嚥下機能低下に伴う服薬困難に対応するためのアルゴリズム等作成のための研究

文献情報

文献番号
202016014A
報告書区分
総括
研究課題名
嚥下機能低下に伴う服薬困難に対応するためのアルゴリズム等作成のための研究
課題番号
20GA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
倉田 なおみ(昭和大学 薬学部社会健康薬学講座社会薬学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 秋下 雅弘(東京大学 医学部附属病院 老年病科)
  • 柴田 斉子(藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座)
  • 戸原 玄(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野)
  • 西村 美里(昭和大学 認定看護師教育センター)
  • 大河内 二郎(社会医療法人 若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷)
  • 鈴木 慶介(台東区立台東病院)
  • 肥田 典子(昭和大学 薬学部 臨床薬学講座 臨床研究開発学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,170,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
摂食嚥下機能に対応した医薬品の剤形が考慮でき、嚥下専門医・スタッフのいない施設でも嚥下機能低下に対して服薬介助手段を簡略的に判断でき、安全確実に服薬できるアルゴリズムを作成する。①服薬実態調査、②口腔内残薬調査を実施し、得られた結果も参考にする。
研究方法
1. 「服薬困難に対応するためのアルゴリズム」の作成
① 服薬実態調査
入居者の食事形態や服薬方法の実態調査
– 実施施設:全国老人保健施設協会の203施設で施設状況、個別調査を実施
– 服薬の介助が必要で以下A~Cの服薬状況の居者各2名を抽出
A:薬の加工はないが、服薬の工夫(トロミなど)が必要
B:粉砕などの薬の加工が必要
C:経管栄養(胃瘻)
– 個別調査内容:服薬の状況、服薬方法(トロミ使用等)、認知症・脳血管障害・嚥下障害の有無、嚥下機能評価情報の有無、口腔内乾燥の有無、服用薬数、摂食状況等
② 薬の口腔内残留調査
医師、歯科医師などに依頼し、診察時や口腔ケア時に口腔内を目視観察、VE実施時に服用薬の残留を調査。
③ アルゴリズムの作成
上記調査内容を参考に、実際の摂食・服薬の状況を判断材料として、適切な薬の剤形を選択し、服薬介助者が患者・入居者に安全に服薬させることができるアルゴリズムを作成する。
2. 直接服薬介助に関わらないスタッフの嚥下障害に対する関りを明確にする一覧表の作成
3. 地域連携のための服薬に関する情報ツールの作成
入所前の状況を判断する「嚥下関連確認シート」、退所時の「嚥下に関する申し送りシート」の作成
結果と考察
2021年10月末までに9回meetingを開催し、以下の検討をおこなった。
1. 服薬実態調査(2021年4月倫理委員会承認)
全国老人保健施設協会会員の203施設にアンケート送付。回答36施設(17.7%):全部回答25施設(12.8%)、一部回答11施設(5.4%)、10月末終了後に、解析する。
2. 服用した薬の口腔内、咽頭・食道残留に関する調査(2021年4月末倫理委員会承認)
10施設に依頼し、12月末締め切り。現在67症例のデータ収集。口腔内の薬の残留率は、4症例(5.9%)。残薬の種類:崩れた錠剤3件、散剤1件、抗腫瘍薬やNSAIDなどが口腔内に長時間残留すると潰瘍や炎症を起こす可能性もあるため、留意すべき事項である。服薬後の口腔内観察を行うなどの対策をアルゴリズムに盛り込む。
3. 「嚥下機能低下に伴う服薬困難に対応するためのアルゴリズム」を作成中。
① 薬がスムーズに服用できない際のアルゴリズム:運動障害、摂食嚥下障害、管理能力、心理的要因に対応するアルゴリズム
② 摂食機能低下時に適する剤形選択のアルゴリズム:胃瘻からの投薬は、錠剤粉砕、または簡易懸濁法で投薬する。それぞれに投与可能な剤形、推奨する剤形、避けるべき剤形、推奨される薬の条件がわかるアルゴリズムを作成し、適する剤形が選択できるようにしている。一方、経口からの服薬は、水で服薬、ゼリーやデザート等に混ぜて服薬、食事に混ぜる、とろみ剤に包む、簡易懸濁とろみ法、オブラートで包むなどの工夫がされている。そこで服薬方法ごとに、服用可能な剤形の条件、推奨する剤形、避けるべき剤形、推奨される薬の条件を記載した一覧表を作成し、安全に服薬できる剤形を選択できるようにした。また、原薬の味やにおいによる服薬拒否や、錠剤粉砕が原因となるアクシデントを未然に防止できるようにする。
③ 胃瘻(経管)投与時のアルゴリズム:チューブの閉塞や全量が投与できるようにするアルゴリズム
④ 薬を飲みやすくするための方法:投与回数を減らしたり、ポリファーマシー等に対して、どうすれば薬を飲みやすくできるかを解説。
4. 「直接服薬介助に携わらないスタッフの嚥下障害に対する関り」の一覧表を作成中し、チーム医療を強化するツールとする。
5. 入所時の「嚥下関連確認シート」および退所時の「嚥下に関する申し送りシート」を作成し、服薬に関する地域連携を強化するツールとする。
6. 研究終了後も成果物の普及を図るため、書籍の出版を社会保険研究所へ依頼し、出版の準備を進めている。
結論
摂食嚥下障害を有する者が服用しやすい薬の剤形を選択するためのアルゴリズムを作成している。これを活用することにより、より安全な薬の服用や有効な薬物治療が可能になる。また、介助者の服薬に関する労力が軽減でき、他の介護業務の充実を図ることができるようになる。
 錠剤をつぶして製剤工夫を破壊することによって生じる、原薬の味やにおいの影響、薬効の軽減・損失、中毒域に達する薬物血中濃度に起因するアクシデント等の服薬者へのリスクを軽減できる。

公開日・更新日

公開日
2022-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-05-26
更新日
2023-07-14

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202016014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
5,106,683円
差引額 [(1)-(2)]
2,893,317円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,613,510円
人件費・謝金 996,424円
旅費 15,680円
その他 651,069円
間接経費 1,830,000円
合計 5,106,683円

備考

備考
コロナ禍で国内、海外での学会等が開催されず、出張の機会がなかったため

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-