文献情報
文献番号
202017010A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症施策の評価・課題抽出のための研究:領域横断・融合的アプローチと大規模データベースの実践的活用
課題番号
20GB1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 広井 良典(京都大学 こころの未来研究センター)
- 山田 文(京都大学 法学研究科)
- 佐々木 一郎(同志社大学 商学部)
- 前田 昌弘(京都府立大学 生命環境科学研究科)
- 村嶋 幸代(大分県立看護科学大学 )
- 佐々木 典子(京都大学 医学研究科)
- 武地 一(藤田医科大学 医学部)
- 中村 桂子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
- 村上 玄樹(産業医科大学 大学病院)
- 原 広司(京都大学 産官学連携本部)
- 國澤 進(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
認知症施策推進大綱(2019年6月)施策の進捗を確認する2022年に向けて、「共生」と「予防」の進捗把握と評価方策を確立するため、以下の目的を設定する。(1)「共生」概念を、学際的アプローチをもって整理する。また、認知症の人をとりまく生活環境に関して包括的な評価指標体系を構築する。(2)「共生」「予防」の両側面から指標体系を構築する。また、疫学指標を設定し、指標間の関連を明らかにし、「予防」の取組の進捗評価のための指標体系を構築する。特に、「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」「認知症発症後、重症化のスピードを遅らせる」を中心に考慮する。今年度は認知症高齢者の生活自立度による地域ごとの健康余命の算出を行う。そして、「共生」の概念および「予防」の施策を、社会に具現化されるあり方として表現し、学際的アプローチを用いて提案する。
研究方法
(1)「共生」の概念整理、および(2)指標体系の構築の2本を柱として実施する。具体的には、認知症の人をとりまく生活環境に関して包括的な評価指標体系構築を目指し、認知症大綱を基礎として、認知症や高齢者にやさしいまちづくりに関する既存の文献やWHO等の枠組みを参考にして学際的に議論し、認知症の人と家族を取り巻くいろいろな軸から共生のあり方を示しうる全体構成を設定する。また、(2)「共生」「予防」の視点から、全国の二次医療圏・市町村レベルで認知症関連の施策・社会状況を可視化・評価するための、指標体系を構築する。まちづくりに関連する指標体系のうち、基礎データとなる公表データを集めデータベースの基礎とする。指標体系から健康寿命との関連要因の探索もあわせて行う。
結果と考察
(1)「共生」の概念整理: 認知症や高齢者にやさしいまちづくりに関する既存の文献やWHO等の枠組みを参考にして学際的に議論し、認知症の人と家族を取り巻く各側面から共生のあり方を示しうるいろいろな軸から共生のあり方を示しうる全体構成を設定した。そのうち中核となりうる領域の現場からのエビデンス、理論の共有を研究班内で行った。具体的には①社会参加・認知症カフェ・サロン、②都市・交通計画、③社会関係資本・健康まちづくり、④認知症の人を支える家族への支援と社会的包摂、⓹IT活用を軸として、「共生」の概念を深めつつ整理した。これらをもとに今後も共生の概念を継続的にとりまとめ、「全世代にやさしい健康まちづくり(仮)」のガイドブックの作成を目指していく。
(2)認知症高齢者の生活自立度による健康余命を要介護度1・2、認知症自立度1・2の各時点を基準として市町村、二次医療圏ごとに算出した。人口の小さな市町村では健康余命は不安定となり実用的ではない。二次医療圏ごとの算出値を中心に検討を進めた。具体例として、40歳時点、50歳時点、65歳時点での、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上を不健康とした場合の健康余命は、比較的安定し、社会的意義の上でも、今後重要となる可能性がある。「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」「認知症発症後、重症化のスピードを遅らせる」という概念領域を、具体的に評価する指標として有力な候補指標になると考えられた。
これらの健康余命は、まちづくりに関連する指標体系のコア指標となるであろう。また、まちづくりに関連する指標体系のうち、基礎データとなる公表データを集めデータベースを構築しつつある。本データベースは健康寿命の関連要因の探索の土台となり、また、評価指標体系の基盤ともなるものである。今後、健康余命指標の確立とともに、健康余命の関連要因に係る指標群の同定、各指標間の関係などを解析しながら、認知症諸施策の包括的な評価体系を構築していくことになる。
(2)認知症高齢者の生活自立度による健康余命を要介護度1・2、認知症自立度1・2の各時点を基準として市町村、二次医療圏ごとに算出した。人口の小さな市町村では健康余命は不安定となり実用的ではない。二次医療圏ごとの算出値を中心に検討を進めた。具体例として、40歳時点、50歳時点、65歳時点での、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上を不健康とした場合の健康余命は、比較的安定し、社会的意義の上でも、今後重要となる可能性がある。「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」「認知症発症後、重症化のスピードを遅らせる」という概念領域を、具体的に評価する指標として有力な候補指標になると考えられた。
これらの健康余命は、まちづくりに関連する指標体系のコア指標となるであろう。また、まちづくりに関連する指標体系のうち、基礎データとなる公表データを集めデータベースを構築しつつある。本データベースは健康寿命の関連要因の探索の土台となり、また、評価指標体系の基盤ともなるものである。今後、健康余命指標の確立とともに、健康余命の関連要因に係る指標群の同定、各指標間の関係などを解析しながら、認知症諸施策の包括的な評価体系を構築していくことになる。
結論
(1)各領域の専門家が、その領域の深い洞察と経験をインプットし、学際的な専門家が合流して議論することで、「共生」の包括的な概念の具現化に向かって着実に進むことができた。
(2) 認知症高齢者の日常生活自立度データを活用して、地域毎の健康余命指標を算出した。この健康余命指標の確立とともに、健康余命の関連要因などの解析をもとに、認知症諸施策の包括的な評価体系を構築していく。
(2) 認知症高齢者の日常生活自立度データを活用して、地域毎の健康余命指標を算出した。この健康余命指標の確立とともに、健康余命の関連要因などの解析をもとに、認知症諸施策の包括的な評価体系を構築していく。
公開日・更新日
公開日
2022-02-24
更新日
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