在宅・介護施設等における慢性期の医療ニーズの評価指標等を作成するための研究

文献情報

文献番号
202016001A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅・介護施設等における慢性期の医療ニーズの評価指標等を作成するための研究
課題番号
H30-長寿-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 山本 則子(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科)
  • 五十嵐 歩(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,977,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では我々のこれまでの医療・介護レセプトを用いた研究成果を活用しながら、協力自治体および医療機関・介護施設からレセプト情報及び傷病、ADL、医療行為、介護行為に関するデータを収集して、在宅・介護施設等における慢性期の医療ニーズの評価指標の作成を試みることを目的とした。
研究方法
調査協力自治体から収集・加工した医療・介護レセプトデータ及び認定調査票を用いて、在宅・介護施設等における慢性期の医療ニーズを評価するための指標群の試案を作成した。作成した指標群を用いた予備的分析を行い、その結果について関係者(各地域の自治体、保険者、医師会、看護協会、介護支援専門員の協会など)と協議し、指標群の見直しを行った。
結果と考察
要介護状態の原因となることの多い脳梗塞、股関節骨折及び要介護高齢者の医学的管理で問題になることの多い心不全、肺炎について急性期病院への入院前後の傷病の状況を経時的に検討するとともに、在宅要介護高齢者の傷病の状況を明らかにした。
その結果、要介護高齢者は糖尿病、高血圧、高脂血症など、急性期病変のリスクファクターになる慢性疾患に高頻度で罹患しており、かかりつけ医等による日常的な医学的管理を必要としていると考えられた。加えて、心房細動や悪性腫瘍、認知症など専門的な医療ニーズを持つ者の割合も高く、かかりつけ医を中核として専門医や介護関係者をネットワーク化したケアマネジメント体制の構築が必要になってきていると考えられる。こうした複合化した医療ニーズを持つ高齢者に対する総合的ケアマネジメント手法の確立も喫緊の課題である。また、要介護1の高齢者が施設入所するリスク要因として下肢関節障害が重要であること、他方で下肢関節障害のある認知症高齢者がその予防対策としての福祉用具貸与を受けている割合が低いことも明らかとなった。
結論
本研究の結果、自治体が日常業務として収集している医療・介護レセプトを用いて、慢性期の医療ニーズを把握するための指標群を作成できることが示された。今後の課題としては、こうした指標群をどのように医療介護施設に還元し、そのケアマネジメントの質を高めていくのかに関する具体的な作用点の設定に関する実証研究が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-09-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202016001B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅・介護施設等における慢性期の医療ニーズの評価指標等を作成するための研究
課題番号
H30-長寿-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 山本 則子(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科)
  • 五十嵐 歩(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療・介護レセプトデータを用いて、人生の最終段階にある高齢者の適切なケアマネジメント行うために必要な条件を検討することを目的とした。
研究方法
国内の5自治体における2014年度~2020年度の医科及び介護レセプトデータ(当教室で作成したプログラムで匿名化)を用いて、肺炎、心不全、股関節骨折、脳梗塞、悪性腫瘍、認知症などに着目し、急性期入院前後の医療介護サービスの利用及び主な傷病の有病率の状況、これらの疾患を持つ患者の死亡に関連する要因の分析(Coxの比例ハザード分析、パネルデータ分析)を行った。
結果と考察
上記の傷病で共通して、一般病床及び医療療養病床への入院、訪問診療の利用、特別養護老人ホームへの入所、肺炎、心不全、貧血の発症(あるいは増悪)が死亡に有意に関連している要因として検出された。他方、歯科診療や訪問介護、福祉機器貸与、通所系サービスを利用している者では死亡のオッズ比が有意に低かった。また、記述疫学的な分析で、人生の最終段階でその療養生活の質に大きく影響すると考えられる急性期病床への入院につながる脳梗塞、股関節骨折、心不全、肺炎のいずれにおいても、すでに要介護状態にある者が30~50%と高い割合になっていることが明らかとなった。こうした医療ニーズの適切な管理がケアマネジメントにおいて重要であると考えられた。さらに、認知症については、必要な介護サービスが過少に提供されている可能性も示唆された。
結論
複数の慢性疾患を有する人生の最終段階の高齢者のケアマネジメントにおいては、入院の契機となる肺炎や心不全悪化、そしてそれらのリスクファクターである認知症への配慮が不可欠である。在宅介護や通所介護の利用が、こうしたイベントの発生に予防的に作用する可能性が示されたことを踏まえると、人生の最終段階にある高齢者のケアマネジメントにあたっては、医療介護の総合的な評価とその結果に基づくサービス調整が不可欠である。そのためには、こうした慢性期の医療ニーズを適切に評価したうえで、ケアマネジメントが可能になるための標準的な評価が、主治医意見書において行われることが重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202016001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究によって、複数の慢性疾患を有する人生の最終段階の高齢者のケアマネジメントにおいては、入院の契機となる肺炎や心不全悪化、そしてそれらのリスクファクターである認知症などの医療ニーズへの配慮が不可欠であることが明らかとなった。在宅介護や通所介護の利用が、こうしたイベントの発生に予防的に作用する可能性が示されたことを踏まえると、人生の最終段階にある高齢者のケアマネジメントにあたっては、医療介護の総合的な評価とその結果に基づくサービス調整が不可欠であることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
本研究は人生の最終段階のケアマネジメントにおいては、種々の医療ニーズに対応することが重要であることを明らかにした。しかしながら、これらの終末期における医療ニーズにどのように対応すべきかの臨床的知見の積み上げは我が国ではまだ少ない。本研究で用いた方法論を応用して、多くの臨床研究が行われることが期待される。
ガイドライン等の開発
本研究の成果が、介護支援専門員を対象としたケアマネジメントに関する研修会に活用されることが期待される。また、介護現場で直面する医療ニーズへの対応方法に関するガイドラインが必要であり、その内容に本研究の成果が反映されることが期待される。
その他行政的観点からの成果
介護保険制度が始まって20年がたち、種々の病態で介護保険を利用する高齢者が増加している。地域医療計画においては介護面からの、介護保険事業計画においては医療面からの検討が必要となっている。本研究の成果はそのような検討に役立つと考える。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
202016001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,170,000円
(2)補助金確定額
5,140,000円
差引額 [(1)-(2)]
30,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 185,908円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 3,762,000円
間接経費 1,193,000円
合計 5,140,908円

備考

備考
千円未満切り捨て

公開日・更新日

公開日
2023-05-01
更新日
-