地域の子育て支援としての一時保育事業の学習機能に関する研究-ファミリー・サポート・センター事業に着目して-

文献情報

文献番号
200801030A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の子育て支援としての一時保育事業の学習機能に関する研究-ファミリー・サポート・センター事業に着目して-
課題番号
H19-政策・若手-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
東内 瑠里子(佐賀女子短期大学 こども学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
1,746,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ファミリー・サポート・センター(以下、ファミサポ)初設置15年を経過したいま、本事業が、親の育児放棄を促しているのではなく、「親を育てる」意味での「子育て支援」として、役割を果たしているのか、また果たしているとすれば、どのような要素が、子育て支援としての機能を成立させるのか検証している。
研究方法
1)初年度に行った全国調査の詳細な分析を行った。
2)ファミサポを全国で初めて設置した茨城県日立市について聞き取り調査を行った。
3)イギリスのホーム・スタートについて地域の貧困度別に5地域のフィールド調査を行った。
4)日本社会教育学会および九州教育学会において研究発表した。
結果と考察
本事業を利用している親は、特に「生き甲斐・存在感」の項目が突出して高い値がでている。利用者は「自分が大変なときに助けて頂いた。」「誰かに恩返しをしたい」という気持ちになっている。利用者の親としての大変さを支え、親自身の存在感まで支えている本事業の役割があきらかになったといえよう。そして、親の発達を促しているのは、<子どもとの関わり方を学ぶ経験>、<家事や育児の方法を学ぶ経験>、<地域とのつながりを学ぶ経験>であることが明らかとなった。保育者から見た親の発達も、回答の要素1,856を分析すると傾向が似ていた。この結果は、日本社会教育学会紀要への採用が決定した。
また、実践分析として、「ライフ・ケア・ひたち」へのヒアリング調査を行った。取組の歴史と、多様なニーズに応える柔軟できめ細やかな対応と、有償制が持つ意味と課題、専門家ではなくボランティアが家庭に入る意味と課題、コーディネーター、アドバイザーへの身分保障の課題などについて明らかにした。
海外調査では、貧困地域において、DVやドラッグ、うつ、虐待等、目に見える形での育児困難が多かったが、経済的に豊かな地域では、孤立によるうつや人種差別など目に見えないからこそ深い育児困難があった。ホーム・スタートは、各地域独立の団体であるため、地域課題に応じた対応ができる一方、ボランティアの確保、無償性であるため団体運営の安定性のため財政的支援の必要性が課題としてあった。
結論
本事業は、単に親の育児放棄を促しているのではない。「子どもとの関わり方を学ぶ経験」、「家事や育児の方法を学ぶ経験」、「地域とのつながりを学ぶ経験」という要素が、子育て支援としての機能を成立させている可能性が高い。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-