運動・栄養介入による高齢者の虚弱予防に関する長期的な介護費削減効果の検証とガイドライン策定のための研究

文献情報

文献番号
202016003A
報告書区分
総括
研究課題名
運動・栄養介入による高齢者の虚弱予防に関する長期的な介護費削減効果の検証とガイドライン策定のための研究
課題番号
H30-長寿-一般-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
高田 和子(東京農業大学 応用生物科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 圭一(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所)
  • 町田 修一(順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科)
  • 榎 裕美(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
  • 渡邊 裕也(同志社大学 スポーツ健康科学部)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,652,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護予防事業におけるサービスCの実施の推進のために,今年度の研究では,(1)COVID19拡大に伴うサービスCの実施状況,(2)栄養や運動介入の研究事例,(3)介入による介護費削減効果の検討,及び最終年度として,(4)これまで明らかとなった課題に対して使用可能な資料の検討を試みた。
研究方法
(1)COVID19拡大に伴うサービスCの実施状況については、昨年度のサービC事業に関するヒアリングを実施した市町村のうち,対応が可能であった下記の市町村を対象に,令和2年4月の緊急事態宣言時の対応(事業の休止状況)及びその後の再開等の状況についてヒアリングを行った。また,住民側の状況として神奈川県大和市の通いの場の利用者を対象にアンケート調査を実施した。(2)栄養や運動介入の研究事例として、地域在住の一般高齢者33名(男性3名,女性30名)に登録時の栄養調査,運動器機能等測定および健康関連QOL測定を実施し,栄養改善と運動器機能向上を目的とした集団指導と自宅学習のための目標設定を行った。また、サルコペニア・ロコモの予防のための開発してきた運動プログラムの効果検証では,中高齢者51名(57歳~75歳)を対象に,自体重もしくはゴムチューブを用いた低負荷筋力トレーニングを運動指導員の指導下で週2回実施するグループ(S群,34名)と,指導下で週1回,その他に自宅等で週1回実施するグループ(SU群,17名)に分けて12週間実施した。(3)介入による介護費削減効果の検討では、包括的な介護予防プログラムを実施した10地区の介入地域と非介入において、認定,介護サービス利用料(介護給付費),死亡の状況を,認定・死亡は49か月間,介護給付費は48か月間比較した。(4)こ使用可能な資料の検討として、昨年度までの市区町村アンケート、ヒアリング及び今年度の結果をもとに、サービスC実施上の課題に対応する資料の検討、作成を行った。
結果と考察
緊急事態宣言後には,各種サービスが休止していたが,感染防止対策を実施の上,順次再開されていた。課題としては,モチベーションの維持の必要性,機能低下や閉じこもりのリスクの増加が課題として挙げられていた。また,高齢者を対象とした運動と栄養のプログラムあるいは運動プログラムの実施では,それぞれ効果が認められ,特に包括的なプログラムの実施おいては,介護費抑制などの効果が長期的にも認められた。これまでの市区町村の調査やヒアリングを通じて,実施上の課題となっている点を考慮し,栄養面では,①対象者の抽出,勧誘の経路,②参加時のモチベーションの確保,③栄養の訪問サービスの内容の明確化,運動面では①訪問,通所を通じて実施できる運動機能の評価,②効果が確認されている運動プログラムに関する資料の作成を試みた。
結論
これらの成果は引き続くCOVID19感染拡大の状況下における各種介護予防事業の実施や今後のサービス実施に際し有益な資料になると考える。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202016003B
報告書区分
総合
研究課題名
運動・栄養介入による高齢者の虚弱予防に関する長期的な介護費削減効果の検証とガイドライン策定のための研究
課題番号
H30-長寿-一般-006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
高田 和子(東京農業大学 応用生物科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 圭一(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所)
