支援機器の適切な選定および導入運用に向けたガイドライン作成のための研究

文献情報

文献番号
202018009A
報告書区分
総括
研究課題名
支援機器の適切な選定および導入運用に向けたガイドライン作成のための研究
課題番号
19GC2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 浅川 育世(茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科)
  • 上村 智子(信州大学 医学部)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 石渡 利奈(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
  • 硯川 潤(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
  • 清水 如代(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、種々の支援機器データベース作成や、それに基づいた選定・導入運用が行われているが、既存のデータベースは、支援場面や適応者等の情報が統一されていない。このことから、既存の支援機器に関するデータを有効に活用するためには、リハ関連専門職等が共通して利用できるガイドライン等が必要である。本研究では、そのためにICFにおける活動・参加の項目、ISO9999福祉用具の分類と用語の支援機器の分類規格等を基に、既存の支援機器とICFの対応表を作成し、それに基づいた機器の選定・導入運用に関するガイドライン作成に資する情報を整理することを目的とする。本年度は、昨年度作成したICFと支援機器の対応表素案を基に、対応表の作成およびガイドライン作成に資する情報の整理、ガイドライン作成方針の決定を目標とした。
研究方法
1)既存の支援機器に関するデータベースの情報集約
支援機器のデータベースに関するインターネット調査を行うとともに、各収載項目のICFおよびISO9999との関連を整理した。
2)ICFおよびISO9999の現状把握
昨年度得られた、WHOの支援機器関連の動向およびISO9999を所管するISO/TC173/SC2の状況を基に、対応表およびガイドライン作成に資する情報を整理した。
3)支援機器の利用状況および関係する専門職の状況把握
地域での障害者在宅支援に従事する医療福祉専門職の支援機器の選択・調整プロセスについて質的調査を実施し、その結果からガイドラインの要件となる情報を抽出した。
4)原因疾患別の支援機器利用状況の整理
代表的原因疾患について、昨年度収集した支援機器の情報を対応表に実装し、その妥当性を評価した。
5)支援機器のICF対応表の作成
昨年度作成した対応表の素案を基に、ICFの心身機能・構造と活動・参加の第2分類項目を用いた支援機器のマッピングを精査し、さらに上記4)から得られた結果に基づき、対応表を修正した。
6) 支援機器データベースを活用するためのガイドライン作成方針の決定
先行好事例の情報収集のためにインタビュー調査を実施した。また、相談事業所を対象として、支援機器を活用する際のガイドラインに必要な内容について、アンケート調査を実施し、その結果を基にガイドライン作成方針を決定した。
7)既存の支援機器データベースと作成した対応表の関連整理
既存のデータベースで用いられている分類の特徴をふまえ、本研究で作成した対応表で使用しているICFに基づく分類との関連を抽出し、整理した。
結果と考察
1)既存の支援機器に関するデータベースの情報集約
ICFやISO9999の分類をもとに情報を整理することは可能であり、特にICFの活動を基にした機器の整理は、比較的進んでいることも示唆された。
2)ICFおよびISO9999の現状把握
ICFおよびISO9999の動向を把握し、今後実施するガイドライン作成に必要となる情報として整理した。
3)支援機器の利用状況および関係する専門職の状況把握
支援機器の利用状況、スマートデバイスの適合支援の実態が明らかになった。また、専門職を養成する大学ではICFの概念モデルの重要性が認識され、臨床での活用を視野に入れた教育が広がっていることが確認された。
4) 原因疾患別の支援機器利用状況の整理
認知機能関連の支援機器について、ICFコードおよび対応表を使って、支援機器選定のための検索が可能であることが示された。また、感覚機能関連の支援機器では、収集した機器にICFコードをあてはめ、対応表に追加した。ICFコードを当てはめたことで、その使用方法をより広く周知させる可能性が広がった。
5)支援機器のICF対応表の作成(石渡)
支援機器の対応表を作成し、支援機器と利用者の状況の情報を統一された分類により、整理することが可能となった。
6) 支援機器データベースを活用するためのガイドライン作成方針の決定
先行好事例の情報収集と相談支援事業所を対象とした支援機器活用ガイドラインに必要な内容の調査結果より、ガイドラインの骨子を作成した。
7)既存の支援機器データベースと作成した対応表の関連整理
既存のデータベースの情報収集から、本研究で作成した対応表の構造についての妥当性を示す結果が得られた。
