障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に係る講師を担える人材の養成及び普及のための研究

文献情報

文献番号
202018012A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に係る講師を担える人材の養成及び普及のための研究
課題番号
19GC1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 香(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 秋山 剛(NTT東日本関東病院 品質保証室長)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 宮本 有紀(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)
  • 種田 綾乃(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 社会福祉学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,326,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、海外におけるピアサポートの効果が公表されているが、日本においてもピアサポートのあり方について活発に議論がなされている。しかし、専門職で構成された組織におけるピアサポートの位置付けや雇用体制、人材育成等の具体的な課題が生じている。雇用されているピアスタッフの質の担保や労働環境の整備については、各事業所に任されているというのが現状である。そこで、平成28年から30年にかけて、「障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業))において、障害福祉サービス事業所等で雇用されている障害者と職員を対象とした研修プログラム(基礎・専門・フォロ―アップ研修)を構築してきた。
そうした成果を踏まえ、本研究では、人材育成を中心に据え、まず、これまで構築してきた研修プログラムを継続して実施しながら、モニタリングを行う。並行して、研修講師を担える人材養成を効果的に行うための研修手法及び研修カリキュラムを作成することを目的としている。全国の自治体でどのようなピアサポーター養成研修が実施されているのかその実態を調査しつつ、2年間で、全国の地域ブロック毎に研修を担える人材を育成するためのモデル研修を実施し、研修プログラム構築を行うことを目的とした。
研究方法
本研究では、ピアサポートを有効活用できる人材の育成として、令和元年度においても「障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に関する研究」にて構築してきた研修プログラムを継続して実施しながら、モニタリングを行なってきた。昨年度に引き続き、今年度も基礎研修、専門研修、フォローアップ研修を実施する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により、開催地である東京への移動が困難であったり、対面研修の開催自体が難しい可能性が高いことから、実施方法について検討を重ねた。その結果、オンラインで実施することとした。しかし、本研修は対面でのグループ演習に重きをおいてきたことから、質を担保するための検討を行うことなど、準備に時間を費やす可能性があるため、今年度については基礎研修だけを実施することとした。また、今後もオンラインでの研修実施が想定されることから、講義映像を作成し、研修において活用することとした。
また、講師・ファシリテーター研修も昨年実施予定であった福岡での研修が新型コロナウィルスの影響により中止となったことから、予定では、今年度全国5か所で開催することになっていた。しかしながら、対面での長時間の研修が難しい可能性があるため、開催方法に関して検討を行った。講師・ファシリテーター養成研修は模擬講義や実際にグループでファシリテーターとして動くということも演習に含まれており、基礎研修等よりも対面での研修について必要性が高い。検討の結果、全国5か所をつないで、講義はオンラインで実施し、グループ演習は人数を絞り、感染予防対策を徹底したうえで、各地域で実施することとなった。
結果と考察
結果として、基礎研修、講師・ファシリテーター養成研修ともに、対面で実施していた研修同様に、参加者の満足度は高かった。これまでの研修に関する効果測定では、今年度の調査においても、基礎研修、専門研修において、知識獲得やピアサポートを担う人材として働くこと(専門職に関しては、ピアサポートを担う人材と協働すること)へのモチベーションの向上に関して、有意な結果が出ている。障害者ピアサポート研修事業を普及していくために今後、研修を担う人材育成が課題となるが、本研究では養成を効果的に行うための研修手法及び研修カリキュラムを構築したといえる。
 
