失語症の障害特性を考慮した適切な障害認定基準の作成に関する調査研究

文献情報

文献番号
202018027A
報告書区分
総括
研究課題名
失語症の障害特性を考慮した適切な障害認定基準の作成に関する調査研究
課題番号
20GC2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
三村 將(慶應義塾大学 医学部精神神経科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 種村 純(川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
失語症は脳血管障害や頭部外傷、神経変性疾患をはじめ、さまざまな病因によって生じる代表的な神経機能障害であり、現行の保険福祉制度のもとでは身体障害者手帳の対象疾患である。言語は人間にとってもっとも重要なコミュニケーション手段であり、言語が障害される失語症者においては、当然ながら対人コミュニケーションを含めた日常生活や社会生活が大きく障害され、当事者および家族の生活困難度・困窮度は大きい。しかしながら、失語症は身体障害者障害程度等級表においては、「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害」に分類されるが、この障害領域は他の身体障害領域とは質的に大きく異なっている。さらに「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の喪失」が3級、「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の著しい障害」が4級となっているが、この2等級のみであり、2級よりも上、あるいは5級よりも下の等級は存在しない。身体障害の他の領域、特に「上肢・下肢・体幹の肢体不自由」においては「機能の著しい障害」、あるいは「心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう・直腸・小腸・ヒト 免疫不全ウイルスによる免疫・肝臓の機能障害」においては、「日常生活が極度に制限されるもの」が2級相当とされるのに対し、失語症が該当する「音声機能、言語機能又はそしゃく機能」においては機能の「喪失」が3級、さらに「機能の著しい障害」が4級相当になっており、失語症の障害認定は他よりも厳しい水準であると言える。本研究では、運動麻痺の少ない軽度~重度の失語症者において、その言語障害による社会参加の度合いや復職への影響、QOLを調べることで、現行の失語症者の障害区分が妥当であるかについて改めて検討することを目的とする。
研究方法
失語症者の介護者へ質問紙を用いて、失語症による日常生活や社会参加への困難さを聴取し、失語症の重症度や知的機能、注意や記憶などの認知機能、発症からの年数や教育歴などの個別要因などの因子によってどのように影響を受けているのかを多変量解析の手法を用いて明らかにする。
結果と考察
現在、14例の研究協力者からデータを得ているが、多数例でのデータ解析はまだ行っていない。また、各施設からのデータを統合していないが、100例集まった段階で中間解析を行う予定である。
COVID-19により、データ収集は予定していた症例数よりも大幅に少ない例数に留まった。データ収集再開後のデータ解析を簡易化するために、本研究用質問紙アプリを開発した。これにより、解析までのデータ入力および処理を大幅に簡略できるようになった。

結論
未だ学術的意義を見出せる程の研究成果は得られていないが、現段階までに収集したデータから、失語症者が運動麻痺の影響を除いても、他者とのコミュニケーションに困難を感じ、対人関係や復職など社会参加への障害となっているとの回答が失語症者とその主たる介護者のいずれからも得られている。今後もデータ収集を継続し、失語症者のQOLや社会参加状況、社会参加を困難にしている要因について明らかにする予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,696,000円
(2)補助金確定額
9,696,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,285,215円
人件費・謝金 3,569,485円
旅費 0円
その他 2,665,300円
間接経費 2,176,000円
合計 9,696,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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