人工知能を活用した行動・心理症状の予防と早期発見、適切な対応方法を提案する認知症対応支援システムの開発と導入プログラムに関する研究

文献情報

文献番号
202017006A
報告書区分
総括
研究課題名
人工知能を活用した行動・心理症状の予防と早期発見、適切な対応方法を提案する認知症対応支援システムの開発と導入プログラムに関する研究
課題番号
19GB1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
研究分担者(所属機関)
  • 平井 啓(大阪大学 人間科学研究研究科)
  • 谷向 仁(京都大学大学院医学研究科)
  • 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
  • 中西 三春(公益財団法人東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター)
  • 井上 真一郎(岡山大学病院 精神科神経科)
  • 上村 恵一(国家公務員共済組合連合会 斗南病院 精神科)
  • 深堀 浩樹(慶應義塾大学看護医療学部)
  • 榎戸 正則(国立がん研究センター東病院精神腫瘍科)
  • 竹下 修由(国立がん研究センター東病院 大腸外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、全国の認知症ケアチーム・緩和ケアチームによる認知症高齢者への評価・対応を学習モデルとした人工知能を開発し、有効性の検証された教育プログラムと安全な運用プログラムとあわせて検証・実装することにより、病院を中心とする看護・介護の現場での認知機能の低下やせん妄の予防・早期発見、行動心理症状への適切な対応方法を確立する点にある。
 認知症高齢者の多くは、身体的問題を持ちつつ過ごしている。そのため、認知機能の低下や行動心理症状の評価・対応を行う上で、身体疾患やせん妄、痛み等の身体的苦痛、薬剤を含めた評価が必要である。しかし、包括的な評価と判断は臨床経験に基づく個別判断が中心で、手法が確立していない現状がある。後期高齢者の増加を迎え、認知症高齢者の行動的な変化と共に、身体的な治療や身体症状の変化をとらえ、精神症状や薬物とあわせて評価判断する専門的知識と臨床経験の普及が緊急の課題である。
研究方法
1. 認知症ケアチーム・病棟看護師に対するAI支援システムの開発
1) 深層学習教師データの収集を目指した認知症ケアチーム症例レジストリの構築
 認知症の人の一般診療場面における身体症状・精神症状評価とそれに対応した介入・支援とその結果を包括的に収集し、機械学習に向けた症例レジストリを構築する。具体的には、認知機能低下、せん妄の予防・早期発見と対応、行動心理症状の対応を主たる標的とする。
 認知症ケアチームを経験する専門医、老年看護・精神看護の専門家、介護専門職、AI技術開発チームによるパネルを作り、わが国の急性期医療における認知症対応の実態把握を行う。
 特にせん妄・BPSDに関しては実態把握と併せて、AI視線システムの開発を行う。
 AI開発は、AI機器開発の臨床研究の実績のある国立がん研究センター東病院NEXT臨床研究推進チームの協力を得る。
2. AIシステム支援を導入した一般病棟での認知症対応プログラムの試行
AI支援システムと、教育プログラムを連携させ、効果的なケアを実践するための運用プログラムを開発しその有効性を検討する。
1) 多職種による教育プログラムの効果検証
 すでに開発済みである多職種教育プログラムの効果検証を行う。同時に教育後の実装過程を質的に評価し、運用上の課題を抽出し、AI支援システムの課題設計に反映させる。
結果と考察
 認知症の人の一般診療場面におけるせん妄・BPSDの予防・早期発見と対応を主たる標的としたAI支援システムの検討を進め、①入院時の状況からせん妄の発症を予測するモデルを中心に開発を行った。3013症例のDPCデータ、せん妄アセスメントシート、せん妄テンプレートを教師用データとして使用し、ランダムフォレストを用いてせん妄の発症を予測するAIモデルの構築をおこなった。データの80%を使用して機械学習によるせん妄発症予測モデルを作成し、残りの20%で制度を評価したところ、正確度84.4%, 感度84.6%を達成した。各説明変数の重要度として、せん妄の既往の有無、CRE、認知症または認知機能低下の有無などが上位であった。
 教育プログラムに関しては、実施可能性試験を踏まえ、検証計画の検討を行った。多施設試験を予定していたが、COVID-19の感染拡大から、施設訪問ならびに多施設からの集合研修の開催が、感染リスク上困難なことから、オンラインでの研修プログラムへの修正を検討した。あわせて、身体拘束に関する研修プログラムの構成を固めた。
結論
 本年度は急性期医療における認知症対応の実態把握をすすめながら、AIシステムの応用可能性、臨床介入の効果検証を行った。その結果、急性期医療において入院中のADL低下を防ぐための介入の必要性を明らかにした。今後、AIシステムを用いたせん妄の発症予測システムの開発を進め、臨床介入に組み込み、効果検証を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202017006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,300,000円
(2)補助金確定額
15,295,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,076,995円
人件費・謝金 5,587,140円
旅費 44,868円
その他 4,056,670円
間接経費 3,530,000円
合計 15,295,673円

備考

備考
自己資金 673円

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
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