骨髄バンクドナーの環境整備とコーディネートプロセスの効率化による造血幹細胞移植の最適な機会提供に関する研究

文献情報

文献番号
202014003A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄バンクドナーの環境整備とコーディネートプロセスの効率化による造血幹細胞移植の最適な機会提供に関する研究
課題番号
19FF1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院造血幹細胞移植科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 真一郎(学校法人慶應義塾 慶應義塾大学 医学部)
  • 日野 雅之(大阪市立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 黒澤 彩子(伊那中央病院 腫瘍内科)
  • 大竹 文雄(大阪大学大学院経済学研究科)
  • 下野 僚子(東京大学 総括プロジェクト機構「プラチナ社会」総括寄付講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,975,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨髄バンクドナーの環境整備とコーディネートプロセスの効率化によりコーディネート期間を短縮し、最適な時期での非血縁者間移植の機会提供を増やす。ソーシャルマーケティング手法を用いて若年ドナーにおける初期コーディネート進行率増加を目指す。ドナー都合の終了理由として「仕事の都合(43%)」が最も多かったため(黒澤, 日本造血細胞移植学会雑誌2019)、企業および従業員に対する幹細胞提供に関する意識調査を行い、ドナー休暇・助成制度を含めた施策の有効性を検討の上、ドナーが幹細胞を提供しやすい環境整備に取り組む。
研究方法
行動経済学的な質問項目を含む40歳未満ドナーの10,000人を対象とした「大規模アンケート調査」は3,261人より回答が得られ、様々な観点から分析を行った。「企業に対する幹細胞提供に関する意識調査」の解析を行い、個人向けの調査として「骨髄・末梢血幹細胞提供のための休暇取得に関わる個人特性の分析」を行った。
結果と考察
「大規模アンケート調査」は3,261人より回答が得られ、令和2年度は造血幹細胞の提供者464人とドナー都合による非提供者916人を行動経済学の観点から比較した解析結果を報告した(大竹, 行動経済学2020)。本調査結果を基にして、ドナーの安全性に考慮しつつ行動変容へ繋がるメッセージの伝え方についての介入研究を令和2年度に計画した。また本研究で明らかとなったコーディネートが進みやすいドナーの特徴を用いて、厚生労働特別研究事業・豊嶋班において若年ドナーの骨髄バンク新規登録増を目指した動画「あなたは100人に1人!?」を作成した。本動画はYoutube公開から2週間時点で40万回以上視聴されており、若年層への高い広報効果が期待された。また社会的イメージを刺激した動機であるテレビコマーシャルが登録のきっかけだった場合は幹細胞提供率が有意に低く、ドナープールの質に負の効果を持っていた。この社会的イメージの負の効果は、提供依頼の期待が低い人について統計的に有意であったが、 提供依頼の期待が高い人については統計的に有意差を認めなかった。
ドナー休暇制度の導入にむけて的確な支援を実施するために、大企業5,000社を対象とした意識調査を行った。回答企業386社のうち、ドナー休暇制度を導入していたのが41社(11%)、未導入が341社(88%)であった。ドナー休暇制度の「導入」の有無に関わる特性として、ドナー以外の特別休暇制度(ボランティア休暇制度など)の有無と男性育休の奨励の有無が抽出された。ドナー休暇制度未導入の理由は、人員に余裕がない(32%)、年次休暇で対応(31%)、方法がわからない(14%)、必要がない(13%)などであり、今後、休暇制度の導入へ向けて必要な支援は、行政からの経済的支援(50%)、経営陣への説明(22%)、手続き支援(22%)であることが明らかになった。また休暇取得に関わる個人向けの調査として、日本骨髄バンクのSNS公式アカウント登録者4,287人へ配信し、1,050人より回答が得られた。
結論
令和2年は新型コロナウイルス感染症拡大に伴いドナーコーディネートが制限されたため、5~8月の非血縁骨髄移植件数が前年よりも約3割減少したが、令和2年度上半期の患者登録から移植日までのコーディネート期間中央値は骨髄移植(BMT)が133日、末梢血幹細胞移植(PBSCT)が119日、全体で130日と、コーディネート期間の延長は最小限に止めることができていた。行動経済学の観点からドナーコーディネートの現状を解析した研究は初めてであり、今後、ソーシャルマーケティング手法を用いて、ドナープールの質向上を目指していく。またドナー都合の終了理由として最も多い「仕事の都合」へ対応するため、企業と従業員の意識調査で得られた休暇の取得しやすさに関わる企業特性、ドナー休暇制度の利点・障害を吟味し、今後、実施すべき介入策を検討していく。

公開日・更新日

公開日
2021-07-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202014003Z