地域特性に対応した精神保健医療サービスにおける早期相談・介入の方法と実施システム開発についての研究

文献情報

文献番号
202018022A
報告書区分
総括
研究課題名
地域特性に対応した精神保健医療サービスにおける早期相談・介入の方法と実施システム開発についての研究
課題番号
19GC1015
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
根本 隆洋(東邦大学 医学部精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 徹男(秋田県精神保健福祉センター)
  • 田中 邦明(東邦大学 医学部精神神経医学講座)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 辻野 尚久(東邦大学 医学部精神神経医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
13,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦各地において「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」構築に向けての取り組みが進められている。本システムを持続可能(sustainable)なものとするには、早期相談・介入を当初から組み入れる必要がある。早期段階での対応により精神疾患の発症予防や軽症化が期待され、また罹患した際においても早期の社会参加や社会復帰が可能となる。このような、システムにおける「入口と出口」への対応により、システムの運用を機能的にも保健医療福祉財政的にも、より現実的かつ理想的なものとすることができる。早期相談・介入の社会実装においては、都市への人口や機能の集中、地方の人口や産業の減少、少子高齢化、増加する在留外国人、経済的格差などの、「地域差・地域特性」を考慮した提案が不可欠である。
本研究の目的は、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの理念のもとで、わが国の保健医療福祉体制および行政システムの中で実施可能な、メンタルヘルスや精神疾患の早期相談・支援の仕組みを提案することである。
研究方法
本研究をMEICIS(メイシス、Mental health and Early Intervention in the Community-based Integrated care System)と名付け研究・実践を行った。本邦の地域特性の典型と考えられる4か所のモデル地域(京浜地区、東京都足立区、秋田県、埼玉県所沢市)を設定し、地域特性に適合した具体的な早期相談・介入の体制の在り方を検討し、社会実装の可能性が高く政策提言につながるモデルを構築し実践した。
結果と考察
1.「多文化共生ボーダーレスモデル」(京浜地区)
京浜地区において多数および増加傾向にある在留外国人を対象に早期相談・支援を検討した。京浜地区主要3病院精神科における外国人受療行動の特徴について調査・検討し、国際誌に論文を発表した。また、在日ラテンアメリカ人を対象としたメンタルヘルス相談会を複数回実施した。京浜地区に加えて東海地方などでも、現地相談に加えてオンラインも用いて実施した。相談会を通して、医療通訳の不足や、地域との関わりが少なく社会資源も周知されていないことが明らかとなった。
2.「大都市対面型モデル」(東京都足立区)
2019年7月足立区に、若年者に向けた早期相談・支援窓口として「ワンストップ相談センターSODA」を開設した。その有用性について検討するため、2020年11月に北千住駅前に移転し、実証的取り組みを行いながらサービスモデルの更なる具体的構築を進めている。2021年1月までの間で相談件数は461件、延べ支援対応回数は4578回であった。
3.「地方過疎地ICTモデル」(秋田県)
秋田県は深刻な地方過疎問題に直面している。精神保健福祉窓口についても、従来型のサービス提供が今後さらに困難になる。その対応策として、ICTを用いた双方向性相談システムの構築を行った。
2020年度においては、依存症対策として地域の相談機関等への技術支援を行い、(1)秋田県版依存症回復支援プログラム(ASAT-A、本研究にて作成)、及び秋田県版アルコール依存症支援者向けガイドブックの普及啓発、(2)依存症出張事例検討会の開催、(3)保健所職員技術習得の場としての県精神保健福祉センター事業の活用、などを行った。ICTシステムは、ワークショップ開催に向けた打合せ、保健所への技術支援、アルコール依存症支援者ガイドブックの検証、などに有用であった。
コロナ禍のひきこもり対策において、同意が得られた者に対して、ICTを活用した支援を行った。また、ICT活用による技術支援として、事例検討会の開催、保健所職員技術習得の場としてのひきこもり相談支援センターの活用、を実施した。
4.「都市近郊アウトリーチモデル」(埼玉県所沢市)
所沢市におけるアウトリーチ支援チームに、非常勤心理職(常勤換算0.8名)を配置し、自治体の訪問を主体とした相談支援における心理職のサービス提供状況について業務分析を行った。業務内容は「電話相談(オンライン相談を含む)」「来所相談」「訪問支援」に大別された。他職種と比較して若年者、未治療者の利用が多く、相談1回あたりの所要時間が長い傾向が認められた。2020年10月までに継続的にアウトリーチ支援を利用した者113名を対象として、サービス利用後の転帰、アウトリーチ支援の状況、に関する調査を開始した。本調査の結果は、今後の支援や適切な利用者の同定に活かすことができる。
結論
「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」が、地域において有用で住民の理解・支持を得た機能と仕組みになるためには、各地域の特性を十分に考慮した早期相談・支援体制を実装することが不可欠であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,200,000円
(2)補助金確定額
13,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,557,135円
人件費・謝金 2,175,958円
旅費 248,890円
その他 8,018,017円
間接経費 1,200,000円
合計 13,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-