補装具費支給制度における種目の構造と基準額設定に関する調査研究

文献情報

文献番号
202018001A
報告書区分
総括
研究課題名
補装具費支給制度における種目の構造と基準額設定に関する調査研究
課題番号
H30-身体・知的-指定-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部情報システム課)
研究分担者(所属機関)
  • 白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 我澤 賢之(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害福祉研究部)
  • 石渡 利奈(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) )
  • 三田 友記(国立障害者リハビリテーションセンター研究所義肢装具技術研究部)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
  • 樫本 修(宮城県リハビリテーション支援センター)
  • 芳賀 信彦(国立障害者リハビリテーションセンター  自立支援局)
  • 丸山 徹(埼玉県総合リハビリテーションセンター 医療局)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 清水 朋美(西田 朋美)(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第二診療部 )
  • 堀 寛爾(国立障害者リハビリテーションセンター 病院 第二診療部 研究所併任)
  • 井村 保(中部学院大学 看護リハビリテーション学部)
  • 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
9,466,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
補装具費支給制度は、身体障害者の自立と社会参加を支援するための重要な柱である。「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく補装具の種目、購入又は修理に要する費用の額の算定等に関する基準」(以下、「補装具基準」という。)に規定する種目、基準額等により、市町村が身体障害者更生相談所等による判定を踏まえて支給決定している。補装具基準は厚生労働科学研究の調査結果等を踏まえ、概ね3年ごとに改定が行われている。
本研究の目的は、①補装具費支給事務の円滑な運用への提言を行い、 ②補装具の種目構造等を整理・明確化するとともに ③基準額算定のための評価手法の開発を行うこと、である。
研究方法
補装具費支給事務の円滑な運用については、高額完成用部品の判定手法の検証、判定スキル向上、障害児の支給決定プロセスの検証、借受けの効果的運用について調査のため、全国の身体障害者更生相談所、市町村の補装具費支給のための窓口に対してアンケート調査を行った。さらに、判定手法の検証や、判定スキル向上に係る面に関しては、判定に立ち会うことの多い専門職である義肢装具士を対象としてアンケート調査を行った。また、平成30年度から始まった借受けについてもアンケート調査を行った結果から、模擬的運用を行い問題点の抽出を行った。
基準額算定のための評価手法の開発については、補装具の製作実態やまた価格調査方法の確立とその他補装具の基準額設定の妥当性の検証をすすめるため、座位保持装置の作業工程に関する調査や意思伝達装置の支給状況として処方・機種選択等に関する現状調査及び検討を行った。また、筋電電動義手の作業工程について、作業時間についての調査を行った。
結果と考察
補装具費支給事務の円滑な運用については、全国の身体障害者更生相談所からの回答90.9%(70/77)、市町村からの回答44.9%(783/1743)についての中で、視覚関連補装具について判断に悩むケース等が入った場合、相談する専門職が理学療法士や看護師が多い実態があり、専門性の担保に課題がある事が分かった。補装具としてのコンタクトレンズについては、製造メーカーおよび眼科医であっても補装具についての認知度が低かった。借受けの問題点抽出のために行った模擬的運用による実態の把握で抽出できた問題点では、減価償却に加えて工賃や流通に伴う経費の加算を含めた基準額を再検討することが必要と考える結果になった。 
基準額算定のための評価手法の開発では、義肢・装具・座位保持装置の3種目では、事業所の売上高営業利益率は全産業平均、製造業平均数値の比較すると低い結果であった。素材については、国内企業物価指数の動きが示すように物価の上昇が影響して+2.0%の増加が見られた。座位保持装置の基本工作法に関する調査では、製作の作業分析を行い400を超える作業を抽出し工程として取り纏めた。
結論
補装具費支給事務の円滑な運用については、視覚関連補装具の支給決定に、関係する専門職の意見が、反映されにくい環境になっていた。更に、携わる眼科医が補装具費支給制度を十分理解できていないことが分かった。また、今の借受けの価格設定では、人件費やものの流通、完成用部品の減価償却などを再度検討する必要があることが分かった。
基準額算定のための評価手法の開発では、売上高営業利益率は全産業平均、製造業平均数値の比較をすると低いことが分かり、更に新型コロナウイルス感染症による影響を受けていることも分かった。これは、次回、経営実態を調査するさいには考慮する必要がある。補装具の製作では、筋電電動義手の作業時間を調査し、筋電電動義手の製作経験ではなく、義肢装具士としての経験年数により決まってくることが分かり、実測する際の条件が絞られた。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202018001B
報告書区分
総合
研究課題名
補装具費支給制度における種目の構造と基準額設定に関する調査研究
課題番号
H30-身体・知的-指定-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 伸也(国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部情報システム課)
研究分担者(所属機関)
  • 白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 我澤 賢之(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害福祉研究部)
  • 石渡 利奈(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) )
