文献情報
文献番号
202013003A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫アレルギー疾患対策に関する研究基盤の構築
課題番号
H30-免疫-指定-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
玉利 真由美(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 松本 健治(国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部)
- 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
- 藤枝 重治(福井大学 学術研究院医学系部門)
- 天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部 皮膚科学教室)
- 足立 剛也(京都府立医科大学 大学院医療レギュラトリーサイエンス学教室)
- 貝沼 圭吾(国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,231,000円
研究者交替、所属機関変更
令和2年10月1日より、足立 剛也・京都府立医科大学 大学院医療レギュラトリーサイエンス学教室 特任講師 を研究分担者に追加
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では免疫アレルギー疾患の罹患者は非常に多く社会問題となっている。平成26年にアレルギー疾患対策基本法が成立し、長期的かつ戦略的な研究推進の必要性が示されている。免疫アレルギー疾患に対し“安心して生活できる社会の構築”をめざし、免疫アレルギー疾患研究10か年戦略が令和元年に示された。本研究班は効果的で有意義な免疫アレルギー疾患の研究を推進するため、研究の現況や国際情勢を正確に把握し、研究戦略を立て、それらの進行状況を随時確認していくことを目的とする。
研究方法
本研究班の実装に向け、次世代タスクフォースEmpowering Next Generation Allergist/immunologist toward Global Excellence Task Force(ENGAGE-TF)を中心に活動を行い、ホームページ(https://www.engage-tf.jp)を通じた情報発信を行っている。本年度も戦略についての周知を目的とし、論文執筆や学会発表を行った。また免疫アレルギー疾患研究の現状把握のため、日本からの国際雑誌への論文掲載状況、免疫アレルギー領域の新規承認医薬品の調査を行った。AMED免疫アレルギー実用化研究事業で採択された課題の成果についてインパクト解析を行った。NDBによるアレルギー診療に関する医薬品の実態調査、検査の実態調査を行なった。本戦略の評価及び見直しに資する情報収集のため、研究分担者、研究協力者の各専門領域における最近の3年間における日本を含めた世界の動向、これから日本で特に取り組むべき課題について調査し報告書としてまとめた。
結果と考察
本研究戦略を国際的に広く周知するため、英文総説Strategic Outlook toward 2030: Japan’s Research for Allergy and Immunology, Secondary publication(Allergol Int. 2020;69:561-570)、および本戦略を紹介した成人発症好酸球性気道疾患の総説 (Allergy. 2020;75:3087-3099)を発表した。免疫アレルギー研究における国際連携、人材育成に関する基盤構築研究につながる活動として、第69回日本アレルギー学会学術大会(JSA/WAO Joint Congress 2020)でシンポジウム留学のすゝめ2020@JSA/WAOを開催した。Nature Cafe on Type 2 Immunity: Challenges and Opportunitiesで本戦略について発表した。令和2年の1年間の免疫アレルギー分野の国際雑誌への日本からの投稿状況では、The Journal of Allergy and Clinical Immunology in Practice 25報、Allergy 41報、Pediatric Allergy and Immunology 10報、Allergology International 98報、と4誌で前年より増加傾向が認められた。令和2年度の新規承認医薬品の調査では、全分野の計123件の新規承認医薬品のうち、免疫アレルギー領域の薬剤は例年とほぼ変化はなく22件(18%)を占め、そのうち10件が生物学的製剤であった。AMEDの免疫アレルギー疾患実用化研究事業で採択された53課題の成果について、国際的な研究資金配分機関である英国MRCおよび米国NIHを対象として多角的に比較検討したインパクト解析では、国際共同研究や成果のオープンアクセスの面で課題があること、また本戦略との関連性において、疾患層別化研究や宿主外的因子研究に日本の強みがあることが明らかとなった。NDBによるアレルギー診療に関する実態調査では、エピペン注射液の処方状況について、一人当たりの処方本数、年齢別では15歳未満で多くその後減少すること、全年齢階級で男性が多いことなどが明らかとなった。都道府県別の処方本数にも差が認められ、NDBが治療の均てん化推進への対策に有用である可能性が示唆された。研究分担者、研究協力者によるレポート作成では本戦略の評価見直しに向け、各専門分野における近年の動向や今後の課題が明らかとなった。
結論
本研究戦略の内容を国際的に広く周知するため論文や学会での発表が行われた。NDBは戦略の見直しに向けたアレルギーの現状把握に貴重な情報となるとともに、治療の均てん化推進への対策に有用である可能性が示唆された。今後もENGAGE-TFを中心に本研究戦略の情報発信、研究の国際化・多様化・有機的連携をめざし活動していく。本戦略の中間評価・見直しに向け、多角的な情報収集および情報共有を行い、戦略の進捗評価、現状把握、異分野および産官学民連携を進めていく。
公開日・更新日
公開日
2021-06-01
更新日
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