精神科入院患者の退院支援と地域生活支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200801029A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科入院患者の退院支援と地域生活支援のあり方に関する研究
課題番号
H19-政策・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
沢村 香苗((財)医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安西 信雄(国立精神・神経センター病院リハビリテーション部)
  • 瀬戸屋 雄太郎(国立精神・神経センター精神保健研究所社会復帰相談部精神保健相談研究室)
  • 中西 三春((財)医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構 研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,278,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の精神科医療においては「社会的入院」の解消が重要な課題となっている。この課題を達成するためには、患者が良好な地域生活に移行するための退院支援、また地域で生活する精神障害者ができるだけそれを継続できるような地域生活支援の体制整備が必要である。本研究は標準的退院支援ツールの作成と、地域精神医療が進んでいる諸外国における知見の収集を通して、今後の退院支援と地域生活支援のあり方を検討することを目的として行われた。
研究方法
1)初年度作成した退院支援ツールの試案について、3つの医療機関においてヒアリングを行い、パスをブラッシュアップした。また全国の精神科病院の地域連携室、相談支援事業所、保健所へのアンケート調査により、現在の退院支援がどのような役割分担で行われているかを把握し、退院支援・地域生活支援パスに取り入れた。
2)地域精神保健医療について英国とイタリアを対象とした海外調査を行い、連携を支えている制度や連携活動の具体的内容に関する情報を収集した。収集した情報を元に今後の日本での制度設計にどのように応用することができるか、またその際の課題について検討した。
結果と考察
退院支援・地域生活支援パスについては1.状況確認と目標設定の時期、2.地域資源等を探索し地域に接近する時期、および3.試泊等により実際に地域に生活を移行する時期の他に、4.退院後の生活を継続的に支援する時期を加え、また担当職種や支援にかかる時間の目安を設定した。これは行うべき活動を明確にすることで支援が確実かつ効率的に行われ、支援全体にかかる時間が適切なものとなることを期待したものである。
海外調査の結果、入院期間の短縮や病床数の削減には入院医療のさらなる充実、ケアマネジメントの普及、アウトリーチサービス拡充を促進することが必要と考えられた。
結論
退院支援・地域生活支援パスにより多くの施設において退院支援計画の作成がより容易にまた的確に行えるようになり、退院支援及び地域生活支援が円滑に行われることが期待される。海外調査からは我が国において今後精神科患者の入院期間を短縮し、地域生活を支援するための課題が示された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200801029B
報告書区分
総合
研究課題名
精神科入院患者の退院支援と地域生活支援のあり方に関する研究
課題番号
H19-政策・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
沢村 香苗((財)医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安西 信雄(国立精神・神経センター病院リハビリテーション部)
  • 瀬戸屋 雄太郎(国立精神・神経センター精神保健研究所社会復帰相談部精神保健相談研究室)
  • 中西 三春((財)医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構 研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
退院支援は、各患者が退院のための解決すべき問題を明らかにするアセスメント・その問題を解決するための訓練・環境の調整という活動が総合的に行われてはじめて実現するものであり、これらが十分に行われぬまま退院すれば、病状の悪化や再入院につながることが考えられる。このため、実際の臨床場面において退院支援を行うためには、誰に対して、誰が、いつ、どのような方法で、何を行うかという具体的な流れを構造化して示す必要がある。同時に、退院支援及び地域生活支援を円滑に行うためには医療機関と地域資源の連携を生成し発展させていくための活動等の基盤整備も重要である。本研究は精神科病棟における長期在院患者の標準的退院パスの作成を行うとともに、退院支援・地域生活支援が行われる環境の整備について、諸外国の知見も取り入れて提案することを目的として行われた。
研究方法
初年度は文献のレビュー等を行って研究計画を精緻化し、1施設におけるカルテ調査やインタビュー調査を行って暫定版退院パスを作成した。2年度は暫定版退院パスに必要な改訂を加えて標準パスとして完成させた。また退院支援・地域生活支援の基盤整備の具体的方策について諸外国の知見も取り入れながら提示した。
結果と考察
初年度は1病院において個別の患者のケア記録を整理し、本人とスタッフへのヒアリングにより情報を加えて退院支援パスを提示した。2年度は1)状況確認と目標設定の時期、2)地域資源等を探索し地域に接近する時期、および3)試泊等により実際に地域に生活を移行する時期の他に、4)退院後の生活を継続的に支援する時期を加え、また担当職種や支援にかかる時間の目安を設定した。また、米国・英国・カナダ・オーストラリア・イタリアにおける地域精神保健医療制度についてまとめ、英国とイタリアを対象とした海外調査を行った。それらの国においては、医療機関は主に急性期症状に短期間対応するが、基本的には地域にある機能別のサービスチームが患者のニーズに応じて対応する形が一般的であった。また、患者が医療機関に入院している間も地域のチームが関わりを継続し、退院後にも切れ目なくサービスを提供していた。
結論
精神科長期在院患者の退院支援及び地域生活支援の内容が明らかになり、実際の支援が確実かつ効率的に行われることが期待される。さらに、支援に必要な人員、また地域資源のあり方についても示唆を与えるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200801029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の特色は1年以上在院した統合失調症患者に行われた入院中及び退院後のケアを整理し標準的退院支援パスを作成する点と、退院支援及び地域生活支援の基盤整備の具体的方策を明らかにする点であった。特に退院支援パスについては、実際の支援例を収集して要素を抽出し、それを複数の医療機関において検証する方法で作成した点に新奇性があるものと思われる。
臨床的観点からの成果
退院支援は各患者が退院のための解決すべき問題を明らかにするアセスメント・その問題を解決するための訓練・環境の調整という活動が総合的に行われてはじめて実現するものであり、これらが十分に行われぬまま退院すれば病状の悪化や再入院につながることが考えられる。退院支援・地域生活支援パスにより精神科長期在院患者の退院支援及び地域生活支援の内容が明らかになり、支援活動が確実かつ効率的に行われることが期待される。
ガイドライン等の開発
実際に行われた精神科長期在院患者への退院支援の記録をもとに、複数の病院における活動も加えて、退院から地域生活支援までを視野に入れた退院支援・地域生活支援パスを開発した。また、そのパスを有効に活用するためのフローチャート、情報整理のための書式も合わせて開発した。
その他行政的観点からの成果
退院支援・地域生活支援パスからは、支援に必要な人員配置、また地域資源のあり方についての示唆が得られる。また、地域精神保健の進んでいるとされるイギリスおよびイタリアの先進地域についての調査からは、入院期間の短縮や病床数の削減という課題を達成するためには入院医療のさらなる充実、ケアマネジメントの普及、アウトリーチサービス拡充が必要であることが明確になった。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
中西三春、沢村香苗、安西信雄:統合失調症を有する患者における退院困難の要因別にみた退院支援のプロセス.第104回日本精神神経学会学術総会、2008年5月30日
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakanishi M, Sawamura K, Sato S et al.
Development of a clinical pathway for long-term inpatients with schizophrenia.
Psychiatry and Clinical Neurosciences , 64 , 99-103  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-