文献情報
文献番号
202016007A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険施設等の被災状況把握を迅速化する情報システムの開発研究
課題番号
19GA1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
久保 達彦(広島大学大学院医系科学研究科 公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
- 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,431,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、我が国の大災害に伴う防ぎえた死および災害関連死の多くは高齢者に局在している。想定される南海トラフ大地震等においてこの課題に効果的に対処するためには、特に災害時に支援を必要とする高齢者が集まる介護保健施設等の支援ニーズをいち早く「見える化」し、かつ、そのニーズを多様な団体による総力的支援につなげていくことが重要である。一方で、現状においては我が国に災害時に介護保険施設等の状況把握を行うことを目的として設置されているInformation and Communication Technology (ICT)システムは存在しない。本研究ではこの課題に対処するために、平成29~30年度に実施された「介護保険施設等の状況把握を平時と有事にシームレスに可能とするICTシステムの開発に関する研究」(H29-長寿-一般-001)の研究成果として開発された「介護保険施設等被災状況見える化システム」(試作品)の社会実装を目指して、標準業務手順書(SOP)等のシステムの運用に必要な関係資料を策定するとともに、関係成果品を訓練及び実災害で稼働し実用性等を検証した。
研究方法
「介護保険施設等被災状況見える化システム」の実用性等を訓練①:内閣府主催令和元年度大規模地震時医療活動訓練、訓練②:済生会関東ブロック災害対応訓練、訓練③:研究班机上訓練、災害①:千葉県令和元年台風15号、災害②:熊本県令和2年7月豪雨等を通じて検証し、ブラッシュアップした。システムの強化策としては、特に迅速な情報収集に資する部分についてAIの活用も含めて検討した。また災害医療分野での先行知見を参照にしつつ、情報システムの運用に関する標準運用手順書(SOP)を作成した。研究開発は、関係施策として「災害発生時における社会福祉施設等の被災状況の把握等について」(平成29年2月20日雇児発0220第2号 社援発0220第1号 障 発0220第1号 老 発0220第1号)との整合性に留意して推進した。
結果と考察
研究開発成果物として、介護保険施設等被災状況全国共通報告様式(平成31年事務連絡対応FAX報告様式)、介護保険施設等被災状況見える化システム、標準業務手順書(SOP)(自治体・関係団体用、オフサイトチーム用)、標準教育訓練資料(WEBサイトとパワーポイント)、システム操作手順書(本部用、スマホアプリ報告用、WEB報告用)を得た。
本研究で開発される情報収集体系の核心ツールは「介護保険施設等被災状況全国共通報告様式」(FAX報告様式)である。まず標準報告様式(紙)を、A4一枚に収まる形で整備することが、関係者からの理解、合意形成、訓練しやすさに直結する。またシステム開発において、特に注力されたのはデータ入力機能の強化である。具体的にはAI-OCR(LINE CLOVA OCR)とLINEチャットボットの機能を追加した。災害医療分野の取り組みを踏まえれば災害用ICTシステムの一番の急所はデータ入力機能の強化にあると考えられ、複数の入力方法、複数の入力支援機能の整備を行っておくことは実用性担保の観点から極めて重要である。また自治体職員の災害システムへの習熟は容易でないことから、システム整備にあたってはオフサイト解析支援チーム等の運用上の人的支援体制についてセットで検討・整備していくことが実行性担保の観点から特に重要である。
本研究で開発される情報収集体系の核心ツールは「介護保険施設等被災状況全国共通報告様式」(FAX報告様式)である。まず標準報告様式(紙)を、A4一枚に収まる形で整備することが、関係者からの理解、合意形成、訓練しやすさに直結する。またシステム開発において、特に注力されたのはデータ入力機能の強化である。具体的にはAI-OCR(LINE CLOVA OCR)とLINEチャットボットの機能を追加した。災害医療分野の取り組みを踏まえれば災害用ICTシステムの一番の急所はデータ入力機能の強化にあると考えられ、複数の入力方法、複数の入力支援機能の整備を行っておくことは実用性担保の観点から極めて重要である。また自治体職員の災害システムへの習熟は容易でないことから、システム整備にあたってはオフサイト解析支援チーム等の運用上の人的支援体制についてセットで検討・整備していくことが実行性担保の観点から特に重要である。
結論
実用性のある被災状況把握用ICTシステムを社会実装するためには、①まず報告用の標準紙様式を設定すること、②当該様式は関係団体の参加を広く得てオールジャパンレベルで開発すること、③データ入力経路を複数確保し特に強化すること、④データ処理(オフサイト見える支援チーム)や災害対応(DMATロジスティクチーム等)に習熟した人材の組織化についてセットで検討・整備すること⑤施設マスタ情報はシステム事業者(国)が一括更新、都道府県等が修正、各施設が自施設を新規登録をできる体制を備えておくこと⑥実災害時の運用においては、福祉課題を保健医療課題から独立させることなく、保健医療調整本部において関係部局と連携して運用すること⑦システムは当初からAPIを介して関係システムに接続することが重要である。
介護保険施設等の被災状況把握を迅速化する情報システムが本研究成果をもとに遅滞なく開発また社会実装され、予測される南海トラフ大地震等において支援を必要とする介護保険施設や高齢者等の救援に役立てられていくことが強く期待される。
介護保険施設等の被災状況把握を迅速化する情報システムが本研究成果をもとに遅滞なく開発また社会実装され、予測される南海トラフ大地震等において支援を必要とする介護保険施設や高齢者等の救援に役立てられていくことが強く期待される。
公開日・更新日
公開日
2021-06-02
更新日
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