者支援について、本研究の目的とする効果的なアセスメント、記録、情報収集、情報共有などに関する先行研究を把握するため、キーワードを「アセスメント」「記録」、「ICF」、「ICT」などとして文献調査を実施した。
②強度行動障害者支援事業所におけるアセスメントと記録、情報共有等の実態についての調査(ヒアリング調査):具体的な障害特性や行動の背景要因を把握するためのアセスメントや、行動の記録と支援者間での情報共有の現状を把握することを目的として、強度行動障害者支援を行っている事業所(6カ所)を対象にヒアリング調査を実施した。
③強度行動障害者支援のためのICF、ICTを活用したPDCAサイクルの運用マニュアル案作成のための研究:本研究において行う先行研究調査や強度行動障害者支援を行う事業所の実態調査を踏まえ、支援現場で活用するための運用マニュアル案の作成を行った。
結果と考察
①J-stageでのキーワード検索結果として、掲載された100から200件程度の論文の中に強度行動障害に実際に焦点を当てた研究は少なく、本研究に関する「アセスメント」や「記録」などのワードに関する研究は30件程度であった。先行研究において、ICFは共通言語としての利点があることが示されており、多職種間連携や事業所の支援者間における効果的な情報共有、対象者の全体像の把握など、強度行動障害者支援において有効であると考えられた。また、記録において、ICTを活用したアプリなどのツールが有効であることが示唆されており、効率的な記録の収集と分析が可能となれば、より効果的な支援を行うことが可能となるとともに、支援者の事務的作業の負担軽減にもつながることが期待できる。
②各事業所が行っている記録の方法は、①利用者の基礎情報や特性を理解するための情報を記載するプロフィールシートや基礎調査票などの「アセスメント」、②日々の利用者の様子を把握するための日誌やケース記録などの「日常の記録」、③特定の行動についての頻度や時間などを把握し行動の背景要因を探るための行動観察記録やスキャッター・プロットなどの「臨時の記録」の3つに整理できた。アセスメントについては、ICFのように、地域や事業所の種別、対象となる障害特性などにかかわらず、誰でも共通の理解が可能なツールを活用することが重要であると考えられた。日常の記録、臨時の記録については、いずれも記録の煩雑さや情報共有や分析を行う仕組み、記録を取ることの負担などが課題となっており、ICTの活用が有効であると考えられた。
③先行研究調査、現場支援者へのヒアリング調査を踏まえて、運用マニュアル案を作成した。ICFに関しては、先行研究調査で把握したツールであり、社会実装研究において既に効果が検証されている安達らが開発した「ICF情報把握・共有システム」を取り入れた。また、記録の収集と分析を行うICTツールとして、先行研究調査で把握した、井上らが開発した「Observations」を取り入れた。この運用マニュアル案を全国の強度行動障害者支援現場で実装できるかどうか、今後の検証が必要であると考えられる。
結論
①先行研究を通して、ICFやICTの活用が有効であることを把握した、②強度行動障害者支援における支援現場の行う「アセスメント」、「日常の記録」、「臨時の記録」に関して、ICFやICTの活用が有効であると考えられた、③本研究で、ICFとObservationsを強度行動障害者支援の現場で試行するためのマニュアル作成を行った。
この成果を踏まえ、次年度の研究では、強度行動障害者支援を行っている事業所での試行を実施し、使い勝手や効果、課題などの検証を分析し、最終的な運用マニュアル作成に取り組んでいく予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
1,575,648円
差引額 [(1)-(2)]
3,424,352円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 266,000円
旅費 243,900円
その他 65,748円
間接経費 1,000,000円
合計 1,575,648円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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