文献情報
文献番号
202013002A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の関節リウマチ診療の標準化に関する臨床疫学研究
課題番号
H30-免疫-指定-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
針谷 正祥(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 宣(京都大学大学院医学研究科 リウマチ性疾患制御学講座)
- 井上 永介(昭和大学統括研究推進センター)
- 金子 祐子(慶應義塾大学 医学部)
- 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫内科学)
- 岸本 暢将(杏林大学 医学部)
- 河野 正孝(京都府立医科大学大学院 医学研究科 免疫内科学)
- 小嶋 俊久(名古屋大学医学部附属病院整形外科)
- 小嶋 雅代(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部)
- 齋藤 和義(産業医科大学 医学部 第一内科学講座)
- 酒井 良子(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター リウマチ性疾患薬剤疫学研究部門)
- 杉原 毅彦(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
- 鈴木 康夫(東海大学 医学部内科学系リウマチ内科学)
- 瀬戸 洋平(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
- 田中 榮一(東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科学講座)
- 田中 真生(京都大学大学院医学研究科 リウマチ性疾患先進医療学講座)
- 中島 亜矢子(三重大学 医学部附属病院)
- 中野 和久(産業医科大学医学部第1内科学講座)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科人体構成学)
- 平田 信太郎(広島大学病院 )
- 藤井 隆夫(和歌山県立医科大学附属病院 リウマチ・膠原病科)
- 松下 功(金沢医科大学 医学部)
- 村島 温子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 森信 暁雄(神戸大学大学院医学研究科)
- 森 雅亮(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関変更
研究分担者 森信曉雄
国立大学法人 京都大学
→国立大学法人 神戸大学(令和2年10月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、わが国のRA診療の現状と問題点を解析し、日本リウマチ学会(JCR)が2014年に発表したRA診療ガイドラインの改訂を通じて、今後のリウマチ対策およびRA患者のQOL向上に寄与することを目的とする。
研究方法
3つの分科会を設置し、JCRと連携しつつ研究を遂行した。RA疫学研究分科会では、登録患者の年齢構成に偏りのないナショナルデータベース(JNDB)を用いて、専門施設(専門医が勤務もしくは日本リウマチ学会の教育認定施設)の受診状況別、及び都道府県別のRA治療薬処方実態を検討した。RA関連リンパ増殖性疾患分科会では①国内から報告された関節リウマチ(RA)治療中に発症するリンパ増殖性疾患(RA関連LPD)86例、②JCR委員会で行われた『関節リウマチ患者におけるリンパ増殖性疾患に関する研究(JCR-RA-LPD研究)』に登録された10,838例(うち解析対象9,815例)、③日本リウマチ学会・日本血液学会・日本病理学会3学会合同ワーキンググループのJCR施設で行った『関節リウマチ治療経過中に発生するリンパ増殖性疾患/リンパ腫の臨床・病理学的特性に関する後方視的多施設共同研究(LPD-WG study)』で収集された232例、を対象に、RA関連LPDの発症率、臨床病理学的特徴、経過と予後、LPD発症後のRA治療について検討した。RA診療ガイドライン分科会では、昨年度に引き続き、GRADE (Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)法に基づき、関節リウマチ診療ガイドラインの推奨文、解説文、エビデンスプロファイルを作成した。また、作成された推奨から、薬物治療、非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムを作成した。患者の意見をエビデンスとして反映させることを目的として自記式アンケート調査を実施した。これらの成果を統合して、関節リウマチ診療ガイドライン2020を編集した。
結果と考察
RA疫学研究分科会の解析では、2017年度に専門施設受診を一度もしなかった患者割合が全国の平均の10%以上高い県は12県、約25%であり、いずれも非大都市圏であった。生物学的製剤は専門施設のみ受診した例では一度も受診がなかった例より処方割合は高かった。RA関連リンパ増殖性疾患分科会の解析では、JCR-RA-LPD研究でリンパ腫の標準化罹患比(SIR)は5.99(4.30-7.68)で、高齢とMTX治療がLPDの有意な危険因子として抽出された。LPD-WG studyにおけるLPDは、病理学的にはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が多く41%を占めた。免疫不全と関連するEpstein-Barr virus陽性皮膚粘膜潰瘍、やHodgkin様病変などの多形性LPDもみられた。生命予後については、5年生存率は自然退縮群91.5%、化学療法群67.2%で、再発例は19%みられ、2年以内が2/3をしめた。RA診療ガイドライン分科会では、55の推奨文を修正し、最終的な推奨の強さ・同意度を決定した。推奨を反映させた治療アルゴリズムを作成した。関節リウマチ診療ガイドライン改訂案は日本リウマチ学会で承認され、「関節リウマチ診療ガイドライン2020」が発行された。
結論
関節リウマチ診療ガイドライン2020の普及を通じて、わが国の関節リウマチ診療水準がさらに向上し、均てん化が進むことが期待される。
公開日・更新日
公開日
2021-05-28
更新日
2021-06-01