認知症介護者のためのインターネットを用いた自己学習および支援プログラムの開発と有効性の検証

文献情報

文献番号
202017005A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症介護者のためのインターネットを用いた自己学習および支援プログラムの開発と有効性の検証
課題番号
19GB1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大町 佳永(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 横井 優磨(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部)
  • 菅原 典夫(獨協医科大学 精神神経医学講座)
  • 山下 真吾(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部)
  • 野﨑 和美(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 看護部)
  • 松井 眞琴(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
The World Health Organization(WHO)によって、介護者の知識や技術の向上、精神的ストレスの軽減、認知症の人と介護者双方の生活の質の向上を目指し、iSupportが開発された。iSupportは、問題解決技法および認知行動療法の技術を用いたオンライン自己学習支援プログラムであり、パソコン等から簡単にアクセスすることが可能である。WHO’s Mental Health Gap Action Programmeによるエビデンスに基づいた認知症介護者のためのガイドラインに準拠して作成されており、5つの章(第1章 認知症について、第2章 介護者であるということ、第3章 自分をいたわる、第4章 日常生活の介護、第5章 気になる行動への対処)から構成されている。本研究では、日本の文化や介護環境等を考慮し日本語化したiSupport日本版を作成し、フォーカスグループによる試用評価の後に完成させ、ランダム化比較試験(RCT)を実施することで、iSupport日本版の有効性を検証することを目的とする。
研究方法
本研究では、WHOで開発された認知症介護者のためのオンライン自己学習支援プログラムiSupportの日本版を開発する。さらに、RCTにおける心理評価もオンラインで実施できるように、iSupport日本版(e-learning)に、心理評価やアンケート調査を行うシステム(ePRO)、個人情報管理システムを合わせたプログラム『iSupport-Jシステム』を開発する。認知症の人を介護している家族と、医療・介護の専門家等により構成される2つのフォーカスグループにおいて、iSupport日本版のパイロット版を試用・評価し、プログラムを完成させる。iSupport-Jシステムを用いてRCTを実施し、iSupport日本版の有用性を検証する。本研究は、公益社団法人認知症の人と家族の会、国立精神・神経医療研究センター「オレンジ(認知症)カフェ」、小平市地域包括支援センター等の協力のもとで行う。国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターと連携し、認知行動療法の技術を用いた項目について助言を得る。適宜、WHOに進捗と結果を報告する。
結果と考察
本年度は、RCTのプロトコールを策定し、フォーカスグループによる試用・評価と合わせて国立精神・神経医療研究センターと獨協医科大学の倫理審査委員会に申請し承認を得た。認知症の人を介護している家族8名程度と、医療・介護の専門家等8名程度により構成される2つのフォーカスグループにおいて、iSupport日本版のパイロット版を試用・評価し、満足度を調査した。その結果、プログラムの表示方法や選択肢の内容に多くの修正が求められることとなった。また、専門家に比べて家族介護者の満足度が低いという結果となった。原因として、介護者が適切であると考えていた介護方法を「間違った回答」と表示されると否定されたように感じてしまうこと、回答を確認するためのページは時間の無駄のように感じるとのことで、これらが家族介護者の満足感を下げていると考えられた。一方で、専門家からは、介護士などの自己学習のためのツールとして有用と考えられるというコメントが得られた。修正案をWHOに申請し承認が得られた後に、プログラムの改修を行い、iSupport日本版を完成させた。海外のiSupport先行研究では、脱落率の高さが報告されている。本研究では可能な限り脱落率を減らすために、リマインドを行うだけでなく、フォーカスグループから得られたコメントをプログラムに反映させることで、プログラム全体の操作性を向上することに努めた。全国の介護者を対象に広く被験者を募集するため、本研究の説明と参加の応募フォーム、問い合わせを兼ね備えたホームページを作成した。令和3年1月よりRCTの被験者募集を開始し、同年3月からスクリーニングを開始している。
結論
iSupport日本版を作成することにより、家族等の認知症介護者が効率的に知識と技術を習得することを目指すと共に、孤立している家族等が認知症の専門医療機関や相談窓口、介護サービスなどの社会資源にアクセスするのを促進することが期待される。また、COVID-19感染予防のため、他者との接触を可能な限り減らさざるを得ない状況下で、インターネットを用いたツールは非常に有用と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202017005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,550,000円
(2)補助金確定額
17,195,000円
差引額 [(1)-(2)]
355,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,240,882円
人件費・謝金 2,222,047円
旅費 0円
その他 5,682,172円
間接経費 4,050,000円
合計 17,195,101円

備考

備考
自己資金 101円

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-