  • 町田 修一(順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科)
  • 榎 裕美(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
  • 渡邊 裕也(同志社大学 スポーツ健康科学部)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険法の一部改訂に伴い,平成26年から「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下,総合事業)において,市町村が地域の実情に応じて,多様な主体による多様なサービスを充実することで,要支援者等に対する効果的・効率的な支援等を目指すこととなった。このうち通所型及び訪問型のサービスCは短期集中予防型サービスと位置付けられ、3~6か月の短期で運動器の機能向上や栄養改善等のプログラムを実施することとなっている。しかし,「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会資料」によると,専門職等の関わる事業やサービスの市町村における取組状況は,訪問型サービスCで約17.1%(平成29年度),通所型サービスCで約34.8%(平成29年度)にとどまり,取り組み内容の地域差も大きくなっている。
そこで本研究では、(1)市町村での介護予防・生活支援サービスにおいて,特に通所型サービスCおよび訪問型サービスCの実施状況を把握すること,(2)令和2年の緊急事態宣言に伴うサービスの休止や再開状況を把握すること,(3) 栄養や運動介入の効果検証の実施,(4)介護予防事業による新規要介護者の減少や介護費抑制の効果を検討する,(5)通所型サービスC,訪問型サービスCの実施に際し市町村で活用可能な介護予防のガイドライン作成に向けた資料を整理することを目的とした。
研究方法
(1)の実施状況の把握においては、全国1,724市区町村の介護予防・生活支援サービス事業担当課を対象にサービスCの実施状況について郵送留置法により調査を行った。あわせて、回答のあった市区町村の一部に対して、ヒアリングを行なった。(2)緊急事態宣言時の状況については、(1)でヒアリングを行った市区町村の一部に令和2年4月の緊急事態宣言時のサービスの休止状況及び再開状況のヒアリングを行った。また、通いの場を利用している高齢者を対象とした調査を行った。(3)では、分担研究者により栄養改善と運動を組み合わせたプログラムまたは運動単独のプログラムを地域在住高齢者を対象に実施し、その効果を検討した。(4)介護費抑制効果については、包括的な介護予防プログラムを実施した地域と非実施地域について、認定,介護サービス利用料(介護給付費),死亡の状況を,認定・死亡は49か月間,介護給付費は48か月間比較した。(5)資料の作成については、(1)~(4)の結果をもとにディスカッションを行い,サービスCの実施に際し,参考になりうる資料の作成,収集をおこなった。
結果と考察
(1)の実態把握では,回答の得られた1,049市区町村のうち,通所型は40.9%,訪問型は23.5%で実施されており,実施している市区町村では,他のサービスへの継続なども行われていた。実施していない市区町村では,費用や人材の不足のほか,委託先がない,希望者がいないなどが理由としてあげられた。ヒアリングでは,介護関係の事業者以外が参入する際,介護保険関係の手続きに慣れていないこと,やや機能の低下した対象者に合わせたプログラムの作成,既存のサービスとの関係などに課題が指摘された。また,介護保険・医療保険のいずれの利用もない高齢者に対するアプローチの必要性も指摘された。(2)では,令和2年4月の緊急事態宣言時には,ヒアリングを行った市区町村では各種事業を休止したが,その間もハイリスク者には電話や訪問,資料配布などでコンタクトをとるなどがされていた。また,比較的早期から基本的な感染防止対策を行いながら,事業が再開されていた。「通いの場」の利用者からは,緊急事態宣言に伴い,友人との付き合いの減少,通っていた場所に行けない,ストレスなどが感染症の影響として困ったこととして示された。(3)ではいずれの介入も地域在住高齢者において運動機能の改善がみられ,栄養改善を試みた介入では食品摂取の多様性も改善した。(4)では,介入地域において,非介入地域と比べ年間介護サービス利用料が低く,4年間でサービス利用料の差も大きくなっていた。累積認定率の曲線は,介入地域で低かったが,累積死亡率の曲線には有意な差は見られなかった。(5)として,栄養面では,対象者の抽出・勧誘の経路,参加時のモチベーションの確保,栄養の訪問サービス内容の明確化,運動面では,訪問・通所を通じて実施できる運動機能評価,効果が確認されている運動プログラムに関して,資料を作成した。
結論
介護予防の介入を行うことは,認定率やサービス利用料に効果がみられるが,特にサービスCについては実施している地域が限られていた。今回,共通して課題としてあげられた内容について,資料の作成を試みたが,今後も市町村において必要な資料,データの収集が必要であるだろう。

