文献情報
文献番号
202013006A
報告書区分
総括
研究課題名
ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援に関する研究
課題番号
19FE1003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
- 村島 温子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 森 雅亮(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 杉原 毅彦(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
- 川人 豊(京都府立医科大学 医学研究科)
- 小嶋 雅代(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部)
- 房間 美恵(宝塚大学 看護学部)
- 浦田 幸朋(つがる西北五広域連合つがる総合病院 リウマチ科)
- 宮前 多佳子(東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター 医学部)
- 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部)
- 橋本 求(京都大学 医学部附属病院リウマチセンター)
- 佐浦 隆一(大阪医科大学 総合医学講座 リハビリテーション医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、患者の社会的寛解をめざすために、医師、メディカルスタッフ、患者が協同し、関節リウマチ患者の移行期、妊娠出産期、高齢期の各ライフステージにおける①診療・支援の実態およびアンメットニーズの把握、②患者支援を目的としたメディカルスタッフ向けガイドおよび資材の作成、③その普及活動を行うことである。
研究方法
本年度実施した課題と方法は以下の通りである。
1.ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド作成に向けたメディカルスタッフによる関節リウマチ患者支援の実態に関するアンケート調査:RA診療に関わるメディカルスタッフに対して、昨年度作成したアンケートを郵送によて実施した(看護師1268名、薬剤師526名、理学/作業療法士290名)。
2.「メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」の作成:1.で実施しアンケート結果、2020年リウマチ白書、関節リウマチ診療ガイドライン2020をもとに医療者、患者会が協同してガイドで取り上げるべき項目の選定を行った。
3. 各ライフステージ班における活動
1)移行期班:少・多関節炎JIAとRAの疾患活動性指標の相違点を明らかにする目的で、本邦のJIAレジストリ「CoNinJa」のデータを用いて検討した
2)妊娠出産期班:若年RA患者をケアするメディカルスタッフのニーズを知るためのアンケート調査、医師の妊娠RA患者ケアに関するガイドラインプラクティスギャップ調査を実施した
3)高齢期班:NinJaデータベース、高齢RAコホート(CRANEコホート)のデータを用い、SDAIにて低疾患活動性あるいは寛解達成者のライフステージによる臨床像の違い、高齢者における副腎皮質ステロイド(GCs)、分子標的薬治療の現状と身体機能低下に関連する因子の差異を検討した
4)悪性腫瘍班:NinJaデータベースを用いて腫瘍既往歴のある患者の薬剤使用状況および腫瘍発生前後での疾患活動性変化につき検討した
1.ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド作成に向けたメディカルスタッフによる関節リウマチ患者支援の実態に関するアンケート調査:RA診療に関わるメディカルスタッフに対して、昨年度作成したアンケートを郵送によて実施した(看護師1268名、薬剤師526名、理学/作業療法士290名)。
2.「メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」の作成:1.で実施しアンケート結果、2020年リウマチ白書、関節リウマチ診療ガイドライン2020をもとに医療者、患者会が協同してガイドで取り上げるべき項目の選定を行った。
3. 各ライフステージ班における活動
1)移行期班:少・多関節炎JIAとRAの疾患活動性指標の相違点を明らかにする目的で、本邦のJIAレジストリ「CoNinJa」のデータを用いて検討した
2)妊娠出産期班:若年RA患者をケアするメディカルスタッフのニーズを知るためのアンケート調査、医師の妊娠RA患者ケアに関するガイドラインプラクティスギャップ調査を実施した
3)高齢期班:NinJaデータベース、高齢RAコホート(CRANEコホート)のデータを用い、SDAIにて低疾患活動性あるいは寛解達成者のライフステージによる臨床像の違い、高齢者における副腎皮質ステロイド(GCs)、分子標的薬治療の現状と身体機能低下に関連する因子の差異を検討した
