家族・労働政策等の少子化対策が結婚・出生行動に及ぼす効果に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200801038A
報告書区分
総括
研究課題名
家族・労働政策等の少子化対策が結婚・出生行動に及ぼす効果に関する総合的研究
課題番号
H20-政策・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中嶋 和夫(岡山県立大学保健福祉学部)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,773,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において社会経済的な諸要因が結婚・出生行動に及ぼす影響を明らかにすること、および政府や自治体が少子化対策として実施している家族・労働政策等がそれらの行動へ及ぼす影響・効果を検証することを通じて、今後の少子化関連施策の展開に資する研究知見を得るために本研究事業を行った。
研究方法
本研究では、少子化の要因研究、政策効果研究、地方自治体の行動計画評価研究の3つの面から課題に接近した。用いた研究方法は、基本文献収集・解題を行うレビュー研究、人口・経済関連の公開デ-タを用いた人口学的モデル・計量経済モデル研究、出生動向基本調査のデータを使用した集計分析・多変量解析、地方自治体と連携したワーク・ライフ・バランスに関する質問紙調査および子育て支援の現状を把握する聞き取り調査である。
結果と考察
日本の結婚動向は地域差が存在し、その要因解明が重要な課題である。また、就業行動は出生行動と密接に関わっている。日本では未婚有業者の増大が合計出生率低下に影響しており、仕事と家庭の両立の実現程度が低い。計量経済モデルによる検証では、女子正規賃金の上昇が出生率を押下げる機会費用効果や、男子賃金・女子非正規賃金の上昇が出生率を押上げる所得効果が見られた。父親を対象とした調査では、職場のワーク・ライフ・バランス支援制度の利用は育児参加に、その育児参加は家庭への貢献満足度を介してワーク・ライフ・バランス充実度に影響していた。また、地方自治体のヒアリング調査からは、これまでの自治体による少子化対策は一定の成果を生む一方で、いくつかの課題も存在することが明らかとなった。
結論
子育て支援策の有効性に関する分析から、高い機会費用効果が発生している日本社会では、少子化対策(この場合就業と出産・子育ての両立支援策)を実施しなければ子育てコストが高額なまま推移し、出生率は持続的に低下する可能性があることを示唆する。一方、所得効果が発生しているということは、個人や世帯の出産・子育ての直接費用の軽減が出生率上昇にとって効果的であることを示している。また、ワーク・ライフ・バランス支援の充実は、父親の育児参加だけでなく、家庭への貢献満足度も高める。さらに、地域の出生動向は自治体の経済・雇用状況、地理的条件など固有の事情に左右される傾向があることから、政策の直接・間接的効果を検証するには、地域を対象とした継続かつ詳細な調査分析が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-