食物経口負荷試験の標準的施行方法の確立

文献情報

文献番号
202013004A
報告書区分
総括
研究課題名
食物経口負荷試験の標準的施行方法の確立
課題番号
19FE1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では安全性の高い食物経口負荷試験(Oral food challenge: OFC)の標準的な施行方法を確立し、食物アレルギー診療の均てん化を目標に「食物経口負荷試験の手引き(以下、「OFCの手引き」と略)」を作成することを目的とする。
研究方法
2020年度は、1)~3)の研究課題の検討結果をもとに「OFCの手引き2020」を作成した。
1)誘発症状のリスクに基づいたOFCの層別化
2)より安全性の高いOFC方法の検討
3)OFCの共通プロトコール作成
4)「OFCの手引き」作成
5)「OFCの手引き」の妥当性検討と診療サポートアプリケーション開発
結果と考察
1)誘発症状のリスクに基づいたOFCの層別化
OFC実施医療機関を施設の体制(OFCの経験、人員配置および緊急時対応)を基に①専門の医療機関、②日常的に実施している医療機関、③一般の医療機関に区分し、各区分の医療機関で実施可能なOFCを判断するための具体的な指標を示した。
2)より安全性の高いOFC方法の検討
昨年度の検討結果をもとに、負荷食品は単回または2~3回に分割し、摂取間隔は少なくとも30分以上(鶏卵は60分以上が望ましい)を推奨し、原因食物の摂取状況、食物摂取に関連した病歴、原則1年以内に測定した特異的IgE抗体価を参考に総負荷量を選択できる具体的な指標を作成した。
3)OFCの共通プロトコール作成
昨年度の検討結果から、現状で共通プロトコールを作成することは難しく、安全なOFCを実施するために推奨する「摂取間隔と分割方法」、「総負荷量の選択」をOFCの手引きに提示するのみとした。
4)「OFCの手引き」作成
構成は、【総論編】定義、目的、適用、試験前のリスク評価、方法、症状出現時の対応、結果判定、【準備編】社会的環境の整備、実施医療機関の分類と役割、安全対策および体制の整備、説明・同意、結果に影響する薬剤、【実践編】基本的な考え方、原則として除去不要な食品、自宅での摂取が考慮できる場合、実施する医療機関の選択、総負荷量の選択、試験当日の流れ、試験後の食事指導とした。実践編では、OFCを実施する医師が実施医療機関や総負荷量をリスクに応じて選択できる具体的な指標を示した。2021年3月にはOFCの手引きのPDF版をweb上に公開し、無料でダウンロードできるようにした。
5)「OFCの手引き」の妥当性検討と診療サポートアプリケーション開発
研究代表・分担・協力施設から約9000例のOFCデータを集積した。今後、集積したデータを基に「OFCの手引き」の妥当性を検証し、最終的には日常診療で利用可能なアプリを開発・実用化する予定である。
結論
今年度は昨年度までに得られた情報を基に研究代表者・分担者・協力者で協議し、「OFCの手引き」を作成した。わが国ではじめてのOFCの実践的なマニュアルであり、日本小児アレルギー学会から2021年に発刊が予定されている「食物アレルギー診療ガイドライン2021」の基となる。さらに、本研究班の構成メンバーの多くが地方拠点病院および中心拠点病院に属しており、拠点病院を中心とした研修においてもOFCの手引きを参考に実施される。
以上から、本研究班での成果は、標準的診療を全国的に普及させ、食物アレルギー診療の質の向上・均てん化の促進に寄与すると考える。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2021-07-19

