難治性聴覚障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
202011080A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
20FC1048
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、①聴覚障害という同一の臨床症状を示す疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、②各疾患の患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。本研究では、指定難病である若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、鰓耳腎症候群およびその類縁疾患について、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
令和2年度は、若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群、遅発性内リンパ水腫、に加えワーデンブルグ症候群と鰓耳腎症候群の症例登録レジストリを開発するとともに、全国の拠点医療機関に属する分担研究者および研究協力者より、これら疾患の患者データを臨床情報データベース(症例登録レジストリ)に収集し、疾患ごと臨床的所見(臨床像・随伴症状など)の詳細な検討を行なった。
結果と考察
若年発症型両側性感音難聴患者に関しては、常染色体優性遺伝形式をとる原因遺伝子が多く、臨床では家族歴の聴取が重要であることが示された。遺伝学的検査が行われていた症例は全体の75%(666症例)で、現在の診断基準に含まれる7遺伝子に変異が同定されている症例が25%(165症例)を占めていたのに対し、それ以外の遺伝子に変異が同定されている症例が22%(141症例)であった。その他の原因遺伝子のうちEYA4、MYO6、MYO15A、POU4F3遺伝子の4遺伝子の変異は同定される頻度が高く、また遅発性進行性の難聴を呈することが明らかとなったことより、診断基準の改定を行った。また、診断基準改定に関して学会承認を得た。
アッシャー症候群に関しては、サブタイプ別の頻度とその原因遺伝子が明らかとなり、難聴や視覚障害に対する今後の介入方法の検討に資する結果が得られた。アッシャー症候群は特徴的な臨床症状があり、なおかつ原因遺伝子の検出率が高いことから、早急な遺伝学的検査の保険収載とガイドラインの策定、および申請のための啓蒙活動が必要であると考えられる。また、サブタイプ別に、難聴の症状、進行の程度は様々であった。そのため補聴器や人工内耳などの治療オプションも幅広く検討されるべきであると考えられた。
遅発性内リンパ水腫の疫学的特徴として、確実例と疑い例がほぼ同等であること、同側型が全体の2/3を占めること、先行する高度難聴は10歳未満に多いこと、高度難聴の原因は、原因不明、突発性難聴、ムンプスの順であること、DEHの発症年齢は10歳台から70歳台まで幅広く分布していることが明らかとなった。また、全国区疫学調査の結果、本疾患の総推定患者数は764人、男性推定患者数は312人であることが推定された。
ワーデンブルグ症候群および鰓耳腎症候群は、症例登録レジストリを開発するとともに運用を開始した。両疾患ともに、難聴だけでなく特徴的な随伴症状(例えば、WSの色素異常や、BOR症候群の鰓原性奇形や腎奇形)があり、また原因となる遺伝子が同定される頻度が高いため、遺伝学的検査の普及とそのための啓蒙活動が必要であると考えられる。
結論
本年度から症例登録を開始した疾患だけでなく、症例登録レジストリにを運用している疾患について、今後さらなる症例の集積し、そのデータに基づき、さらに詳細な検討を行う必要があるだろう。それを通して得られた成果は、各疾患の発症メカニズムの解明や、今後の新たな治療法開発のための重要な基盤情報となること考えられ得る。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011080Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
36,000,000円
(2)補助金確定額
36,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 17,360,278円
人件費・謝金 6,698,960円
旅費 1,451,757円
その他 2,194,111円
間接経費 8,300,000円
合計 36,005,106円

備考

備考
自己資金 5,106円

公開日・更新日

公開日
2022-02-24
更新日
-