結論
有効な福祉人材としての障害者ピアサポートの育成、活用促進、質の担保の必要性が取り上げられており、本研究は、障害当事者がその経験を活かして働くことを支援するとともに、福祉サービスの質の向上に寄与する重要な仕組みとして意義ある研究であると考える。講師・ファシリテーターを担う人材を育成し、統一されていなかったピアサポート研修を標準化することにより、新たな福祉人材としての活用が期待できる。また、成果の公表により、養成研修テキスト等の活用がなされ、ピアサポートの育成、活用が一層促進されることを期待する。
 令和2年度の障害福祉サービス等報酬改定チームの検討の結果、一部の事業にピアサポーターの配置に関する体制加算が認められた。ピアサポートに関する関心が高まりつつあり、本研究班が蓄積してきたノウハウを今後、障害者ピアサポート研修事業を主催する都道府県等にいかに伝えていくのかという点が課題となる。そこで、研究班の主要なメンバーで任意団体を立ち上げ、都道府県等に対して協力できる仕組みを構築していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202018012B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に係る講師を担える人材の養成及び普及のための研究
課題番号
19GC1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 香(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 秋山 剛(NTT東日本関東病院 品質保証室長)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 宮本 有紀(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 精神看護学分野)
  • 種田 綾乃(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 社会福祉学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、海外におけるピアサポートの効果が公表されているが、日本においてもピアサポートのあり方について活発に議論がなされている。
その反面、専門職で構成された組織におけるピアサポートの位置付けや雇用体制、人材育成等の具体的な課題が生じている。雇用されているピアスタッフの質の担保や労働環境の整備については、各事業所に任されているというのが現状である。そこで、平成28年から30年にかけて、「障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業))において、障害福祉サービス事業所等で雇用されている障害者と職員を対象とした研修プログラム(基礎・専門・フォロ―アップ研修)を構築してきた。
そうした成果を踏まえ、本研究では、人材育成を中心に据え、まず、これまで構築してきた研修プログラムを継続して実施しながら、モニタリングを行う。並行して、研修講師を担える人材養成を効果的に行うための研修手法及び研修カリキュラムを作成することを目的としている。全国の自治体でどのようなピアサポーター養成研修が実施されているのかその実態を調査しつつ、2年間で、全国の地域ブロック毎に研修を担える人材を育成するためのモデル研修を実施し、研修プログラム構築を行うことを目的とした。
研究方法
本研究では、ピアサポートを有効活用できる人材の育成として、令和元年度においても「障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に関する研究」にて構築してきた研修プログラムを継続して実施しながら、モニタリングを行なってきた。初年度は、ピアサポーター養成基礎研修、専門研修、フォローアップ研修を東京に手開催した。2年目である令和2年度も昨年度に引き続き基礎研修、専門研修、フォローアップ研修を実施する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの影響により、開催地である東京への移動が困難であったり、対面研修の開催自体が難しい可能性が高いことから、実施方法について検討を重ねた。その結果、オンラインで実施することとした。しかし、本研修は対面でのグループ演習に重きをおいてきたことから、質を担保するための検討を行うことなど、準備に時間を費やす可能性があるため、今年度については基礎研修だけを実施することとした。また、今後もオンラインでの研修実施が想定されることから、講義映像を作成し、研修において活用することとした。
また、講師・ファシリテーター研修も令和元年度に東京で1か所開催した後。福岡で研修を実施予定だったが、新型コロナウィルスの影響により中止となった。予定では、令和2年度に全国5か所で開催することになっていた。しかしながら、対面での長時間の研修が難しい可能性があるため、開催方法に関して検討を行った。講師・ファシリテーター養成研修は模擬講義や実際にグループでファシリテーターとして動くということも演習に含まれており、基礎研修等よりも対面での研修について必要性が高い。検討の結果、全国5か所をつないで、講義はオンラインで実施し、グループ演習は人数を絞り、感染予防対策を徹底したうえで、各地域で実施することとなった。
結果と考察
結果として、令和元年度に実施した基礎研修、専門研修、フォローアップ研修、講師・ファシリテーター養成研修及び令和2年度に実施した基礎研修、講師・ファシリテーター養成研修ともに、受講者の研修全体対する満足度・役立ち度は高く、対面においてもオンライン開催に関してもおおむねスムーズであったことも確認された。障害者ピアサポート研修事業を普及していくためには、研修を担う人材育成が課題となるが、本研究では養成を効果的に行うための研修手法及び研修カリキュラムを構築したといえる。
結論
有効な福祉人材としての障害者ピアサポートの育成、活用促進、質の担保の必要性が取り上げられており、本研究は、障害当事者がその経験を活かして働くことを支援するとともに、福祉サービスの質の向上に寄与する重要な研修プログラムを創り上げた。講師・ファシリテーターを担う人材を育成し、統一されていなかったピアサポート研修を標準化することにより、新たな福祉人材としての活用が期待できる。また、成果の公表により、養成研修テキスト等の活用がなされ、ピアサポートの育成、活用が一層促進されることを期待する。
 令和2年度の障害福祉サービス等報酬改定において、一部の事業にピアサポーターの配置に関する体制加算が認められた。ピアサポートに関する関心が高まりつつあり、本研究班が蓄積してきたノウハウを今後、障害者ピアサポート研修事業を主催する都道府県等にいかに伝えていくのかという点が課題となる。そこで、研究班の主要なメンバーで任意団体を立ち上げ、都道府県等に対して協力できる仕組みを構築していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202018012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
障碍福祉サービス等で働くピアサポーターの質を担保するために実施する研修の高地・ファシリテーター養成プログラムを構築した。2年間にわたる参加者を対象としたアンケート結果によりプログラムの有効性が示された。
臨床的観点からの成果
障害福祉サービス等において、ピアサポーターは障害当事者のロールモデルとして有効である。また、構築した研修プログラムは専門職の理解とピサポーターとの協働を促進し、ピアサポーターの福祉現場での定着を意図している。
ガイドライン等の開発
障害福祉サービス等で活躍するピサポーターの養成において重要な研修講師・ファシリテーターを養成する研修プログラムを構築した。
その他行政的観点からの成果
令和元年より障害者ピアサポート研修事業が実施されることとなり、令和3年度の障害福祉サービス等報酬改定において、ピサポーターの配置に係る体制加算が認められた。本研究はピアサポーターの質を担保し、現場でその強みを活かして活躍することを支援する研究である。
その他のインパクト
今年度、対面研修が思うように実施できなかったことから、講義部分の映像化に取り組み、16本の講義を収録した。過去の厚労科研で開発したテキストとともに、都道府県等で実施する養成研究での活用などを考えており、研究班も任意団体としてその普及活動を継続していく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
今後障害福祉サービス等で働くピサポーターの研修において、講師・ファシリテーターを務める人材育成のプログラムを開発した
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202018012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,369,000円
(2)補助金確定額
8,369,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,860円
人件費・謝金 2,449,853円
旅費 208,204円
その他 4,647,083円
間接経費 1,043,000円
合計 8,369,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-