アレルギー疾患の患者および養育者の就労・就学支援を推進するための研究

文献情報

文献番号
202013001A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の患者および養育者の就労・就学支援を推進するための研究
課題番号
H30-免疫-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 則人(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 益田 浩司(京都府立医科大学 医学部)
  • 峠岡 理沙(京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学)
  • 安田 誠(京都府立医科大学 医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室)
  • 土屋 邦彦(京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学)
  • 金子 美子(京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
  • 小田 良(京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学(整形外科学教室))
  • 秋岡 親司(京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学)
  • 内山 和彦(京都府立医科大学 消化器内科学教室)
  • 上原 里程(京都府立医科大学 公衆衛生学)
  • 堤 明純(北里大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、小児・成人のアトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患および成人の関節リウマチが、患者および養育者の就労・就学におよぼす影響の現状を調査し、その支援体制を提案し、普及させることである。
アレルギー疾患や関節リウマチの患者やその家族は、疾患の症状により夜間の睡眠障害も含め不規則に生活が障害されるほか、発作や症状悪化への不安、作業や学校での活動上の制限など、就労や就学に支障が生じていると考えられるが、その実態は明らかでない。また、通院などの加療も就労や就学に影響があると考えられる。したがって、アレルギー疾患・関節リウマチの患者や養育者が、疾患と就労・就学を両立させることを支援するには、患者と養育者、教育関係者、職場関係者、医療者への調査により就労・就学への影響の実態を明らかにした上で、就労・就学支援のためのマニュアル、連携資材、ホームページなどを作成することが重要である。あわせて、アレルギー疾患・関節リウマチの診療ガイドラインに基づいた治療やセルフコントロールの方法の普及も必須である。最終年度の3年目は、アレルギー疾患・関節リウマチの患者と養育者に行った記述的質問票と労働・勉学障害率質問票調査から明らかになった問題点を解析し、患者・養育者向け、職場向け、学校向けの両立支援マニュアル「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」を作成し、対象者が本マニュアルに容易にアクセスできるようにすることを目的とする。
研究方法
アレルギー疾患・関節リウマチの患者・養育者を対象に、アレルギー疾患・関節リウマチが就労・就学を主とした日常生活におよぼす影響や治療内容等に関する記述的質問票、患者報告アウトカムによる重症度評価と労働・勉学障害率に関する質問票調査、あるいは教育関係者、産業医、アレルギー疾患・関節リウマチの専門医への半構造的インタビュー調査を行う。患者が学校や職場での生活の中で行うべきアレルギー疾患・関節リウマチ疾患の悪化を防ぐ対策や悪化時・緊急時の対応などを記した職場向けのマニュアルを作成する。小児のリウマチ性疾患については、学校向けのマニュアルを作成する。教育者や職場関係者が所属する施設、全国のアレルギー疾患医療拠点病院などの医療関係者等にこれらの資材を送付し、活用を促す。
結果と考察
アレルギー疾患やリウマチ疾患の患者の労働生産性低下、就職や就労における患者や養育者が抱える問題、治療の現状、職場や学校での配慮が必要な事項、医師から職場や学校に提供すべき情報など、有益な情報が多数得られた。また、アレルギー疾患や関節リウマチの患者や養育者への就労や就学への影響があるにもかかわらず、その支援策が十分でないことがうかがわれた。産業医からは、仕事内容とアレルギーの関連について正確な情報、および具体的な対応策を望む意見が多かったが、すべての医療機関でアレルギー検査をできるわけではなく、検査できる内容にも限りがあることの周知も必要であると思われた。一方で、患者本人の訴えばかりをくみ取って職場の実情や一般的な対応が可能な範囲を超えた就業制限を記載したものや具体的な原因物質が特定されてないことが問題点としてあげられていた。対応する医師にも専門的な知識と経験が必要と考えられるため、アレルギー・リウマチ専門医で、適切な問診や検査をおこない、診断書を作成することが望ましいと思われた。
結論
現状と課題を踏まえて、患者・養育者向け、職場向け、学校向けの両立支援マニュアル「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」を作成し、アレルギ・ポータルに公表するとともに、全国のアレルギー疾患医療拠点病院や産業保健総合支援センター、労災病院に送付した。就労・就学のため治療機会を逃すことなく、また治療の必要性を理由として就労・就学の継続が妨げられることなく適切な治療を受けることができるよう、本マニュアルが広く活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
2021-07-19

