文献情報
文献番号
200804006A
報告書区分
総括
研究課題名
環境中の疾病要因の検索とその作用機構の解明に関する研究
課題番号
H20-国医・指定-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
若林 敬二(国立がんセンター研究所 がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
- 中釜 斉(国立がんセンター研究所 早期がん研究プロジェクト)
- 渡辺 徹志(京都薬科大学薬学部 衛生薬学系 公衆衛生学教室)
- 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所・分子診断 遺伝子細胞医薬部)
- 高野 裕久(国立環境研究所環境健康研究領域・環境医学)
- 島 正之(兵庫医科大学 公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,225,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
環境中のヒトのがんやその他疾病発生要因及び感受性要因を総合的に把握し、最終的にはがんを含む疾病の第一次予防推進の為の基礎的研究成果をあげることを目的とする。
研究方法
がんやその他の疾病発生の外的要因を検索するために、表層土壌、大気粉塵及びナノマテリアルの変異原性や免疫への影響について解析した。内的要因の検索としては、ニトロソ胆汁酸抱合体由来のDNA付加体の解析および大腸上皮における網羅的な遺伝子発現プロファイル、アレイCGH法によるがん細胞における遺伝子増幅のメカニズムについて検討した。
結果と考察
ディーゼル排出粒子、焼却炉煤じん中から強変異原物質3,6-ジニトロベンゾ[e]ピレン(DNBeP)が検出され、それらが3,6-DNBePの発生源であることが示唆された。女子大学生の肺機能と大気中汚染物質濃度との間に有意な負の相関が認められ、アレルギー素因を有する者ではその傾向が顕著であった。ナノ粒子の免疫への影響を調べた所、ナノ粒子の単独およびアレルゲンとの併用曝露群で肺細胞の抗原提示に関わる分子の発現と抗原提示細胞数が有意に増加した。十二指腸液逆流モデルラットの胃内でニトロソ胆汁酸抱合体由来のDNA付加体(O6-CMdG及び3-ESA-dC)のレベルが偽手術群に検出されたものよりも高レベルであることがわかった。加熱食品中の変異原・がん原物質であるPhIPによる大腸発がんに高感受性を示すF344系統では、大腸上皮において、PI3K/mTORのシグナル活性化に重要な役割を果たすAKTが有意に活性化していることが分かった。カスタムCGHアレイを用いたコピー数解析により、8番染色体上のc-myc遺伝子領域の増幅の様式が染色体上の比較的広い範囲におよぶことがわかった。
結論
本研究は、ヒトのがんやその他の疾病発生要因及び感受性要因を総合的に把握することを目的として、環境中の変異原物質や大気粉塵やナノマテリアルの疾病要因としての重要性を明らかにした。更に、実験動物を用いたDNA付加体の解析、新規の発がん分子機構の解析等により、がんの発生要因及び感受性要因を見い出した。以上の成果は、がんを含む疾病予防対策を講ずる上に有用な基礎的研究資料になるものと確信する。
公開日・更新日
公開日
2009-04-14
更新日
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