大規模災害時におけるアレルギー疾患患者の問題の把握とその解決に向けた研究

文献情報

文献番号
202013010A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害時におけるアレルギー疾患患者の問題の把握とその解決に向けた研究
課題番号
20FE1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小林 茂俊(帝京大学 医学部小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院)
  • 足立 雄一(富山大学学術研究部医学系小児科学)
  • 三浦 克志(宮城県立こども病院 アレルギー科)
  • 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合センター 総合診療科部)
  • 池田 政憲(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児急性疾患学講座)
  • 今野 哲(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
  • 福永 興壱(慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器))
  • 𠮷田 誠(国立病院機構 福岡病院)
  • 藤枝 重治(福井大学 学術研究院医学系部門)
  • 矢上 晶子(冨高 晶子)(藤田保健衛生大学 医学部 総合アレルギー科)
  • 福島 敦樹(ツカザキ病院)
  • 成田 雅美(杏林大学 医学部)
  • 本村 知華子(国立病院機構福岡病院 医局)
  • 岬 美穂(鶴和 美穂)(国立病院機構災害医療センター臨床研究部)
  • 二村 昌樹(国立病院機構 名古屋医療センター 小児科)
  • 正木 克宜(慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 成田雅美 東京都立小児総合医療センター アレルギー科 医長(令和2年10月8日~2年12月31日) → 杏林大学 医学部小児科 教授(平成3年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
国民の2人に1人以上と多いアレルギー疾患患者は、災害時に配慮が必要となる要配慮者とされる。アレルギー疾患対策基本法に則り厚生労働省が策定したアレルギー疾患対策基本指針には、アレルギー疾患対策の推進に関する重要事項として「災害時の対応」が明記されている。災害時のアレルギー患者対応は喫緊の課題だが、現状では有効に行われているとはいえない。災害時には自助・公助・共助の3本柱が重要であるが、様々な問題点が存在する。対応推進のためには、現場の行政、患者、災害医療従事者等のアンメットニーズを正確に把握する必要がある。災害時、平時に行政、患者、災害医療従事者がアレルギー疾患対応に対して支援を受ける統一した窓口がないという問題も存在する。アレルギー疾患対応には多角的なアプローチが必要であり、学会・団体が連携してまとめ役となる窓口を設置することが必要である。本研究では、行政、患者・養育者、災害医療従事者、関連学会・団体と連携した研究班を構築し、災害時のアンメットニーズを多面的に検討し、問題解決に向けたツール作成、システム構築を行う。今回は、COVID-19等感染症蔓延による問題点も抽出する。
研究方法
それぞれ、行政、患者、災害医療従事者から見た問題点を把握する行政班、患者・養育者班、災害医療従事者班、関連学会・団体の連携構築を行い、窓口一本化を目指す関連学会連携構築班、問題を解決するツールを作成するツール作成班を構成し、研究を行った。多面的調査のため、アレルギーを診療する各科医師、災害医療従事者、患者会、栄養士、薬剤師、看護師、行政担当者、災害専門家などの多職種のメンバーで構成した。行政班はⅠ、Ⅱの2群に対して書面アンケートを行った。Ⅰの対象は2015年1月~2020年7月に災害救助法が適用された全市町村、Ⅱは全国自治体1741から無作為に25%抽出した435自治体である。前者には、アレルギーの対応経験、災害計画の課題について、後者にはアレルギーへの備えについて質問した。患者・養育者班は、患者本人、養育者を対象としたwebベースのアンケートを行った。内容は、災害経験、自助・公助・共助の状況、既存ツールの評価等である。災害医療従事者班は、文献調査、ヒアリングによって情報を収集し、それに基づいてアンケ―トを作成した。関連学会連携構築班は関連学会・団体の活動を調査し、その情報に基づいて窓口一本化、関連学会・団体連携の草案を作成した。ツール作成班は予備調査として、医学関連学会の災害情報と自治体の食料備蓄、食物アレルギー対応に関する情報の公開状況を調査した。前者は臨床医学関連35学会と小児科学会分科会24学会、後者は47都道府県と道府県庁所在地の都市、政令指定都市の公式ウェブサイトを対象とした。
結果と考察
行政班のアンケートⅠでは323、Ⅱでは186の自治体より有効回答が得られた。自治体の多くで対策が進んでおり、アレルギー患者が要配慮者であるという認識が浸透していることが示されたが、一般への情報公開や部署間の情報共有など細部に関しては不十分であることもわかった。患者自助啓発の不足、職員の基本的知識不足が問題視され、学習機会提供の要望が多かった。COVID-19による職員の負担増加、人員不足も判明した。患者・養育者班アンケートでは、3471件の有効回答が得られた。自助は進んでいるが不十分で、情報不足に対する懸念や多岐にわたる情報への要望が強いことが判明した。反面、学会等の既存ツールの認知度は低かった。 災害医療従事者班は収集した情報に基づいて、災害医療コーディネータ、薬剤師、栄養士向けの3種のアンケートを作成した。関連学会連携構築班の調査で、各団体の個別の活動はあるが連携した活動は行われていないことが判明した。各科のアレルギー専門医が属する日本アレルギー学会を中心とした「アレルギー関連災害対応窓口」を設置することを計画し、草案を作成した。ツール作成班の調査では、過半数の学会が災害情報を公開していたが一般向け情報は少ないこと、行政の情報公開は一部自治体で不十分で、アクセシビリティが良好でないことが判明した。今年度の調査によって、具体的な問題点、必要な情報が明らかになった。ただし、有効なツール作成には不十分で、さらに細かいニーズの抽出のため、層別化解析、異なるアンケートの横断的解析が必要である。ツール作成班はこれらデータに基づいてツールを作成するが、その中心は検索性の高いPDFと情報伝達に有用な患者カードとなると考える。有効活用のための広報についても検討する。
結論
災害時にアレルギー疾患患者に対応するための基本的な情報が得られた。今後は詳細なデータ解析により細かなニーズを抽出し、有効なツール作成と一本化した窓口等の連携システム構築を行う。また、周知を徹底する方策についても検討する。

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
2022-10-21

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202013010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,010,000円
(2)補助金確定額
10,010,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,645,615円
人件費・謝金 223,964円
旅費 0円
その他 3,830,421円
間接経費 2,310,000円
合計 10,010,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
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