持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究

文献情報

文献番号
202018029A
報告書区分
総括
研究課題名
持続可能で良質かつ適切な精神医療とモニタリング体制の確保に関する研究
課題番号
20GC2003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
竹島 正(大正大学地域構想研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部)
  • 北村 立(石川県立高松病院)
  • 杉山 直也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 福田 正人(国立大学法人 群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 高瀬 顕功(大正大学 社会共生学部)
  • 吉田 光爾(東洋大学 ライフデザイン学部生活支援学科生活支援学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
41,660,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、精神科と他の診療科との連携、地域の多様な生活支援との連携による良質かつ適切な精神医療の持続的な確保のための要件を明らかにすることを目的とした。また、その促進を図るモニタリングの体制と、医療計画における指標および基準病床算定式を提案することを目的とした。
研究方法
(1)良質かつ適切な精神医療の提供の指標に関する研究:
医療計画における精神病床基準病床算定式及び指標例のあり方の検討、第6期障害福祉計画で定める長期入院患者数及び基盤整備量(利用者数)の目標値を計算するためのワークシートの開発を行った。

(2)精神医療の提供のモニタリングに関する研究:
精神医療の提供のモニタリングのための令和2年度630調査の実施と令和3年度630調査の実施内容の検討を行った。

(3)地域における医療機関間の連携に関する研究:
総合病院の管理者を対象にして総合病院での精神科医の必要性、期待する役割、支障がある点などのアンケート調査を行った。

(4)精神科領域における実効的な行動制限最小化の普及に関する研究:
実効的な行動制限最小化のための理念の普及を兼ねた看護職員を対象とした意識調査アンケート、モニタリング体制の構築の検討、都道府県単位の行政主導による最小化法の普及モデルの確立のための検討、エキスパートオピニオンによるさらなる最小化手段の探索を行った。

(5)精神科入院患者の重症度に応じた医療体制の確保に関する研究:
精神疾患の入院医療における重症度指標の確立のための検討を行った。

(6)精神医療の提供と地域支援の連携に関する研究:
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用したモニタリング指標の算出及び新規のモニタリング指標の開発の準備、精神保健医療のニーズの満たされていない領域や対象(アンメットニーズ)についての検討を行った。

(7)精神保健医療福祉の可視化に関する研究」:
先行研究で開発された地域精神保健福祉資源分析データベース(ReMHRAD)の改訂を行った。
結果と考察
(1)良質かつ適切な精神医療の提供の指標に関する研究:
精神病床の基準病床算定式では、「地域医療の確保に必要な病床」、「地域移行・地域定着を進めてもなお必要とされる病床」、「『精神障害にも対応した地域包括ケアシステム』の構築に必要な病床」の3つを加えることをベースにして、地域の基盤整備量も示すことが適切と考えられた。指標例は「予防・危機介入」、「入院外医療・リエゾン」、「入院医療」、「地域支援」の区分として指標例の構成案を提案した。また、ワークシートの開発は平成29年度に開発された1.2版を改修する形で行った。

(2)精神医療の提供のモニタリングに関する研究:
例年の調査結果公表時期に間に合わせる日程で令和2年度630調査を実施することができた。令和3年度での変更点として、現行の調査では、精神科医療機関について、「精神病床を持つ医療機関」、「精神病床を持たない医療機関」の2種類の調査票を用いているものを1種類に統合する代わりに、その内容を機能に着目して構成することが提案された。

(3)地域における医療機関間の連携に関する研究:
529病院から回答が得られ(回答率21.4%)、単科精神科病院を除いた510病院のデータを解析した。一般病院における精神科医のニーズは高いと考えられた。一方精神病床を有する病院の28%が削減を考えており、精神病床は一般病床に比べ、採算面と病床利用率の面で圧倒的に劣ることは重要な案件と考えられた。

(4)精神科領域における実効的な行動制限最小化の普及に関する研究:
研究途上にあり、成果の提示に至らないが、順調に進捗し、有意義な検討が実施されている。

(5)精神科入院患者の重症度に応じた医療体制の確保に関する研究:
重症度指標の確立の目的が、現場で必要な労力人手effortの適切な評価、良質な医療の促進のインセンティブ、であることを明確にした。

(6)精神医療の提供と地域支援の連携に関する研究:
NDBの利用申出を行うと共に、他調査とNDBとの患者数比較、統計解析計画書の準備を進めた。また、アンメットニーズの抽出のための半構造化インタビューによる調査研究プロトコルを導出した。

(7)精神保健医療福祉の可視化に関する研究」:
ReMHRADについて、第七次医療計画の中間見直しによる指標変更の反映、退院者についての表示機能の追加、「障害福祉サービス等情報公表システム」によるデータの反映等の改訂を行った。
結論
研究の実質的な開始は7月となったが、2年計画としておおむね順調に進んだ。本研究は第8次医療計画の基準病床算定式と指標例を提案するものであり、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」における精神医療提供体制の基礎資料となるものである。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-09-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018029Z