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202013004B
報告書区分
総合
研究課題名
食物経口負荷試験の標準的施行方法の確立
課題番号
19FE1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では安全性の高い食物経口負荷試験(Oral food challenge: OFC)の標準的な施行方法を確立し、食物アレルギー診療の均てん化を目標に「食物経口負荷試験の手引き(以下、「OFCの手引き」と略)」を作成することを目的とする。
研究方法
◆「OFCの手引き2020」作成
以下の研究課題について検討し、「OFCの手引き2020」を作成した。
1)誘発症状のリスクに基づいたOFCの層別化
2)より安全性の高いOFC方法の検討
3)OFCの共通プロトコール作成
4)「OFCの手引き」作成
5)「OFCの手引き」の妥当性検討と診療サポートアプリケーション開発
◆OFC実施状況調査
OFCの実施状況について日本小児科学会 基幹施設および連携施設で一定数のOFCの実績がある施設を対象に調査した。
結果と考察
◆「OFCの手引き2020」作成
1)誘発症状のリスクに基づいたOFCの層別化
OFC実施医療機関を施設の体制(OFCの経験、人員配置および緊急時対応)を基に①専門の医療機関、②日常的に実施している医療機関、③一般の医療機関に区分し、各区分の医療機関で実施可能なOFCを判断するための具体的な指標を示した。
2)より安全性の高いOFC方法の検討
負荷食品は単回または2~3回に分割し、摂取間隔は少なくとも30分以上(鶏卵は60分以上が望ましい)を推奨することとした。原因食物の摂取状況、食物摂取に関連した病歴、原則1年以内に測定した特異的IgE抗体価を参考に総負荷量を選択できる具体的な指標を作成した。
3)OFCの共通プロトコール作成
現状で共通プロトコールを作成することは難しく、安全なOFCを実施するために推奨する「摂取間隔と分割方法」、「総負荷量の選択」をOFCの手引きに提示するのみとした。
4)「OFCの手引き」作成
構成は、【総論編】定義、目的、適用、試験前のリスク評価、方法、症状出現時の対応、結果判定、【準備編】社会的環境の整備、実施医療機関の分類と役割、安全対策および体制の整備、説明・同意、結果に影響する薬剤、【実践編】基本的な考え方、原則として除去不要な食品、自宅での摂取が考慮できる場合、実施する医療機関の選択、総負荷量の選択、試験当日の流れ、試験後の食事指導とした。実践編では、OFCを実施する医師が実施医療機関や総負荷量をリスクに応じて選択できる具体的な指標を示した。2021年3月にはOFCの手引きのPDF版をweb上に公開し、無料でダウンロードできるようにした。
5)「OFCの手引き」の妥当性検討と診療サポートアプリケーション開発
研究代表・分担・協力施設から約9000例のOFCデータを集積した。今後、集積したデータを基に「OFCの手引き」の妥当性を検証し、最終的には日常診療で利用可能なアプリを開発・実用化する予定である。
◆OFC実施状況調査
対象となる56施設のうち、41施設(73.2%)から調査結果を回収した。その結果、9歳以上へのOFC実施が約2割、年間3回以上のOFC実施も約2割であり、一部のOFCでは診療点数を請求できていない状況が明らかになった。
結論
わが国ではじめてのOFCの実践的なマニュアルである「OFCの手引き」を作成・公開した。OFCは食物アレルギー診断の最も確実な検査法である。食物アレルギーの管理・治療の原則は「必要最小限の原因食物の除去」であり、食物アレルギー診療ガイドライン2016(以下、ガイドライン)および食物アレルギーの診療の手引き2020(以下、診療の手引き)においても、OFCの結果を基にした管理・治療が推奨されている。OFCでは標準化された方法がないことが普及の妨げになっていたと考えられるが、「OFCの手引き」が食物アレルギー診療に携わる医師・メディカルスタッフに広く活用されることで食物アレルギー診療の経験が豊富でない施設でもより安全なOFCが実施可能となることが期待される。以上から「OFCの手引き」は、標準的診療を全国的に普及させ、食物アレルギー診療の質の向上・均てん化の促進に寄与すると考える。
またOFC実施状況調査の結果から、一部のOFCでは診療点数を請求できていない状況が明らかになった。OFCでは予期せず重篤な症状を誘発することがあるため安全性の向上が求められており、ガイドラインや診療の手引きでは、OFCの総負荷量を少量から段階的に実施することを推奨している。このため、従来のような診断確定を目的としたOFCより、原因食物を症状なく摂取できる「安全摂取可能量の決定」を目的としたOFCが増えている現状がある。食物アレルギー診療の均てん化にはOFCの普及と実施は欠かせない要素であり、今回の調査で明らかになった診療状況から保険診療報酬における年齢および回数の制限の見直しは喫緊の課題である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2021-10-01

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202013004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
食物経口負荷試験(Oral food challenge: OFC)方法の現状を把握するために年間200件以上のOFC実施施設を対象に調査を行った。その結果、総負荷量は抗原ごとに異なり、鶏卵・牛乳では少量(鶏卵53%、牛乳67%)、小麦は中等量(42%)、ピーナッツは日常摂取量(53%)が多く、いずれの抗原も分割回数は単回~3回、摂取間隔は30分以上が主であることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
OFC実施医療機関を施設の体制(OFCの経験、人員配置および緊急時対応)を基に①専門の医療機関、②日常的に実施している医療機関、③一般の医療機関に区分し、各区分の医療機関で実施可能なOFCを判断するための具体的な指標を示した。安全なOFCを実施するために推奨する「摂取間隔と分割方法」を示し、原因食物の摂取状況、食物摂取に関連した病歴、原則1年以内に測定した特異的IgE抗体価を参考に総負荷量を選択できる具体的な指標を作成した。
ガイドライン等の開発
わが国ではじめてのOFCの実践的なマニュアルである「食物経口負荷試験の手引き」(OFCの手引き)を2021年3月にweb上に公開した。OFCの手引きは、日本小児アレルギー学会から2021年に発刊された「食物アレルギー診療ガイドライン2021」の基となり、標準的診療を全国的に普及させ、食物アレルギー診療の質の向上・均てん化の促進に寄与すると考える。
その他行政的観点からの成果
アレルギー疾患対策基本法とアレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針による拠点病院を中心とした研修において「OFCの手引き」を参考に、標準的診療を全国的に普及させることで、基本指針に示されたアレルギー疾患医療全体の質の向上に資すると考えられる。また、OFCの実施状況調査から9歳以上へのOFC実施が約2割、年間3回以上のOFC実施も約2割であり、一部のOFCでは診療点数を請求できていなかった。保険診療報酬における年齢および回数の制限の見直しが喫緊の課題であることを明らかにした。
その他のインパクト
第21回食物アレルギー研究会(WEB開催:2021年2月25日-3月16日)におけるシンポジウムとして「食物経口負荷試験の層別化」について講演した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
食物アレルギー診療ガイドライン2021に寄与した
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ上に成果物を公開した

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-06-10
更新日
2024-06-03

収支報告書

文献番号
202013004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
6,885,000円
差引額 [(1)-(2)]
115,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 538,904円
人件費・謝金 4,330,800円
旅費 0円
その他 415,296円
間接経費 1,600,000円
合計 6,885,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2022-04-18