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202013001B
報告書区分
総合
研究課題名
アレルギー疾患の患者および養育者の就労・就学支援を推進するための研究
課題番号
H30-免疫-一般-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 則人(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 益田 浩司(京都府立医科大学 医学部)
  • 峠岡 理沙(京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学)
  • 安田 誠(京都府立医科大学 医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室)
  • 土屋 邦彦(京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学)
  • 金子 美子(京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
  • 小田 良(京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学(整形外科学教室))
  • 秋岡 親司(京都府立医科大学大学院医学研究科小児科学)
  • 内山 和彦(京都府立医科大学 消化器内科学教室)
  • 上原 里程(京都府立医科大学 公衆衛生学)
  • 堤 明純(北里大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、小児・成人のアトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患および成人の関節リウマチが、患者および養育者の就労・就学におよぼす影響の現状を調査し、その支援体制を提案し、普及させることである。
アレルギー疾患や関節リウマチの患者やその家族は、疾患の症状により夜間の睡眠障害も含め不規則に生活が障害されるほか、発作や症状悪化への不安、作業や学校での活動上の制限など、就労や就学に支障が生じていると考えられるが、その実態は明らかでない。また、通院などの加療も就労や就学に影響があると考えられる。したがって、アレルギー疾患・関節リウマチの患者や養育者が、疾患と就労・就学を両立させることを支援するには、患者と養育者、教育関係者、職場関係者、医療者への調査により就労・就学への影響の実態を明らかにした上で、就労・就学支援のためのマニュアル、連携資材、ホームページなどを作成することが重要である。あわせて、アレルギー疾患・関節リウマチの診療ガイドラインに基づいた治療やセルフコントロールの方法の普及も必須である。最終年度の3年目は、アレルギー疾患・関節リウマチの患者と養育者に行った記述的質問票と労働・勉学障害率質問票調査から明らかになった問題点を解析し、患者・養育者向け、職場向け、学校向けの両立支援マニュアル「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」を作成し、対象者が本マニュアルに容易にアクセスできるようにすることを目的とする。
研究方法
アレルギー疾患・関節リウマチの患者・養育者を対象に、アレルギー疾患・関節リウマチが就労・就学を主とした日常生活におよぼす影響や治療内容等に関する記述的質問票、患者報告アウトカムによる重症度評価と労働・勉学障害率に関する質問票調査、あるいは教育関係者、産業医、アレルギー疾患・関節リウマチの専門医への半構造的インタビュー調査を行う。患者が学校や職場での生活の中で行うべきアレルギー疾患・関節リウマチ疾患の悪化を防ぐ対策や悪化時・緊急時の対応などを記した職場向けのマニュアルを作成する。小児のリウマチ性疾患については、学校向けのマニュアルを作成する。教育者や職場関係者が所属する施設、全国のアレルギー疾患医療拠点病院などの医療関係者等にこれらの資材を送付し、活用を促す。
結果と考察
アレルギー疾患やリウマチ疾患の患者の労働生産性低下、就職や就労における患者や養育者が抱える問題、治療の現状、職場や学校での配慮が必要な事項、医師から職場や学校に提供すべき情報など、有益な情報が多数得られた。また、アレルギー疾患や関節リウマチの患者や養育者への就労や就学への影響があるにもかかわらず、その支援策が十分でないことがうかがわれた。産業医からは、仕事内容とアレルギーの関連について正確な情報、および具体的な対応策を望む意見が多かったが、すべての医療機関でアレルギー検査をできるわけではなく、検査できる内容にも限りがあることの周知も必要であると思われた。一方で、患者本人の訴えばかりをくみ取って職場の実情や一般的な対応が可能な範囲を超えた就業制限を記載したものや具体的な原因物質が特定されてないことが問題点としてあげられていた。対応する医師にも専門的な知識と経験が必要と考えられるため、アレルギー・リウマチ専門医で、適切な問診や検査をおこない、診断書を作成することが望ましいと思われた。
結論
現状と課題を踏まえて、患者・養育者向け、職場向け、学校向けの両立支援マニュアル「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」を作成し、アレルギ・ポータルに公表するとともに、全国のアレルギー疾患医療拠点病院や産業保健総合支援センター、労災病院に送付した。就労・就学のため治療機会を逃すことなく、また治療の必要性を理由として就労・就学の継続が妨げられることなく適切な治療を受けることができるよう、本マニュアルが広く活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
2021-07-19

