身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究

文献情報

文献番号
202018007A
報告書区分
総括
研究課題名
身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究
課題番号
19GC2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 水越 美奈(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科)
  • 山本 真理子(帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科)
  • 清野 絵(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 障害福祉研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,206,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬:以下、補助犬)の質を確保し社会での受け入れを一層進めるために、(1)法令検証を行うこと、(2)衛生管理のための対訓練事業者と使用者に向けた具体的な手引きを作成すること、(3)受け入れ促進のため受け入れ施設等(業界)ごとに留意点をまとめ、ガイドブックを作成すること、(4)補助犬の需給推計方法を提案し、試算を行うことを目的とした。

研究方法
(1)法令検証:盲導犬訓練施設、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業の運営および指定基準に関して比較検討を行う。次に、これらと他の身体障害者社会参加支援施設の設備および運営に関する基準を比較する。
(2)衛生管理:①現行の「身体障害者補助犬の衛生確保のための健康ガイドライン」を参考に項目を抽出、
②追加項目を検討、③1,2で挙がった項目の情報について、研究協力者に項目の妥当性について意見を伺い、項目を選択した根拠や管理の方法について、国内外の文献検索を、④1~3を基に、手引き(案)を作成、。⑤作成した手引き(案)について、ご意見をいただく、⑥最終案を作成し、同様にチェックをいただいた後、編集と印刷を行ない、訓練事業者、認定法人等、関係各所に配布する。
(3)受け入れ促進:①補助犬使用者の施設利用に関わる過去の文献ならびに事例を精査し、また、補助犬の受け入れに関わる過去の事例を収集し、内容をまとめた。②医療機関向けガイドラインの検証、③保健所(全国471ヵ所)を対象に、補助犬に関する相談への対応事例を調査した。また、省庁の実態を把握するため、アンケート調査を実施、④受け入れ施設(者)等への調査、⑤使用者調査、⑥ガイドブックを作成を行った。
(4)国内外の文献を網羅的に調査し、先行研究における需要推計について整理し、また需要推計の要件を抽出、検討した。次に、文献調査による抽出された、補助犬が適応となる障害者の状態像と需要推計の要件から、計算式を提案し、需要推計の試算を行った。


