障害児相談支援における基礎的知識の可視化のための研究

文献情報

文献番号
202018028A
報告書区分
総括
研究課題名
障害児相談支援における基礎的知識の可視化のための研究
課題番号
20GC1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部 臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
  • 辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
  • 岩本 彰太郎(三重大学医学部附属病院周産期母子センター)
  • 鈴木 敏彦(和泉短期大学 児童福祉学科)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部)
  • 菊池 紀彦(三重大学 教育学部)
  • 宇野 洋太(大正大学 カウンセリング研究所)
  • 稲田 尚子(帝京大学 文学部心理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本全国で地域や障害種別、障害の軽重による格差なく、ICFの視点を重視し障害児に対して合理的配慮が適切に行え、障害児のソーシャルインクルージョンを実現するために相談支援員が活用できるガイドラインの作成を行うことを最終目標として、令和2年度は、ガイドラインの理念を創設し、相談支援専門員、保護者、自治体に対する面接調査によって、現状と課題の把握を目的として実施した。
研究方法
1.障害児相談支援のガイドラインの理念についての検討
障害児相談支援に対する現状と課題について自由記述で文書にまとめ、そこで出てきた共通のテーマを抽出し、障害児相談支援のガイドラインに含めるべき理念を決定した。
2.相談支援専門員、保護者、自治体に対する面接調査
面接調査には、相談支援専門員27名、保護者14名、自治体8自治体12名が参加した。作成された相談支援ガイドラインの理念各項目に対して、現在やっていること、課題に感じることについて面接調査を実施した。
3.アンケート作成の準備
面接調査で収集された結果をもとに、KJ法的な手法を用いて、テーマを抽出した。相談支援のガイドラインの理念に基づく各カテゴリーに対応する項目として整理し、令和3年度の全国における相談支援専門員、保護者、自治体調査に使用するアンケート調査項目作成の資料とする。
4. スタンダード事例の検討
障害児が受けている支援の質と相談支援が果たしている機能を評価し、一定の水準に達していると思われる事例をスタンダード事例と規定した。これは研究班として障害児相談支援専門員や障害児相談支援システムが適切に役割を果たすモデルになりうる事例であり、スタンダードモデルを基準に相談支援専門員が獲得すべく知識、スキル、姿勢を把握することを目指した。
5. セルフプランの現状と課題の検討
研究調査の過程でセルフプランのあり方は多様であり詳細に検討する必要性があると判断し、セルフプランの現状と課題について検討した。
6.新たに把握された課題の検討 
研究班で行った議論と面接調査の結果、新たに把握され対応が必要とみなされた諸課題について整理検討した。それをもとに障害児相談支援員が把握したおくべき事柄をまとめた。
結果と考察
ガイドラインの理念を研究班で検討し、①地域アセスメント、②地域資源に関する情報収集、③障害特性を含めた子どもに関するアセスメント、④(アセスメント結果に基づく)障害児支援利用計画案作成、⑤サービス利用の評価(モニタリングを含む)、⑥ライフステージに沿った移行支援、⑦関係機関との連携、⑧家族支援(家族のアセスメントを含む)の8つの理念が決定した。さらに27名の相談支援専門員、14名の保護者、8自治体が研究に約1時間の面接調査に参加し、面接内容について、KJ法を援用して心理学を専門とする3名で分析した結果、8つの各理念の現状と課題が整理された。
 地域アセスメントと地域資源に関する情報収集に関しては、地域特性や障害児支援事業所の特長について、できる限り一元管理する方法、および利用者にとっても相談支援専門員にとっても有用となる情報の整理の方法を検討する必要性が示された。また、障害児本人と家族のアセスメント、それに基づく障害児支援利用計画書、モニタリングとそれに基づく利用計画の見直し、ライフステージに沿った移行支援は、一体的に実施される必要があり、そのためにも共通で使用できるアセスメントシートを作成するなど、アセスメントとモニタリングのスタンダードを分かりやすく示す必要性が明らかとなった。
 連携に関しては、連携対象や機関の都合等もあるため、地域の関係機関が分野を超えて連携していく仕組みづくりを自治体が先導していくことが求められると考えられる。
 障害児相談支援の実態は地域により多様であり、本来の障害児相談支援のあり方とは大きく異なった運用がされている地区の存在が明らかになった。またセルフプラン率を障害児相談支援の質の高低の指標と使用することの限界も示唆された。現状の相談支援では家族支援やライフステージを考慮した支援への視点が乏しく、サービス提供事業所が提供するサービス内容との適切な連携がなされることが難しい実態も明らかになった。サービス提供事業者と相談支援事業者の役割のあり方を見直す必要がある。 
 以上より、障害児相談支援のガイドラインの整備が急務であることが改めて確認された。
結論
現在の障害児相談支援体制には多様な課題があり、相談支援専門員の専門性を高めることが必要である。サービス提供を形式的に追認するような計画相談が少なくなく、障害児相談支援がそもそも何のためにあるかという本質の再確認することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,945,000円
(2)補助金確定額
9,927,000円
差引額 [(1)-(2)]
18,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,506,267円
人件費・謝金 1,806,460円
旅費 94,658円
その他 3,224,615円
間接経費 2,295,000円
合計 9,927,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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