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202013001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アレルギー疾患・関節リウマチの患者やその家族は、疾患の症状や通院などの加療により就労や就学に支障が生じていると考えられるが、その実態を明らかにし、患者や養育者が、疾患と就労・就学を両立させることを支援するマニュアルを方策を作成し、このたび改訂した。研究内容を第121回日本皮膚科学会総会で発表した。
臨床的観点からの成果
産業医や学校との連携における問題点を明らかにし、それを解決するためのマニュアルや連携資材を改訂したことから、今後さらに臨床において就労や就学との連携がスムーズに進むことが期待される。
ガイドライン等の開発
「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」の改訂版を作成し、公表した。
その他行政的観点からの成果
「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」の中の医療機関と事業所の連携の際に使用できる書類を活用することによって、よりスムーズな連携が進むことが期待される。
その他のインパクト
「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」を改訂しし、アレルギー・ポータル (https://allergyportal.jp/)に公表しフリーに閲覧やダウンロードをすることを可能にした。

発表件数

原著論文(和文)
28件
原著論文(英文等)
80件
その他論文(和文)
25件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
89件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」作成、インターネット上に公表

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Katoh N, Ohya Y, Murota H, et al.
Safety and efficacy of upadacitinib for atopic dermatitis in Japan: 2-year interim results from the phase 3 Rising Up study.
Dermatol Ther (Heidelb) , 13 ( ) , 221-234  (2023)
10.1007/s13555-022-00842-7
原著論文2
Zuberbier T, Beck L, Bedbrook A, et al.
Developing integrated care pathways for atopic dermatitis-challenges and unmet needs.
Clin Transl Allergy , 13 , e12236-  (2023)
10.1002/clt2.12236
原著論文3
Wollenberg A, Kircik L, Simpson EL, et al.
Pooled analysis of baricitinib tolerability in patients with atopic dermatitis in relation to acne, headache, and gastrointestinal events from 8 clinical trials.
Dermatitis  (2023)
10.1089/derm.2022.0027
原著論文4
Simpson EL, Papp KA, Blauvelt A, et al.
Efficacy and safety of once-daily upadacitinib in adolescents and adults with moderate-to-severe atopic dermatitis: week-52 results from the phase 3, randomized, double-blind, monotherapy, placebo-controlled Measure Up 1 and Measure Up 2 studies.
JAMA Dermatol , 158 , 404-413  (2022)
10.1001/jamadermatol.2022.0029
原著論文5
Maeno M, Tamagawa-Mineoka R, Arakawa Y, et al.
Increased plasma miR-24 and miR-191 levels in patients with severe atopic dermatitis: Possible involvement of platelet activation.
Clin Immunol , 237 , 108983-  (2022)
10.1016/j.clim.2022.108983
原著論文6
Maruyama A, Sawa T, Teramukai S, et al.
Adverse reactions of the first and second dose of Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine in healthcare workers in Japan.
J Infect Chemother , 28 , 934-942  (2022)
10.1016/j.jiac.2022.03.015
原著論文7
Katoh N, Saeki H, Kataoka Y, et al.
Evaluation of standard treatments for managing Japanese adult patients with moderate-to-severe atopic dermatitis: 2-year data from the ADDRESS-J disease registry.
J Dermatol , 108 , 108775-  (2022)
10.1111/1346-8138.16485
原著論文8
大堀侑紀、峠岡理沙、益田浩司、他.
アトピー性皮膚炎患者およびその養育者の就労・就学に与える影響の調査
日本皮膚科学会雑誌 , 印刷中  (2024)

公開日・更新日

公開日
2021-06-02
更新日
2024-05-23

収支報告書

文献番号
202013001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,966,000円
(2)補助金確定額
4,383,164円
差引額 [(1)-(2)]
1,582,836円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 669,020円
人件費・謝金 465,807円
旅費 5,460円
その他 1,866,877円
間接経費 1,376,000円
合計 4,383,164円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-