認知症の家族のための「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別認知行動療法プログラム」の開発と効果検証のための研究

文献情報

文献番号
202017008A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の家族のための「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別認知行動療法プログラム」の開発と効果検証のための研究
課題番号
20GB1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(国立大学法人 大阪大学 医学系研究科 精神医学)
研究分担者(所属機関)
  • 數井 裕光(高知大学 医学部)
  • 小杉 尚子(専修大学 ネットワーク情報学部)
  • 山中 克夫(筑波大学人間系)
  • 鈴木 麻希(大阪大学 連合小児発達学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究全体の目的は「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別認知行動療法(CBT)プログラム」の2つのコンポーネントからなる認知症の家族介護者(family caregiver: FC)に対する教育的支援システムを開発し、その有効性をランダム化比較試験(RCT)で検証することである。今年度は「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別CBTプログラム」の作成を目指した。
研究方法
「パーソナルBPSDケア電子ノート」開発研究では、電子ノートに掲載するコンテンツとシステムの構築を検討した。コンテンツについては、FCが円滑にBPSDに対する予防、対応ができるようにするための情報が何であるかを研究チーム内で議論した。その際、我々が先行研究で作成した「認知症の方のBPSDを包括的に予防・治療するための指針(https://www.bpsd-web.com/)」を参考にした。情報量は過剰にならないように留意した。システムの構築については視認性の高い文字の大きさと色彩、1ページに閲覧できる情報量の制限を重視した。また直感的に操作できる仕組みと理解しやすい情報の階層的提示も重視した。さらにスマートフォンで閲覧することが多いと考えられたため、小さな画面でも一覧性よく閲覧できる仕組みも構築することとした。一方「疾患別CBTプログラム」開発研究では、新型コロナウイルス感染症流行に伴いプログラムの基本骨子を再検討した。研究チーム内で議論を重ね、対面方式の集団セッションから非対面方式(オンライン)を主とした個別セッションへと変更することに決定した。また非対面方式とした場合に想定される効果減弱を補う方法として、セッション数を増やすことにした。以上の変更点を考慮してプログラムの基本構成を検討し、各セッションの詳細を決定した。また大阪大学医学部附属病院神経科・精神科に通院中の意味性認知症患者のFCを対象に、本プログラム構成をベースとした家族介入を予備的に試みた。FCの満足度を日本語版Client Satisfaction Questionnaire-8項目(CSQ-8J)で評価した。
結果と考察
今年度、「パーソナルBPSDケア電子ノート」開発研究では、まずコンテンツを決定し、分担者の數井が中心となって開発し運営しているウェブサイト「認知症ちえのわnet」内で閲覧できるようにした。コンテンツは以下の4つである:「BPSD予防のための基本事項」、「原因疾患と要介護度に応じて出現する可能性が高い、あるいは介護負担が重くなる可能性が高いBPSDそれぞれ上位3種類」、「BPSD治療に役立つ介護サービス」、「原因疾患、要介護度、性別が同じ認知症の人に対して、認知症ちえのわnetで奏功確率が公開されているBPSDに対する対応法」。次に認知症者105例に対してパーソナルBPSDケア電子ノートを試作し、システムが円滑に動作することを確認した。一方「疾患別CBTプログラム」開発研究では、新型コロナウイルス感染症流行下でも使用可能なプログラムへと内容を修正した。当初の計画から非対面方式(オンライン)を主とした個別セッションへと変更し、代わりにセッション数を4回から6回に増やすことで効果増強を図った。プログラムの内容は、疾患特有の症状や行動・心理症状(BPSD)への対応法に関する理解を促進する「疾病教育」、セルフケアの重要性とその実践方法に関する理解を促進する「CBT」で構成した。上記のプログラム構成をベースとし、認知症者のFC4名に対して予備的に家族介入を試みた結果、FCから高い満足度評価は高く、CSQ-8Jの得点で平均25.5点であった。FCからは「(疾病教育では)当てはまる症状が多く、病気のせいだったんだと理解できた」という意見が得られるなど、原因疾患に特化したプログラムであることの重要性が確認された。
結論
「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別CBTプログラム」の2つのコンポーネントからなる本教育的支援プログラムは、withコロナ時代に適するように大部分をオンラインで構成したプログラムであり、幅広い認知症者のFCが時間や距離の制約を受けずに利用可能であることが最大の利点である。また両コンポートネント共に、疾患別、FC別にパーソナライズされた仕組みであるため、高い効果が得られることが期待される。来年度は、上記の「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別CBTプログラム」共に試用を重ねて内容をブラッシュアップし、本教育的支援システムの有用性検証のためにRCTを実施する予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202017008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,508,349円
人件費・謝金 4,283,457円
旅費 157,565円
その他 3,589,629円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
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