文献情報
文献番号
202018026A
報告書区分
総括
研究課題名
障害児支援の質の向上を図るための各種支援プログラムの効果検証のための研究
課題番号
20GC1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部 臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
- 井上 雅彦(鳥取大学 大学院医学系研究科 臨床心理学講座)
- 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園 総務企画局 研究部)
- 稲田 尚子(帝京大学文学部心理学部)
- 宇野 洋太(大正大学 カウンセリング研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
質の高いサービスを提供するために必要な項目、また障害児本人たちの障害特性や認知・知能発達、適応行動、問題行動、保護者のQOLや育児ストレスなどを標準化された客観的評価を用い、TEACCH、ABA等の介入前後の状態を評価し、どのようなプログラムが個人のどの要素やニーズに適しているかなどを検証する。さらに職員に対してもプログラムの適応や有効性に関して意見聴取するほか、仮にそれらのプログラムの実施が難しい場合はなぜかなどを聞き取る。これらの調査からどのような障害特性やニーズのある児童に、どのプログラムが有効か、また幅広い事業所で必要なプログラムを実施できるようにするためにはどのような取り組みが必要かを検証する。
研究方法
これまでの幼児期および児童期への介入効果に関する文献のレビューを行う。その上で、TEACCH、ABA、ペアレントトレーニング、作業療法等やその他の特定のプログラムを実施している事業所および特定のプログラムを実施していない事業所にて(1)利用者への介入効果の検証①②、および(2)介入プログラムの普及を促進・阻害する要因の調査を実施する。
(1)利用者へのプログラム別の介入効果の検証①
障害児通所支援事業所を利用している児、合計50名程度に、プログラム開始前と3ヶ月間経たのちの状態に関して、障害特性、発達水準、適応行動、問題行動等を評価し、介入プログラムがどの評価項目にどの程度有効であったかを解析する。
利用者への介入効果の検証② ABAを主とした介入プログラムの有効性
障害児通所支援事業所を利用している知的障害・発達障害児を主とする事業所の利用児20名に、週10時間(集団9時間、個別1時間)のABAに基づく発達支援を実施し、プログラム開始前と半年および1年間経ったのちの状態に関して、新版K式発達検査、Vineland-II適応行動尺度で評価し、どの評価項目に変化がよりみられたかを解析する。
(2)介入プログラムの普及を促進・阻害する要因の調査:支援者への意見聴取
障害児通所支援事業所で勤務している支援員、合計50〜60名程度に、特定のプログラムを実施するに至った経緯や実施した理由、実施するための取り組みや工夫、対象者の選定、他のプログラムあるいはいずれのプログラムも実施しない理由などを調査する。
これらを基に、障害児通所支援事業所でどのようにプログラムを活用すると効果的かについてモデル事例をあげながら支援方法を提案し、事業所で実施可能なレベルでのプログラムの提案を行う。
(1)利用者へのプログラム別の介入効果の検証①
障害児通所支援事業所を利用している児、合計50名程度に、プログラム開始前と3ヶ月間経たのちの状態に関して、障害特性、発達水準、適応行動、問題行動等を評価し、介入プログラムがどの評価項目にどの程度有効であったかを解析する。
利用者への介入効果の検証② ABAを主とした介入プログラムの有効性
障害児通所支援事業所を利用している知的障害・発達障害児を主とする事業所の利用児20名に、週10時間(集団9時間、個別1時間)のABAに基づく発達支援を実施し、プログラム開始前と半年および1年間経ったのちの状態に関して、新版K式発達検査、Vineland-II適応行動尺度で評価し、どの評価項目に変化がよりみられたかを解析する。
(2)介入プログラムの普及を促進・阻害する要因の調査:支援者への意見聴取
障害児通所支援事業所で勤務している支援員、合計50〜60名程度に、特定のプログラムを実施するに至った経緯や実施した理由、実施するための取り組みや工夫、対象者の選定、他のプログラムあるいはいずれのプログラムも実施しない理由などを調査する。
これらを基に、障害児通所支援事業所でどのようにプログラムを活用すると効果的かについてモデル事例をあげながら支援方法を提案し、事業所で実施可能なレベルでのプログラムの提案を行う。
結果と考察
利用者への介入効果の検証については児の不適切な言語、保護者の育児ストレスの減少が見られた。また週10時間の1年間のABAに基づいた早期療育の結果、発達水準および適応行動の有意な上昇が認められた。
文献レビューと支援員への質問紙調査からは支援者への適切な研修を提供できるシステムの構築が課題であること、支援者への教育に十分に費用や時間をかけられない現状があることが明らかになった。我が国においては支援者への研修機会の提供と研修内容の充実が求められる。
文献レビューと支援員への質問紙調査からは支援者への適切な研修を提供できるシステムの構築が課題であること、支援者への教育に十分に費用や時間をかけられない現状があることが明らかになった。我が国においては支援者への研修機会の提供と研修内容の充実が求められる。
結論
本研究では、まず文献的に神経発達症児の介入プログラムとして有効性が示唆されているものを調査し、さらに日本での問題を検討した。その上で、障害児通所支援事業所に通所している児童に対してABAやその他のプログラム、あるいは特定のプログラムがなく支援しているケースも含め、前向きに、児の発達や適応行動、障害特性や問題行動、さらには保護者の育児ストレスや生活の質、身体的・精神的健康状態を評価した。その結果、児の発達や問題行動、保護者の育児ストレスの側面に効果がある可能性が示唆された。
他方で、障害児通所支援事業所に勤務している支援員への調査において、介入効果のエビデンスのあるプログラムの実施率は概ね30%程度に留まり、いずれの介入技法も参考にしていない、あるいは独自にプログラムを組んでいるというものが多かった。したがって根拠に基づく介入の重要性の啓発が引き続き重要であることが示唆された。さらに採用したいプログラムがあるが職員の研修が体制上難しく、職員各自の自助努力に依存している現状も多く報告された。施設による特性は様々であるが現状、評価が一様である。施設の取り組み状況等により評価するなど制度設計への期待も多く報告された。
他方で、障害児通所支援事業所に勤務している支援員への調査において、介入効果のエビデンスのあるプログラムの実施率は概ね30%程度に留まり、いずれの介入技法も参考にしていない、あるいは独自にプログラムを組んでいるというものが多かった。したがって根拠に基づく介入の重要性の啓発が引き続き重要であることが示唆された。さらに採用したいプログラムがあるが職員の研修が体制上難しく、職員各自の自助努力に依存している現状も多く報告された。施設による特性は様々であるが現状、評価が一様である。施設の取り組み状況等により評価するなど制度設計への期待も多く報告された。
公開日・更新日
公開日
2021-09-14
更新日
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