障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究

文献情報

文献番号
202018030A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究
課題番号
20GC1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園 総務企画局 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 淳志(東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所)
  • 本名 靖(東洋大学大学院ライフデザイン研究科)
  • 祐川 暢生(社会福祉法人侑愛会 侑愛荘)
  • 庄司 妃佐(和洋女子大学 家政学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、「自分自身の不調を自覚する」「心身の変化を周囲に上手に伝えることに困難さがある」高齢期の障害者(主に知的障害者)の状態像の変化を捉え、適切な支援を提供するためのツールの実用化、その普及方法(研修カリキュラム等)の検討等を行うことを目的とした。
研究方法
1年目である令和2年度は、以下の3つの調査・研究を行った。①障害者の高齢化に関する問題の中で、特に高齢知的障害者について、本研究に係る「認知症」や「機能低下」、高齢期に関する先行研究が多い「ダウン症」などのキーワードに該当する研究を把握した。②知的障害者の高齢化に伴う変化の実態について把握し、若年期から終末期までの心身の状況や支援について概観できるライフマップを作成することを目的として、高齢期の知的障害者を支援する事業所の支援者に対して、利用者の高齢化に伴う変化についてICFの項目をベースにアンケート調査を行い、ライフマップ案を作成した。③東京都が導入・実施している認知症者へのケアプログラム「DEMBACE」を参考にして、知的障害者の心理行動症状に対する適切なアセスメントや支援を行うためのプログラムを開発し、実用化に向けたマニュアルを検討することを目的として、研究者と障害福祉現場職員による資料収集と分析、プログラムの検討を行い、高齢期の知的障害者向けのケアプログラム(暫定)を作成した。
結果と考察
①先行研究において、高齢知的障害者、特にダウン症者は身体機能の早期の低下や罹患する疾病の多さが指摘されており、その背景要因として、食事習慣や運動習慣などの関係があるが、本人の訴えに周囲が気づかず対応が手遅れになりやすい状況があるため、本人の変化に周囲の者が早期に気づくことが重要であることが確認された。また、高齢知的障害者の「認知症」や「ターミナルケア」については,
先行研究が多く知見の蓄積がある高齢分野に対象を広げた先行研究調査が重要であると考えられた。これらを踏まえると、今後高齢化が本格的に課題となると想定される知的障害者支援の現場において、認知症やダウン症などを含む高齢知的障害者に対する適切な支援を行うためのアセスメントや支援の手立て、評価などを包括した支援プログラムや、加齢にともなう変化に気づくためのツールなどを作成することが必要であると考えられた。
②本研究において、知的障害者の高齢化にともなう様々な変化と、その変化が起こる時期や必要な支援を概観したところ、40~50歳代には、「認知症も含めた認知機能の低下が早期からみられる」「身体機能の低下に伴い歩行不安定、転倒リスクが高まる」「精神的な不安定さが見られるとともに、他傷行為や暴言などの行為が見られる」等の事例が目立った。また、上記のような健康状態の変化に伴い、「自発性や意欲が低下することで活動や参加に影響が生じる」ことが多かった。60歳代には、「個室への移動や住まいの変化」「家族や友人、支援者など、信頼関係のある大切な存在を失う場合が多い」等の環境面の変化に関する事例が多かった。上記のデータを整理し、高齢期前からの支援に必要な支援開始から看取りまで見えやすくするための「ライフマップ案」を作成した。
③DEMBACEでは、BPSDの心理行動症状の有無をNPIにより確認しているが、スウェーデンの研究グループが2020年にNPI指標を基として知的障害者向けに項目を追加したNPI-IDを開発していることを把握した。このNPI-IDについて、本研究班として版権所有者、研究報告者と交渉を行い、使用許可を得た。また、背景要因の整理のための「身体ニーズ」「姿勢」「環境」の計23項目について、知的障害者の場合に必要な項目について検討委員等においてディスカッションを行い、NPI-IDを参考にした「自傷行為」および「リスク行動」の2項目を追加した25項目で心理行動症状の背景要因を分析することとした。今回の研究で整理した知的障害者向けのツールは、今後支援現場での試行が必要であるが、既に地域実装化が進められているDEMBACEに若干の追加をすることで、知的障害者の支援に導入できるプログラムになると考えられた。
結論
①高齢期の知的障害者について、「認知症」や「機能低下」などのキーワードに該当する先行研究の把握、②知的障害者の高齢化に伴う長期的な変化の実態について把握し、若年期から終末期までの心身の状況や支援について概観できるライフマップの作成、③集中的に対応しなければならない行動への対応に効果を上げている認知症者へのケアプログラムを参考にした知的障害者の行動心理症状への対応の検討について、文献研究、ヒアリング、研究者や現場支援者とのディスカッションを行った。
この成果を、次年度の研究では、支援現場での普及を念頭に置いたマニュアルの作成等につなげていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
1,521,540円
差引額 [(1)-(2)]
3,478,460円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 476,000円
旅費 0円
その他 61,280円
間接経費 984,260円
合計 1,521,540円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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