結論
昨年度作成したICFと支援機器の対応表素案を基に、情報の追加、修正を行うことで対応表を構築した。また、支援機器の選定・導入運用の現場に対して、聞き取り調査、アンケート調査を実施し、その現状を把握した。それらの知見を基に、対応表を活用した支援機器の選定・導入運用を円滑に進めるためのガイドラインの作成方針及び骨子案を作成した。これらより、次の段階であるガイドライン作成を円滑に行うための準備として、十分な成果が得られたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202018009B
報告書区分
総合
研究課題名
支援機器の適切な選定および導入運用に向けたガイドライン作成のための研究
課題番号
19GC2002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 浅川 育世(茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科)
  • 上村 智子(信州大学 医学部)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 石渡 利奈(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
  • 硯川 潤(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
  • 上野 友之(筑波大学 医学医療系)
  • 清水 如代(後藤 如代)(筑波大学 医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、種々の支援機器データベース作成や、それに基づいた選定・導入運用が行われているが、既存のデータベースは、支援場面や適応者等の情報が統一されていない。このことから、既存の支援機器に関するデータを有効に活用するためには、リハ関連専門職等が共通して利用できるガイドライン等が必要である。本研究では、そのためにICFにおける活動・参加の項目、ISO9999福祉用具の分類と用語の支援機器の分類規格等を基に、既存の支援機器のICF対応表を作成し、それに基づいた機器の選定・導入運用に関するガイドライン作成に資する情報を整理することを目的とする。
研究方法
1)既存の支援機器に関するデータベースの情報集約
支援機器のデータベースに関するインターネット調査を行い、各収載項目のICFおよびISO9999との関連を整理した。
2)ICFおよびISO9999の現状把握
WHOの支援機器関連の動向とISO9999を所管するISO/TC173/SC2の状況を基に、対応表およびガイドライン作成に資する情報を整理した。
3)支援機器の利用状況および関係する専門職の状況把握
地域での障害者在宅支援に従事する医療福祉専門職の支援機器の選択・調整プロセスについて調査を実施し、その結果からガイドラインの要件となる情報を抽出した。
4)原因疾患別の支援機器利用状況の整理
代表的原因疾患について、支援機器の情報を収集し、対応表に実装するとともに、その妥当性を評価した。
5)支援機器のICF対応表の作成
各分野の支援機器について、ICFの心身機能・構造と活動・参加の第2分類項目を用いた支援機器のICF対応表を作成した。
6) 支援機器データベースを活用するためのガイドライン作成方針の決定
先行好事例の情報収集のためにインタビューを実施した。また、相談事業所に対して、支援機器を活用する際のガイドラインに必要な内容について、アンケート調査を実施し、その結果を基にガイドライン作成方針を決定した。
7)既存の支援機器データベースと作成した対応表の関連整理
既存のデータベースで用いられている分類の特徴をふまえ、本研究で作成した対応表で使用しているICFに基づく分類との関連を整理した。
結果と考察
1)既存の支援機器に関するデータベースの情報集約
国内外の支援機器データベースの情報を集約した結果、ICFやISO9999の分類をもとに情報を整理することは可能であり、特にICFの活動を基にした機器の整理は、比較的進んでいることも示唆された。
2)ICFおよびISO9999の現状把握
ICFおよびISO9999の動向を把握し、ガイドライン作成に必要となる情報として整理した。
3)支援機器の利用状況および関係する専門職の状況把握
支援機器の利用状況、スマートデバイスの適合支援の実態が明らかになった。また、専門職を養成する大学ではICFの概念モデルの重要性が認識され、臨床での活用を視野に入れた教育が広がっていることが確認された。
4) 原因疾患別の支援機器利用状況の整理
認知機能関連の支援機器の情報を収集し、ICFコードを付し、対応表に実装した。試行の結果、支援機器選定のための検索が可能であることが示された。また、感覚機能関連の支援機器では、収集した機器にICFコードを付し、対応表に実装した。ICFコードを当てはめたことで、その使用方法をより広く周知させる可能性が広がった。
5)支援機器のICF対応表の作成(石渡)
支援機器の対応表を作成し、支援機器と利用者の状況の情報を統一された分類により、整理することが可能となった。