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202016003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
各市町村の実施状況を調査によって明らかにした。また,COVID19の感染拡大に合わせて,緊急事態宣言時の市町村での対応や通いの場の利用者の調査を加えることができた。介護予防事業実施による介護費削減や認定者の減少について明らかにすることができ,このけっかについては,投稿中である。他の介入による変化や身体機能の評価法についても投稿をすすめており,学術的なエビデンスを構築できた。
臨床的観点からの成果
サービスCの実施状況をもとに,実施をすすめるための課題の整理を行うことができた。対象者の募集経路やモチベーションの維持,プログラム事例について,他の市町村の事例や研究班における検討により資料を作成できたことは,実施をすすめるために有効な資料となった。身体機能評価の方法や介入事例について論文化をすすめていることも,エビデンスに準じた現場での活用に有効である。緊急事態宣言下での状況の把握を加えたことで,今後の危機管理にも役立つ。
ガイドライン等の開発
現時点では活用されていないが,現場の意見や事例をもとに参照できる資料を作成した。
その他行政的観点からの成果
現時点では活用されていないが,現場の意見や事例をもとに参照できる資料を作成した。
その他のインパクト
研究班のメンバーにより,学会のシンポジウム等で本研究班の検討内容を紹介している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
53件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Watanabe Y., Yamada Y., Yoshida T. et al.
Comprehensive geriatric intervention in community-dwelling older adults: a cluster-randomized controlled trial
Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle , 11 , 26-37  (2020)
10.1002
原著論文2
渡邉裕也,山田陽介,吉田司他
地域在住高齢者を対象とした包括的介護予防プログラム:クラスター無作為化比較試験
運動疫学研究 , 23 (1) , 92-106  (2021)
原著論文3
Ishihara Y, Ozaki H, Nakagata T, et al.
Association between Daily Physical Activity and Locomotive Syndrome in Community-Dwelling Japanese Older Adults: A Cross-Sectional Study
Int J Environ Res Public Health , 19 (13) , 8164-  (2022)
10.3390/ijerph19138164
原著論文4
Sawada S, Ozaki H, Natsume T et al.
Serum albumin levels as a predictive biomarker for low-load resistance training programs’effects on muscle thickness in the community-dwelling elderly Japanese population: Interventional study result
BMC Geriatrics , 21 (1) , 464-  (2021)
10.1186/s12877-021-02403-7
原著論文5
Natsume T, Ozaki H, Nakagata T, et al.
Site-Specific Muscle Loss in The Abdomen and Anterior Thigh in Elderly Males with Locomotive Syndrome
Journal of Sports Science and Medicine , 20 (4) , 635-641  (2021)
10.52082/jssm.2021.635
原著論文6
Sawada S, Ozaki H, Natsume T, et al.
he 30-s chair stand test can be a useful tool for screening sarcopenia in elderly Japanese participants
BMC Musculoskeletal Disorders , 22 (1) , 639-  (2021)
10.1186/s12891-021-04524-x
原著論文7
沢田秀司, 町田修一
ロコモ・サルコペニア予防運動プログラムの開発と社会実装への取り組み
総合リハビリテーション , 49 (12) , 1145-1151  (2021)

公開日・更新日

公開日
2021-06-29
更新日
2023-06-19

収支報告書

文献番号
202016003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,747,000円
(2)補助金確定額
4,747,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,794,105円
人件費・謝金 962,203円
旅費 33,356円
その他 862,336円
間接経費 1,095,000円
合計 4,747,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
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