文献情報
文献番号
202014001A
報告書区分
総括
研究課題名
小児からの臓器提供に必要な体制整備に資する教育プログラムの開発
課題番号
H30-難治等(免)-一般-101
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 尚(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 瓜生原 葉子(同志社大学商学部)
- 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科)
- 西山 和孝(北九州市立八幡病院 小児科)
- 種市 尋宙(富山大学学術研究部医学系小児科学 小児科学講座)
- 日沼 千尋(東京女子医科大学 看護学部 )
- 別所 晶子(埼玉医科大学総合医療センター小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2010年7月17日改正法の施行以降、小児の脳死下臓器提供に関しては、小児脳死判定基準、小児の意思表示、被虐待児の対象除外など多様な課題が指摘されている。本研究では、これまで18歳未満の小児からの脳死下臓器提供を経験し施設名を公表した医療機関より聴き取り調査を行い、小児の脳死下臓器提供の課題を抽出する。被虐待児の除外に関わる経緯、家族ケアに関わる経緯については重点を置いて検討する。小児の脳死判定の実践、小児の終末期に関する考え方と家族への支援の仕方について参考となる資料の作成、小児の臓器提供を実施するために必要な包括的教育ツールの作成を目的とする。被虐待児除外の判断に関して、被虐待児除外マニュアルに関する認識、虐待評価の実情について調査する。救急初期診療・法的脳死判定・虐待除外・家族ケア・小児の意思表示の 5 種類に分類し必要な対策を考察する。小児脳死下・心停止下臓器提供、移植医療に関する教育を通じて、児童やその家族が臓器提供について考える機会を増やすことに繋がるかどうかについても検討する。
研究方法
研究結果の概要:小児の脳死下臓器提供に関して、医療従事者の臨床行動の実際と家族の意思決定に関わる実証的な国内の先行研究の蓄積はなく、小児の脳死下臓器提供および制度に対する医療従事者個人の主観的解釈に基づいた臨床対応を明らかにすることも目的としていたので、インタビューによる探索的な質的研究を試みた。
データ収集および分析:本研究のデータはテキストであり、2019年1月から2020年2月までに120-150分間(平均約130分)の半構造化インタビューを実施し収集した。研究目的を説明し対象医療従事者の同意を得てインタビューを録音した。録音した音源は委託業者に依頼して逐語録を作成した。印象的な発言はその場で筆記し実状の再現に努めた。分析はデータ収集後、逐語録を受けてから開始した。対象医療従事者の特性に留意して逐語録を繰り返し読み、質問項目に分けて内容の検討を行った。また各々を概念化する方法として各質問項目間の関係付けに努めながら、小児の脳死下臓器提供における①問題点の抽出、②問題発生のその要因、③解決のための対策を明らかにして体系を作成した。
倫理的配慮:研究協力の依頼においては、研究目的、研究方法、研究の参加および中止が自由であること、回答したくない項目には回答しなくてもいいこと、対象医療従事者のプライバシー保護、研究評価の公表について文書および口頭で説明し、文書にて同意を得た。インタビューデータには個人情報が多く含まれているため、逐語録作成は経験ある業者に依頼し行った。インタビュー録音記録、逐語録、研究ノート等の資料は研究者の責任の下厳重に管理した。本研究は、埼玉医科大学総合医療センター研究倫理委員会の承認を得た研究計画書に基づき実施された。
データ収集および分析:本研究のデータはテキストであり、2019年1月から2020年2月までに120-150分間(平均約130分)の半構造化インタビューを実施し収集した。研究目的を説明し対象医療従事者の同意を得てインタビューを録音した。録音した音源は委託業者に依頼して逐語録を作成した。印象的な発言はその場で筆記し実状の再現に努めた。分析はデータ収集後、逐語録を受けてから開始した。対象医療従事者の特性に留意して逐語録を繰り返し読み、質問項目に分けて内容の検討を行った。また各々を概念化する方法として各質問項目間の関係付けに努めながら、小児の脳死下臓器提供における①問題点の抽出、②問題発生のその要因、③解決のための対策を明らかにして体系を作成した。
倫理的配慮:研究協力の依頼においては、研究目的、研究方法、研究の参加および中止が自由であること、回答したくない項目には回答しなくてもいいこと、対象医療従事者のプライバシー保護、研究評価の公表について文書および口頭で説明し、文書にて同意を得た。インタビューデータには個人情報が多く含まれているため、逐語録作成は経験ある業者に依頼し行った。インタビュー録音記録、逐語録、研究ノート等の資料は研究者の責任の下厳重に管理した。本研究は、埼玉医科大学総合医療センター研究倫理委員会の承認を得た研究計画書に基づき実施された。
結果と考察
調査適応基準を満たした症例は10施設11例であり、脳死下・心停止とも臓器提供の経験のない施設は6施設であったが、初の臓器提供が小児例であることを受けて、極めて慎重な姿勢が取られていた。データ解析により、小児の脳死下臓器提供実施を逡巡させた要因と実現させた要因についてまとめ、解決すべき課題と共有されるべき要点を明らかにした。本研究班はこれまで様々な成果を公表してきたが、研究班初年度より小児の法的脳死判定や脳死下臓器提供時の手順、家族ケアなどに関するテキスト作成に取り掛かり、令和3年7月に完成、出版される予定である。また、児童虐待に関する判断について正しい理解が進められるよう現在活用されている資料の検証を行った。また、小児の重症例対応に必須である小児救急医療の充実、救命困難の判断に関する事例検討、日常診療における虐待診断の普及、子どもの看取りと家族ケアに必要な考え方について提言した。移植医療に関する教育を通じて、児童やその家族が臓器提供について考える機会を設けることを目的とした研究も実施した。教員を対象とした全国セミナーや中学 3 年生を対象として配布されるパンフレット改訂、さらにパンフレットを用いた模擬授業を実施した。
結論
小児脳死下臓器提供における課題の実情が明らかにされた。小児救急医療の充実、救命困難の医学的評価の確立、虐待診断学の強化、子どもの看取りと家族ケアの充実を通して、小児の脳死下臓器提供の体制拡充と、制度のより円滑な運用が実現されることを期待する。家族から臓器提供の申し出を受けて、成人を含めて提供の経験が一切なかった施設が、独自の医療資源を動員し、関係諸機関と円滑に連携を図りながら、家族の尊い意思を叶えるために尽力をした姿が明らかとなった。制度上非効率な部分、負担軽減につながる部分については、抜本的な改訂の可能性が否定されることなく進められることを提言したい。
公開日・更新日
公開日
2021-07-26
更新日
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