医薬品等国際ハーモナイゼーション促進研究

文献情報

文献番号
199700438A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等国際ハーモナイゼーション促進研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
前川 正(国立学校財務センター)
研究分担者(所属機関)
  • 寺尾允男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 黒川雄二(国立医薬品食品研究所安全性生物試験研究センター)
  • 内藤周幸(東京逓信病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 医薬品等国際ハーモナイゼーション促進研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
46,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新医薬品の承認申請資料の国際的ハーモナイゼーションを推進するに当たり、日・米・欧3極間における医薬品規制に関する障壁を明らかとし、それらを十分な科学的裏付けのもとに取り除くための国内的及び国際的共同研究を実施する。かくて得られた研究成果に基づき、医薬品規制に関する各種ガイドライン等の国際調和達成を支援することにより、新医薬品の研究開発の促進と、優れた医薬品の患者への迅速な提供を計ることが本研究の目的である。
研究方法
分担研究者がそれぞれ品質、安全性、有効性部会を担当し、所属した研究協力者を指導する研究体制を組織した。マウスリンフォーマ試験などでは、一定の計画のもとに国際共同研究が実施された。薬物代謝酵素CYP2C19、2D6については分子種の同定や遺伝型の検索など実験室的研究が行われた。その他、データベースや文献検索、アンケート調査、提案されたガイドライン案などについての具体的検討など多彩な研究方法が採用された。日・米・欧3極間の情報交換は運営委員会、専門家会議、書状を介し或いは電子的交換などにより適切に行われた。
結果と考察
1.品質に関する研究(品質部会担当):(1)残留溶媒ガイドライン及びバイオ医薬品ガイドラインは若干修正の上、ステップ4に到達した。後者についてはここ数年来国内で種々議論してきたので、十分浸透していると考えられる。化学合成及びバイオ医薬品の規格及び試験法に関するガイドラインはステップ2の合意をみた。(2)薬局方の国際調和は医薬品添加剤各条から始まり、次いで一般試験法が加わった。昨年度に比し各条でステージが上昇し、国際調和は一層進展した。(3)Common Technical Document(CTD)を本年度から研究課題に取り上げた。安全性部会、有効性部会の協力を得て研究が開始された。2.前臨床安全性に関する研究(安全性部会担当):(1)癌原性試験法ではHras 2マウスにおける腫瘍発生につき昨年度に引き続き研究し、その有用性を検討した。その結果をうけて、一種のげっ歯類を用いる長期発癌試験に加え、Tgマウスなどの短期発癌試験を含む一つの代替試験により発癌性を評価するという新しいガイドラインが正式に承認された。また発癌性試験における限界量設定に関しても3極の行政側による検討が行われた。変異原性試験法では国際共同研究の結果、マウスリンフォーマ試験で24時間連続処理法を採用してもマイクロウエル法によれば、偽陽性は殆ど心配ないことが判明した。反復投与毒性試験法では非げっ歯類の試験期間9カ月につきステップ3としての検討が行われた。(2)バイオ医薬品の安全性試験法、及び臨床試験に関する前臨床試験実施のタイミングについてはステップ4に到達した。他方、治験開始後に依頼者から追加安全情報を貰う治験の比率は約70%であるが、IRBが対応したのは16%に過ぎなかった。(3)一般薬理については、安全性薬理に限定して現行ガイドラインの改訂版を作成した。また非臨床薬物動態試験ガイドラインについても改訂案を作成した。これらは英語訳して国の内外に送付して意見を収集する予定である。3.臨床試験に関する研究(有効性部会担当):(1)外国データの相互受け入れガイダンスについては、ステップ2文書に必要な訂正・加筆を行いステップ4に到達したが、アンケート調査では製薬企業における理解度は必ずしも十分でないという結果を得た。日本人のCYP2C19の m1, m2変異の出現頻度は29%、13%で、白人種にはm2遺伝子は見い出せなかった。 2D6については、日本人ではB型変異の出現頻度が低く、Ch型変異の出現頻度が高かった。しかし、ニトロゼパ
ムの体内動態と眼球運動に関する薬理作用のパラメータには日・欧人間で差異はなかった。(2)臨床安全性データの取り扱い方:報告様式がステップ4となり、臨床安全性に関するトピックスは全てステップ4以上となった。我が国の現状から、これらのガイドラインはいずれも混乱なく実施可能と思われる。ICH-GCPに準拠した新 GCPにつきアンケート調査を行った。結果は集計中であるが、治験関係者の一般的意見と新GCP間には幾つかの点で乖離が認められた。製薬協加盟企業に対し降圧薬の第3相試験のアンケート調査を行ったが、偽薬対照試験は実施されていなかった。偽薬対照試験や実薬同時対照試験による非劣性(同等性)試験実施上の問題点につき考察した。(3)臨床試験のための統計原則ガイドラインはステップ3を経て1998年2月にステップ4に到達した。E 2Bによる安全性報告ガイドラインに基づき、データ項目のグループ化、グループ間の階層構造などを定義した。EDIのフォーマットとしてはSGMLを採用し、安全性報告のためのSGML, DTDなどを定義した。MEDDRAがMedDRAに変わりVersion 2.0が完成しステップ4に到達した。その所有権はIFPMAに委譲された。
結論
ICHの第1相は1997年7月にブラッセルで開催されたICH 4を以って終わり、以後第2相に入った。第1相で取り上げられた44トピックス中37トピックスについてステップ4の合意が成立した。これらのトピックスに関する研究がICHの開幕と同時に一斉に開始されたわけではなく、第1相の6年間で順次取り上げられたものであることを考えれば、4年間にわたって実施された医薬品規制ハーモナイゼション推進国際共同研究事業を引き継いだ本事業2年間の研究成果は十分評価されて然るべきと考える。今後低いステップの状態に止まったQ 6A, Q 6B, S 4A, E 10, M 4などのトピックスの研究を急ぎ、本研究で掲げた目的を早急に達成する必要がある。一方、すでにステップ4の合意に到達できたガイドライン等も科学の進歩や、医療技術の発展に伴って将来陳腐化することは不可避である。これらを常に見直して必要な改訂を実施すべきであるし、今後提起されるであろう課題を積極的に研究対象に取り込む体制を整備することがICH精神の存続・発展に必要であると考える。

公開日・更新日

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