  • 三田 友記(国立障害者リハビリテーションセンター研究所義肢装具技術研究部)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
  • 樫本 修(宮城県リハビリテーション支援センター)
  • 芳賀 信彦(国立障害者リハビリテーションセンター  自立支援局)
  • 丸山 徹(埼玉県総合リハビリテーションセンター 医療局)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 清水 朋美(西田 朋美)(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第二診療部 )
  • 井村 保(中部学院大学 看護リハビリテーション学部)
  • 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター)
  • 堀 寛爾(国立障害者リハビリテーションセンター 病院 第二診療部 研究所併任)
  • 根岸 和諭(福岡義肢製作所 営業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
補装具費支給制度は、身体障害者の自立と社会参加を支援するための重要な柱である。「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく補装具の種目、購入又は修理に要する費用の額の算定等に関する基準」(以下、「補装具基準」という。)に規定する種目、基準額等により、市町村が身体障害者更生相談所等による判定を踏まえて支給決定している。補装具基準は厚生労働科学研究の調査結果等を踏まえ、概ね3年ごとに改定が行われている。
本研究の目的は、①補装具費支給事務の円滑な運用への提言を行い、 ②補装具の種目構造等を整理・明確化するとともに ③基準額算定のための評価手法の開発を行うこと、である。
研究方法
補装具費支給事務の円滑な運用については、高額完成用部品の判定手法の検証、判定スキル向上、障害児の支給決定プロセスの検証、借受けの効果的運用について調査のため、全国の身体障害者更生相談所、市町村の補装具費支給のための窓口に対してアンケート調査を行った。さらに、判定手法の検証や、判定スキル向上に係る面に関しては、判定に立ち会うことの多い専門職である義肢装具士を対象としてアンケート調査を行った。補装具で扱うコンタクトレンズに処方についての実態調査を行った。また、平成30年度から始まった借受けについては実態を把握するためアンケート調査を行い現状制度で借受けを運用することは採算を考えると無使いし都の多くの意見が挙がってきた。そこで、模擬的に借受けを運用し問題点の抽出を行った。
 補装具の種目構造等を整理・明確化については、新しい評価手法、現行基準の種目整理を取り上げ新しい技術として取り入れられている3D技術納導入状況の把握のため、インターネット調査を行った。座位保持装置と車椅子の制度上の住み分けについては、現行基準の種目整理については、海外の文献調査等を進めつつ、リハ専門職および製作事業者等からなるワーキンググループを開催し意見を集約した。
 基準額算定のための評価手法の開発については、義肢装具、座位保持装置についての基本工作法に沿った価格調査方法の確立とその他補装具の基準額設定の妥当検証をすすめ、借受けの基準額の妥当性検証のための実態把握を行った。座位保持装置の基本工作法については座位保持装置の製作風景から作業分析を行った。意思伝達装置の支給状況として処方・機種選択等に関する現状調査及び検討を行った。電動義手については、実際に複数の者が筋電電動前腕義手を製作したときの作業時間を実測し、製作時必要な作業時間を出した。
結果と考察
補装具費支給事務の円滑な運用については、全国の身体障害者更生相談所からの回答90.9%(70/77)、市町村からの回答44.9%(783/1743)により、更生相談所の判定スキルに関しては、電動車椅子と車椅子(オーダーメイド)の判定でより慎重な対応をとるために直接判定で対応しており高度な判定が必要であると判断していることが分かった。障害児から障害者への移行時の問題では、必要な情報が共有できていない。本人や保護者、関係者が制度を十分理解できていない。などの問題があげられた。視覚関連補装具では知識習得の機会が少なく、さらに、知識習得に時間を割けないとの回答が多かった。聴覚関連補装具では、補聴援助システムは明らかにFM方式からデジタル方式に移行している現状が確認された。借受けが浸透しない理由として、事業者に起因する事項、行政負担に起因する事項、制度の解釈と理解の普及に関する事項が抽出された。借受けの模擬的運用により、多岐にわたる課題が抽出された。
 補装具の種目構造等を整理・明確化については、3Dデジタル技術の様な新しい技術は、強度等の課題がみられる一方で,体幹装具やインソール、義手パーツ、義足カバーなど実利用が進んでいる部分も見えてきた。現行基準の種目整理については、リハ専門職および製作事業者等からなるワーキングを開催し、整理案を出すことができた。
 基準額算定のための評価手法の開発については、基本工作法に関係する調査では、全国の製作事業者に対して調査票を送り71.7%(274/382)の回答があり、人件費、素材単価、販売価格を得た。補聴器に関しては、アンケート調査の結果、新旧補装具の支給状況が判明した。また、意思伝達装置の支給状況では、意見書への記入が不十分なケースが目立ち、判定医と身更相間の情報連携が重要であると示唆された。
結論
本研究では、①補装具費支給事務の円滑な運用、②補装具の種目構造等を整理・明確化、③基準額算定のための評価手法の開発と3つの目的に合わせ、アンケート調査およびワーキンググループによる検討、模擬的運用などにより課題を抽出した。さらなる情報の精査をすすめ、スムーズな制度運用に繋げていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202018001C

収支報告書

文献番号
202018001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,696,000円
(2)補助金確定額
4,905,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,791,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,652,060円
人件費・謝金 313,050円
旅費 61,683円
その他 2,648,207円
間接経費 230,000円
合計 4,905,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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