精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた障害福祉サービス等の推進に資する研究

文献情報

文献番号
202018016A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた障害福祉サービス等の推進に資する研究
課題番号
19GC1009
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 光爾(東洋大学 ライフデザイン学部生活支援学科生活支援学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 田村 綾子(聖学院大学  心理福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
10,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者総合支援法(旧自立支援法)では計画相談支援の枠組みが導入され、精神障害者もそのサービス対象となり、ケアマネジメントおよび障害福祉サービス利用支援の枠組みが導入されている。我が国の研究では、計画相談支援の実態調査(日本相談支援専門員協会,2014)等があるが、実際にいかなる効果があるのかは明らかになっていない。そこで本研究では計画相談支援により障害福祉サービスを利用した精神障害者が、①実際にいかなる障害福祉サービスを利用しその結果どのようなアウトカム(精神科病院への入院日数・社会機能等)の状況にあるか、②よいアウトカムを出している利用者と困難な事例の間には医療連携やサービス提供状況や地域環境要因にいかなる違いがあるかを検討し、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた障害福祉サービス等の活用についてエビデンスに基づいた提言を行おうとするものである。
研究方法
令和2年度では下記の4つの研究を行った。
1) 相談支援事業者に対する1次調査:全都道府県の相談支援事業所を人口比を考慮し無作為に抽出するとともに、全国相談支援専門員協会に精神科病院との連携が密な事業所を推薦いただき調査協力を依頼し967事業所を対象とした。対象事業所へ2017年度に計画相談支援を導入し2年経過している対象者の基礎情報、導入前後2年間の入院・サービスの利用状況等を、事業所職員にWeb上での調査票にて回答を依頼した。2)地域環境データを利用した地域特性とアウトカムの関連の検討:別途公開されているReMHRADのデータを用いてアウトカムに対する地域環境の影響についての解析方針を検討した。 3)相談支援事業所の支援に関するプロセス調査の項目開発:研究班内でのミーティングや先行研究のレビューなどを通して支援プロセスに関する調査項目を精査し、調査ツールを整備・開発を行った。 4)相談支援事業の役割に関する検討:二次調査にむけて、相談支援事業における支援の中で焦点化すべき支援内容を検討するため、計画相談支援に従事する相談支援専門員による「精神障害者の再入院防止のための工夫」について探索することを目的として、相談支援専門員を対象としたフォーカスグループインタビューを実施した。
結果と考察
1次調査を通じて、サービス等利用計画作成者については契約前2年間と比較して、契約後の精神科入院週数が有意に減少していることが明らかになった。「社会参加系サービスの利用量」「外来受診時の同行」、促進する可能性がある説明変数として「サービス等利用計画作成導入時会議での医療機関スタッフの同席」について可能性があるという具体的なデータを得た。①サービス等利用計画の作成を通じた支援が、入院抑制について寄与している可能性が一定示唆されたこと、②それらの中でも「社会参加系サービスの利用量」「外来受診時の同行」などが有効である可能性が示唆されたことなどは重要な知見である。今後これらの要素については2次調査を踏まえて詳細に分析する予定である。2)地域特性を解析に組み込む目的として、主に①介入の効果を偏りなく推定するために,交絡要因となっている地域特性の影響を排除する目的。②地域特性が介入の効果の修飾因子となっているかを検討する目的。③地域特性そのものとアウトカムの因果効果を推定する目的であると整理された。これらの整理を踏まえて、令和3年度の2次調査の結果を検討していく必要があると考えられた。3)調査ツールは、支援回数、支援開始前の連携機関との協力体制、支援内容とエフォートの3領域で構成される内容となった。調査ツールは四半期ベースで支援を把握することができ、支援内容の経時的変化を把握するという点においても貴重なデータを創出できると予想される。4)インタビュイーの言葉からは、相談支援専門員として個別の支援における本人中心の意向を尊重したかかわりを重視していることがうかがえた。把握すべき相談支援上の関わりを、より微視的な視線でとらえるために、本調査の中から得られたカテゴリーを、山口分担研究で開発された調査項目へと統合していくためのステップが必要であると考えられる。
結論
1次調査で得られた結果は今後の現行の障害者支援制度の評価や見直しをする基礎的資料としての活用が期待される。2次調査を行う上で、開発された調査ツールを研究4)で得られた知見を併せ発展させ、地域特性も鑑みた分析を行うことで、計画相談支援のアウトカムへの効果をより詳細に把握し、今後の支援発展に寄与することができると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,495,000円
(2)補助金確定額
12,204,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,291,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,078,026円
人件費・謝金 2,357,651円
旅費 14,446円
その他 5,951,214円
間接経費 2,803,000円
合計 12,204,337円

備考

備考
補助金確定額と支出の合計の差(337円)は千円以下の端数のため東洋大学事務予算より出費しました。

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-