4)悪性腫瘍班:NinJaデータベースを用いて腫瘍既往歴のある患者の薬剤使用状況および腫瘍発生前後での疾患活動性変化につき検討した
結果と考察
1. メディカルスタッフは職種に関わらず、RA患者に対して幅広い領域の支援を行っている実態が明らかとなった。しかし、自身の専門外の内容に対する支援には困ることも多く、患者支援ガイドに対する期待は高いと考えらえれた。
2. メディカルスタッフは職種に関わらず、JIAそのものや移行期医療に関する経験や知識が不足しており、患者支援ガイドの利活用が期待される。
3. メディカルスタッフの約半数は妊娠出産期の患者支援経験だった。職種を問わず支援をしており、各職種が共通に使用できる支援ツール開発の必要性が把握できた。また、妊娠可能なRA患者支援に対する取り組みを行っている施設は多くなく、RA女性患者の期待出生数が低い一因となっている可能性が考えられた。
4. 高齢期RA患者には全職種が幅広く支援していたが、フレイルやサルコペニア/ロコモティブシンドロームはリハスタッフで、ポリファーマシーや腎機能障害は薬剤師が特に注意して支援していた。
5. 禁煙指導やがん検診の推奨は約半数にとどまっており、健康診断の積極的な推奨や支援、がん治療中のRA治療に関する支援が重要と考えられる。
6. JADAS-27とRAの各疾患活動性指標は絶対値及び変化値ともに良好な相関関係を認め、JIAもSDAIやCDAIで活動性を評価でき可能性が示唆された。しかし、寛解基準の一致性は高くなく検討が必要である。
7. 妊娠RA患者に対するケアに関するガイドラインプラクティスギャップ調査では、妊娠に関する各種指針の普及が日本リウマチ学会員の医師でも不十分であることが判明し、さらなる啓発活動の必要性が確認できた。
8. 前期/後期高齢者においてもSDAIが低いほど正常身体機能に関連していたことから、どのライフステージにおいても寛解達成が理想的治療目標であることが示唆された。また、ステロイド継続による身体機能への負の側面は、中年期より前期/後期高齢期でより影響が大きかった。
9. 腫瘍発生前後でSDAI、CDAI、DAS28の各疾患活動性指標に著変はなかった。悪性リンパ腫既往患者ではMTX使用は避けられ、生物学的製剤が必要な患者ではトシリズマブが選択される傾向があったが、固形腫瘍既往患者ではMTXも使用され、各生物学的製剤いずれも使用されていた。
2. メディカルスタッフは職種に関わらず、JIAそのものや移行期医療に関する経験や知識が不足しており、患者支援ガイドの利活用が期待される。
3. メディカルスタッフの約半数は妊娠出産期の患者支援経験だった。職種を問わず支援をしており、各職種が共通に使用できる支援ツール開発の必要性が把握できた。また、妊娠可能なRA患者支援に対する取り組みを行っている施設は多くなく、RA女性患者の期待出生数が低い一因となっている可能性が考えられた。
4. 高齢期RA患者には全職種が幅広く支援していたが、フレイルやサルコペニア/ロコモティブシンドロームはリハスタッフで、ポリファーマシーや腎機能障害は薬剤師が特に注意して支援していた。
5. 禁煙指導やがん検診の推奨は約半数にとどまっており、健康診断の積極的な推奨や支援、がん治療中のRA治療に関する支援が重要と考えられる。
6. JADAS-27とRAの各疾患活動性指標は絶対値及び変化値ともに良好な相関関係を認め、JIAもSDAIやCDAIで活動性を評価でき可能性が示唆された。しかし、寛解基準の一致性は高くなく検討が必要である。
7. 妊娠RA患者に対するケアに関するガイドラインプラクティスギャップ調査では、妊娠に関する各種指針の普及が日本リウマチ学会員の医師でも不十分であることが判明し、さらなる啓発活動の必要性が確認できた。
8. 前期/後期高齢者においてもSDAIが低いほど正常身体機能に関連していたことから、どのライフステージにおいても寛解達成が理想的治療目標であることが示唆された。また、ステロイド継続による身体機能への負の側面は、中年期より前期/後期高齢期でより影響が大きかった。
9. 腫瘍発生前後でSDAI、CDAI、DAS28の各疾患活動性指標に著変はなかった。悪性リンパ腫既往患者ではMTX使用は避けられ、生物学的製剤が必要な患者ではトシリズマブが選択される傾向があったが、固形腫瘍既往患者ではMTXも使用され、各生物学的製剤いずれも使用されていた。
結論
様々なライフステージの関節リウマチ患者に対するメディカルスタッフの患者支援の実態と問題点、各ライフステージにおけるRA診療実状と課題が明らかとなった。昨今、ライフステージに応じた治療指針の策定や患者支援の充実が求められているが、本研究成果はそれらに対して有用な情報を提供しうると考えられる。次年度は「メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」を完成させその普及に努める。
公開日・更新日
公開日
2021-06-01
更新日
-