青年期・成人期の自閉スペクトラム症および注意欠如多動症の社会的課題に対応するプログラムの開発と展開

文献情報

文献番号
202018024A
報告書区分
総括
研究課題名
青年期・成人期の自閉スペクトラム症および注意欠如多動症の社会的課題に対応するプログラムの開発と展開
課題番号
20GC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
太田 晴久(昭和大学 発達障害医療研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩波 明(昭和大学医学部精神医学教室)
  • 中村 暖(昭和大学 医学部精神医学講座)
  • 横井 英樹(公益財団法人神経研究所 研究部)
  • 五十嵐 美紀(公益財団法人神経研究所 研究部)
  • 水野 健(公益財団法人神経研究所 研究部)
  • 小峰 洋子(聖心女子大学 現代教養学部)
  • 加藤 進昌(公益財団法人 神経研究所 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,386,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自分と似た仲間と出会い助け合えるというピアサポート効果が、ASDプログラムの有効性の多くを占めている。プログラムを終了した参加者による半自助的な集まりであるフォローアップクループ(以下、OB会)がデイケア内にて複数開催されている。本研究ではOB会の状況、当事者会に参加・運営する際にどのようなことが必要か調査をし、ASDショート・ケアプログラムおよびOB会での実践を基に、ピアサポートを活用したプログラム(以下、ピアサポートプログラムとする)を開発・実施する。
ADHDに関しても、我々はADHD専門プログラム(以下、現行プログラム)を実施してきた。しかし、全国的にみると専門プログラムを実施している施設はごくわずかである。本研究の目的は昭和大学で行われているADHD専門プログラム実践を基に、精神科クリニックやデイケアにおいても容易に実施できる汎用性プログラムを開発し、その取り組み易さと効果を複数の協力施設のデイケアにおいて検証し、支援者向けのマニュアルを作成することである。
研究方法
ASDに関しては、ピアサポートプログラムに必要な要件を探るため、これまでのASDプログラムを修了した者を対象として、昭和大学にて「探索的ヒアリンググループ(1.5時間/回)」を開催した。ピアサポートの概念理解、グループ運営に必要な要素や効果的な参加方法、運営の課題などについて、ディスカッション形式でヒアリング調査を行った。これらに加え、昭和大学・神経研究所においてOB会参加者へのアンケート調査を行った。
ADHD関しては、現行プログラムを終了した者、あるいは参加中の患者を対象として、ヒアリング調査又はアンケートを行った。聴取内容は、・時間に関して・構成に関して・不足している内容や今後取り入れてもらいたい内容とした。参加中の者に対しては、各回のプログラム満足度をCSQ-8Jを用いて収集した。
結果と考察
ASDに関しては、「探索的ヒアリンググループ」は全12回開催(延べ18時間)し、延べ179名参加した。「聴く」「話す」などの具体的なスキルに加え、構造に対する工夫について取り扱われた。アンケート調査(26名)からは、「OB会に参加して役に立ったこと」として、全体の7割強(“ややあてはまる“も含む)が「居場所・安心できる場所があると感じる」「生活が楽しいと感じる」と回答した。当事者自身がグループを運営するにあたり必要な支援としては、「トラブル時の介入」が最も多く、次いで同数で「運営のサポート」、「情報提供」であった。
ADHDに関しては、アンケート調査(15名)において、今後取り入れてもらいたい内容として、生活に関する社会資源、片付け/整理整頓等が挙げられた。プログラムの患者満足度としてCSQ-8J(8~32点)の平均は26.1点であった。1回および11回目での評価が低くなっていた。ヒアリング調査からは支援者マニュアルの必要性、板書に技術を要する等の意見が挙げられた。
結論
ASDの探索的ヒアリンググループでは「聴く」「話す」などの具体的なスキルトレーニングに加え、安心してグループに参加するためのルールやマニュアルが作成された。アンケート調査からは当事者同士の自助的な活動は、帰属意識や対人希求性の促進に有意義であることが推察された。また、「運営のサポート」「自己理解」「聴く」については個々人のスキル醸成も必要であると考えられる。今後はプログラムを通して個々人のスキル向上を目指しながらも、グループ運営の“方法を学び経験を増やす”ことが求められるだろう。そうすることによって、当事者自身が運営への具体的なイメージを構築し、新たな課題を能動的に発見・対処検討する力を身につけていく支援を行うことで、グループ運営のモチベーションを高めるものと期待する。
ADHDの現行プログラムの満足度は、概ね内容としては好評であったと言える。しかし、オリエンテーションのみの初回と、ADHD特性との関連が一見すると分かりにくい個別性が高いテーマにおいて満足度が低い傾向が認められた。これらの結果を基に、8回の検討会議を経て、汎用プログラムの検討を行った。コアコンテンツを120分とし、前後30分をウォーミングアップやアフターフォローと位置づけることとした。進めやすさという点においては、全てをディスカッションにはせず、コアコンテンツの前半は医師やコメディカルによる講義、後半をディスカッションとする。実施回数も参加者、実施者共に負担のない回数として5回を想定した。多くの施設での実現可能性を高めるためには支援者マニュアルは必要である。進行だけでなく、板書のコツなども盛り込み、より具体的なイメージをもてるよう動画を用いたものを併せて検討していく。さらに、現行プログラムの成果をまとめた冊子も作成していくこととした。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018024Z