結果と考察
1.法令検証:指定基準に関して、盲導犬訓練施設と介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業の根拠制度が異なっていること、介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業では、苦情解決のための体制が整備されていることが明記されているのに対して、盲導犬訓練施設では明記されていない点が異なっていた。盲導犬訓練施設の設備及び運営に関する基準の観点は、他の身体障害者社会参加支援施設の基準の観点と共通していた。指導監査に関しては、社会福祉法第70条が根拠となり、身体障害者社会参加支援は第2種社会福祉事業であることから、都道府県による指導監査の対象になっている。
2.衛生管理:補助犬が社会に受け入れられるために必要な衛生管理と行動管理を具体的に示し、これらを補助犬訓練事業者が行うべきことと使用者が行うべきことに分類し、それらの根拠と背景、さらに補助犬訓練事業者が使用者に対して補助犬の衛生管理を具体的に指導することができるような手引きを作成し、全ての補助犬育成事業者および認定法人に配布した。
3.受け入れ促進:る文献調査、既存ガイドラインの検証に加えて、補助犬使用者の受け入れに関する行政の対応、受け入れ施設等の補助犬(法)の認知度、補助犬使用者の受け入れに対する不安や意識、補助犬使用者が施設等への補助犬同伴の受け入れを円滑に進めるために行っている工夫や対策を調査した。結果を受け、業界特有の懸念にも配慮したガイドブックを作成した。
4.需要推計:文献調査を行い、需要に関連する要素を抽出し、要素や推計の計算式の案を作成し、検討を行った。その結果、需要推計の先行研究は少なく、計算式や数値に課題があることが示唆された。また、定的に計算式案と試算を行った。しかし、現状の身体障害者補助犬法では補助犬を支給する障害者の基準が明確に定義されていない。そのため、現状では、補助犬の需要推計について、根拠を持って、正確な推計を行うには困難があることが明らかになった。
結論
1.法令検証:身体障害者補助犬法の趣旨からみて、盲導犬訓練施設、介助犬訓練事業と聴導犬訓練事業の指定、認定の基準および監査制度の一元化が必要である。
2.衛生管理:『身体障害者補助犬の質の確保と受け入れの促進』には、衛生管理や行動管理、候補犬の健全な繁殖(または健全な選択)は欠かせない。適切な指導や支援をするための情報提供については常にアップデートする必要があると考える。
3.受け入れ促進:補助犬使用者、施設等、施設利用者がいずれも安心した社会活動を営めるよう、業界ごとの特有な懸念にも配慮したガイドブックを作成した。
4.需要推計:課題として、補助犬の支給の基準が明確に定義されていないため、根拠を持った実態を反映した需要推計が難しいことが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202018007B
報告書区分
総合
研究課題名
身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究
課題番号
19GC2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 水越 美奈(日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学科)
  • 山本 真理子(帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科)
  • 清野 絵(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 障害福祉研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体障害者補助犬の質を確保し社会での受け入れを一層進めるために、①法令検証、②衛生管理の視点から補助犬の質を確保するための方策を提言する、③既存のガイドライン等を検証し、各分野で補助犬使用者を受け入れるための留意点について取りまとめる、④補助犬の需要推計方法について検討することを目的とした。
研究方法
1.法令検証:1年目は、現行法令等や他法・他制度の認定基準等との比較検討を行った。2年目は、身体障害者補助犬法および同法施行規則等に関する法制度の検証を行った。
2.衛生管理:1年目は、ヒアリング調査、海外文献調査、現状から、現行のガイドラインの問題点を抽出した。2年目は、補助犬の衛生管理を具体的に指導することができるような手引きを作成した。
3.受け入れ促進:1年目は、文献調査、既存ガイドライン(医療機関向け)の検証、保健所対象調査、施設等へのヒアリング/アンケート調査を行った。2年目は、補助犬を同伴して、施設等を利用する際の課題を明らかにした上で、ガイドブックを作成した。
4.需要推計:1年目は、国内外の文献調査、都道府県の補助犬の助成支給要件の調査、需要推計の計算式の試案作成、暫定的な推計値を算出した。2年目は、文献調査、需要に関連する要素を抽出し、要素や推計の計算式の案を作成し検討を行った。
結果と考察
1.法令検証:1年目は、台湾およびアメリカの補助犬政策については、日本の政策に示唆を与えうる要素について検討した。また、東京都の補助犬給付制度について調査を行った。2年目は、身体障害者補助犬法および同法施行規則等に関する法制度の検証を行った。指定基準に関して、盲導犬訓練施設と介助犬訓練事業、聴導犬訓練事業の根拠制度が異なっていること、盲導犬訓練施設では苦情解決のための体制が整備されていることが明記されていない点が異なっていた。盲導犬訓練施設の設備及び運営に関する基準の観点は、他の身体障害者社会参加支援施設の基準の観点と共通していた。指導監査に関しては、都道府県による指導監査の対象になっていた。
2.衛生管理:ヒアリング調査の結果、現行のガイドラインは実態に合わず、役に立たないことが指摘された。次に、海外文献を調査の結果、補助犬については狂犬病予防注射の文献以外は見つけることができなかった。次に、現行のガイドラインの項目に新興感染症や、補助犬候補犬の繁殖について、さらに熱中症などについての管理を追加記載した。また補助犬育成事業者と使用者がそれぞれ実施すべき項目を分け、さらに使用者の管理能力を配慮し、『補助犬使用者及び訓練事業者のための補助犬衛生管理の手引き 第1版』としてまとめた。
3.受け入れ促進:文献調査の結果、受け入れ拒否を経験した使用者は、補助犬法施行直後・現在ともに多く、法律を説明しても受け入れが認められない「完全拒否」を経験した人は、4割程いた。次に、既存ガイドラインの検証の結果、既存ガイドラインは、補助犬の受け入れの判断を医療機関に委ねる記載になっていること、また、補助犬を受け入れられない区域・場面についての具体例や補助犬の安全・衛生面の情報が不足していることが明らかとなった。次に、保健所対象調査の結果、358部の回答が得られ(回収率76.0%)、過去5年間に補助犬使用者から相談を受けた経験のある保健所は20施設(5.6%)であった。次に、補助犬使用者が補助犬を同伴して、補助犬使用者の受け入れに関する行政の対応、受け入れ施設等の補助犬(法)の認知度、補助犬使用者の受け入れに対する不安や意識について調査した。また、補助犬使用者が施設等への補助犬同伴の受け入れを円滑に進めるために行っている工夫や対策を調査した結果を受け、ガイドブックを作成した。
4.需要推計:文献調査の結果、補助犬使用者の状態像が明らかになった。次に、助成支給要件については、都道府県により要件に違いがあることが明らかになった。次に、需要に関連する要素を抽出し、要素や推計の計算式の案を作成し、検討を行った。また現状の身体障害者補助犬法では補助犬を支給する障害者の基準が明確に定義されていない。そのため、現状では、補助犬の需要推計について、根拠を持って、正確な推計を行うには困難があることが明らかになった。
結論
1.法令検証:盲導犬訓練施設、介助犬訓練事業と聴導犬訓練事業の指定、認定の基準および監査制度の一元化が必要である。
2.衛生管理:適切な指導や支援をするための情報提供については常にアップデートする必要があると考える。
3.受け入れ促進:業界ごとの特有な懸念にも配慮したガイドブックを作成した。
4.需要推計:補助犬の支給の基準が明確に定義されていないため、根拠を持った実態を反映した需要推計が難しいことが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202018007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
身体障害者補助犬の質の確保に向けて、リハビリテーション医学、獣医学、法律学、動物人間関係学、社会福祉学等の支援から包括的な研究を行った。それにより、法制度、衛生管理、受入促進、需給推計について、先行研究や調査に基づき学術的かつ包括的に検討し課題の展望を示した。
臨床的観点からの成果
身体障害者補助犬は、障害者の社会参加への効果が期待できるが、質の確保や受入を促進するための要件が明確でないといった課題がある。これらの課題をふまえ、法制度、衛生管理、受入促進、ニーズの把握という包括的な視点から調査、検証を行い、課題や対応を提言したことは臨床的ニーズに応えるものであ。特に、衛生管理の手引き、受け入れガイドブックを作成したことは、臨床的意義が大きい。
ガイドライン等の開発
衛生管理について、補助犬訓練事業者が使用者に対して補助犬の衛生管理を具体的に指導することができる「補助犬使用者及び訓練事業者のための補助犬衛生管理の手引き(第1版)」(令和3年3月)を作成し、全ての補助犬育成事業者および認定法人に配布した。受け入れ促進について、業界別の飲食店編、医療機関編、宿泊施設編、公共交通機関編、複合商業施設編、賃貸住宅・分譲マンション編、保健所編のガイドブックを作成した。
その他行政的観点からの成果
「身体障害者補助犬の訓練及び認定等のあり方検討会」の第2回(令和2年5月29日)、第4回(令和3年3月8日)で本研究の進捗や成果が報告された。
その他のインパクト
該当なし。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202018007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,532,000円
(2)補助金確定額
2,532,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,031,196円
人件費・謝金 132,275円
旅費 838円
その他 1,367,691円
間接経費 0円
合計 2,532,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-