文献情報
文献番号
202014006A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な末梢血幹細胞採取法の確立及びその効率的な普及による非血縁者間末梢血幹細胞移植の適切な提供体制構築と、それに伴う移植成績向上に資する研究
課題番号
20FF1002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
日野 雅之(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
- 上田 恭典(倉敷中央病院 血液内科・血液治療センター)
- 中世古 知昭(千葉大学大学院医学研究院)
- 熱田 由子(日本造血細胞移植データセンター)
- 矢部 普正(東海大学 医学部)
- 長藤 宏司(九州大学病院第一内科)
- 藤 重夫(大阪国際がんセンター 血液内科)
- 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)
- 杉田 純一(北海道大学病院 検査・輸血部)
- 難波 寛子(東京都赤十字血液センター 事業推進二部)
- 西本 光孝(大阪市立大学 血液腫瘍制御学)
- 梅本 由香里(大阪市立大学医学部附属病院 看護部)
- 折原 勝己(公益財団法人日本骨髄バンク ドナーコーディネート部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は非血縁末梢血幹細胞移植(UR-PBSCT)をさらに普及させ、最適な時期に最適なドナーから移植ができることで患者救命、移植成績の向上を目指すため、ドナー選択に資する情報発信、ドナーの安全性向上に資する体制の整備、コーディネートの効率化、採取の効率化、ドナーの負担軽減、ドナープール拡大に向けたドナー適格性の再評価を行い、安全で希望に添う負担が少ない提供体制を確立すること、移植後患者の慢性GVHDを含めた合併症対策、長期フォローアップ体制を確立することである。
研究方法
ドナーの安全性向上のため、教育資材を作成し、ドナー安全情報一元化WEBデータベース検索システムおよびドナー適格性判定基準検索システムを構築した。CD34陽性細胞を事前および途中測定し、アフェレーシスの効率化を検討した。骨髄バンクコーディネーターとHCTCの協働についてアンケート調査を行なった。アフェレーシスナースが末梢血幹細胞採取(PBSCH)時に協働できる役割を検討した。TRUMPデータを用いて、急性GVHD発症後の予後に影響を与える因子を解析した。
結果と考察
UR-PBSCH施設は新たに宮崎県、沖縄県を含め、45 都道府県に125施設が設置され、全都道府県への設置に向けてさらに働きかけを続けていく。UR-PBSCHは重篤な有害事象は認めず、安全に実施可能で、コロナ禍の影響で非血縁骨髄採取(UR-BMH)は前年比85%に減少したが、UR-PBSCHは年間262件(合計1186件)で前年比110%に増加し、コロナ禍においても有用であった。患者登録~移植までの期間はUR-BMTでは132日、UR-PBSCTでは123日であった。
非血縁および血縁ドナーの有害事象を集約し、ドナー安全研修の教育資材を作成し、「コロナ禍」において認定更新基準を満たしていない採取担当医師を対象にドナー安全研修受講を更新条件とし、4施設の採取責任医師に対して講習を実施し、全国の造血幹細胞移植推進拠点病院12施設に教育資材を配布した。PBSCH時のトラブルシューティングビデオを作成し、公開した。
骨髄バンクが発出した「安全情報」「緊急安全情報」「通知」「医療委員会通知」をWEB検索できる一元化データベースシステム、ドナー適格性判定基準検索システムを構築し、骨髄バンクのホームページに公開した。
PBSCH開始時の末梢血CD34陽性細胞数と血液処理量50ml/kg時の回収されたCD34陽性細胞数を測定することで、適切な処理血液量を設定し、効率的なアフェレーシスが可能であった。
UR-PBSCHのアンケート調査結果からG-CSF減量、中止は15.4%であり、中止理由は白血球増加、G-CSF投与後の喘鳴であった。現在、外来でG-CSF投与相談可能施設は17施設のみであり、入院でのG-CSF対応がほとんどとなるためBMHより入院日数が長いためPBSCHを断るドナーもいた。骨髄バンクコーディネーターへのアンケートで、コロナ禍において53%がコーディネートできない状況が有ったが、HCTCがバンクコーディネーターと協働し対応されていた。
PBSCH研修に参加したアフェレーシスナースへのアンケートで、9割以上から医療従事者の負担軽減ができ、アフェレーシスナースの参加に対して肯定的で、患者/ドナーの安心に繋がると評価された。
同種造血幹細胞移植後Grade II-IV急性GVHD発症後の予後に影響を与える因子について解析を行い、臍帯血移植を除くと血縁および非血縁者間移植においてBMTに比してPBSCTおよびHLA不適合移植が予後不良因子であった。高齢ドナーからの移植が成績に悪影響を与える因子であった。
非血縁および血縁ドナーの有害事象を集約し、ドナー安全研修の教育資材を作成し、「コロナ禍」において認定更新基準を満たしていない採取担当医師を対象にドナー安全研修受講を更新条件とし、4施設の採取責任医師に対して講習を実施し、全国の造血幹細胞移植推進拠点病院12施設に教育資材を配布した。PBSCH時のトラブルシューティングビデオを作成し、公開した。
骨髄バンクが発出した「安全情報」「緊急安全情報」「通知」「医療委員会通知」をWEB検索できる一元化データベースシステム、ドナー適格性判定基準検索システムを構築し、骨髄バンクのホームページに公開した。
PBSCH開始時の末梢血CD34陽性細胞数と血液処理量50ml/kg時の回収されたCD34陽性細胞数を測定することで、適切な処理血液量を設定し、効率的なアフェレーシスが可能であった。
UR-PBSCHのアンケート調査結果からG-CSF減量、中止は15.4%であり、中止理由は白血球増加、G-CSF投与後の喘鳴であった。現在、外来でG-CSF投与相談可能施設は17施設のみであり、入院でのG-CSF対応がほとんどとなるためBMHより入院日数が長いためPBSCHを断るドナーもいた。骨髄バンクコーディネーターへのアンケートで、コロナ禍において53%がコーディネートできない状況が有ったが、HCTCがバンクコーディネーターと協働し対応されていた。
PBSCH研修に参加したアフェレーシスナースへのアンケートで、9割以上から医療従事者の負担軽減ができ、アフェレーシスナースの参加に対して肯定的で、患者/ドナーの安心に繋がると評価された。
同種造血幹細胞移植後Grade II-IV急性GVHD発症後の予後に影響を与える因子について解析を行い、臍帯血移植を除くと血縁および非血縁者間移植においてBMTに比してPBSCTおよびHLA不適合移植が予後不良因子であった。高齢ドナーからの移植が成績に悪影響を与える因子であった。
結論
UR-PBSCHは安全に実施されており、コロナ禍においても増加しており、有用であった。ドナー安全教育資材を作成し、研修を実施し、ドナー安全情報一元化WEBデータベース検索システム、ドナー適格性判定基準検索システム、PBSCH時のトラブルシューティングビデオを構築、公開したことで、ドナーの安全性の向上が期待できる。UR-PBSCH認定施設がない県は2県のみとなり、ドナーの利便性は向上したが、全都道府県への設置に向けてさらに働きかけが必要である。HCTC、骨髄バンクコーディネーター、日赤アフェレーシスナースの協働により、医療従事者の負担軽減のみならず、患者/ドナーの採取中の安楽を確保することによりPBSCHの質向上に寄与できる。BMHより入院日数が長いことからPBSCHを断るドナーもおり、外来でのG-CSF投与体制の確立が重要である。UR-PBSCTに対する懸念材料であるGVHD克服に向けた適切な治療法の開発、体制整備が必要である。
公開日・更新日
公開日
2021-06-14
更新日
-