6) 支援機器データベースを活用するためのガイドライン作成方針の決定
先行好事例の情報収集と相談支援事業所を対象とした支援機器活用ガイドラインに必要な内容の調査結果より、ガイドラインの骨子を作成した。
7)既存の支援機器データベースと作成した対応表の関連整理
既存のデータベースの情報収集から、本研究で作成した対応表の構造についての妥当性を示す結果が得られた。
結論
ICFとISO9999を用いて、生活機能と支援機器の対応表を作成した。また、対応表作成の過程において、ICF,ISO9999等の支援機器に関連する国際動向、障害別の支援機器の情報を収集した。さらに各機器にICFとISO9999のコードを付しデータ化した。
ガイドライン作成方針の決定においては、支援機器の選定・導入運用の現場の状況について、先行事例の聞き取り調査、全国の相談系サービス事業所へのアンケート調査を実施し、その現状を把握した。それらの知見を基に、対応表を活用した支援機器の選定・導入運用を円滑に進めるためのガイドラインの作成方針及び骨子案を作成した。
これらより、支援機器の適切な選定・導入運用ガイドライン作成を円滑に行うための準備が整った。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202018009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
支援機器の適切な選定および導入運用の促進を目指し、生活機能と支援機器の対応表を作成した。そのために、ICFやISO9999、その他支援機器に関連する国際動向を把握した。さらに、障害別で利用されている支援機器の情報を収集し、各機器にICFとISO9999のコードを付し、データ化した。これらより、国際的な動向をふまえ、支援機器と生活機能の関係を障害分野ごとに整理することができ、専門的、学術的観点から、これまでにない意義のある成果をえることができた。また、今後のICFの動向を考えても学術的意義は高い。
臨床的観点からの成果
支援機器の選定、導入運用の現場の状況を把握するために、先行好事例および、相談系サービス事業所の現状について調査を実施した。その結果から、支援機器の相談先が整備されていないという課題や、関連するステークホルダが多岐にわたることが示された。さらにそれらの知見を基に、対応表を活用した支援機器の選定・導入運用を円滑に進めるためのガイドラインの作成方針及び骨子案を作成した。これにより、現場に適したガイドラインの要件を把握することができ、臨床的観点において意義ある成果が得られたといえる。
ガイドライン等の開発
本研究は、技術の進歩により社会保障サービスの範疇を超えて開発される支援機器の恩恵を、障害のある人々や家族、それを支援する専門職等が、適切に活用するための選定、導入運用ガイドラインを作成することを目指している。目的を達成するために、それに資する国際動向および国内外の現状を把握しガイドライン要件の抽出を行い、研究目的は概ね達成できた。これにより、ガイドラインが開発できる段階に達しており、今後は、運用手法の検討などの社会実装等を含めて、ガイドラインを開発することとしている。
その他行政的観点からの成果
社会保障費の増大を受け、新たな技術の活用とそれによる自立や参加の促進は、喫緊の行政課題である。本研究では、給付制度では対応しない機器を含む広い範囲の支援機器を対象とし、その利活用を促進するためのガイドラインの作成を目指している。このガイドラインは、関連する専門職のスキルの底上げを図り、より多くの支援機器が適切に利用者の手に渡り、継続的な利用を可能とする。そのために、国際動向や国内外の状況を把握し、支援機器ICF対応表とガイドライン骨子をまとめた本研究の成果は、行政的な観点で有意義なものである。
その他のインパクト
一般向けの普及・啓発として、国際福祉機器展での展示発表を行った。ICFを学んだ専門職が興味を示し、個別に意見交換を行った。また、中国や台湾からの来場者とも個別の意見交換を行い、ICFやISOなど国際的な基準を支援機器の分野に導入することついて議論を深めた。厚生労働省主催のICFシンポジウムでの発表も行い、ICFの検討グループ等にもインパクトを与えるとともに、ガイドライン作成に向けた知見も得ることができた。WHOや北米リハ工学会が主催する国際会議でも発表し、国際的なインパクトを与えることもできた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
国際福祉機器展での展示

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
202018009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,635,000円
(2)補助金確定額
9,635,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,727,342円
人件費・謝金 1,730,120円
旅費 2,224円
その他 6,175,314円
間接経費 0円
合計 9,635,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-