文献情報
文献番号
202011079A
報告書区分
総括
研究課題名
自己炎症性疾患とその類縁疾患の全国診療体制整備、移行医療体制の構築、診療ガイドライン確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20FC1047
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
西小森 隆太(久留米大学 医学部小児科)
研究分担者(所属機関)
- 井澤 和司(京都大学大学院医学研究科発達小児科学講座)
- 石村 匡崇(九州大学病院総合周産期母子医療センター(小児科))
- 井田 弘明(久留米大学 医学部 呼吸器・神経・膠原病内科)
- 伊藤 秀一(横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学)
- 今井 耕輔(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 茨城県小児・周産期地域医療学講座)
- 大西 秀典(岐阜大学大学院医学系研究科 小児科学)
- 岡田 賢(広島大学大学院医系科学研究科 小児科学)
- 小原 收(かずさDNA研究所 ゲノム事業推進部)
- 金澤 伸雄(兵庫医科大学 医学部)
- 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院 発生発達病態学分野)
- 河合 利尚(国立成育医療研究センター 成育遺伝研究部)
- 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻)
- 神戸 直智(京都大学 医学研究科 皮膚科学)
- 岸田 大(信州大学 医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)
- 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座 小児病態学分野)
- 杉浦 一充(藤田保健衛生大学 医学部)
- 高田 英俊(筑波大学 医学医療系)
- 武井 修治(鹿児島大学 医学部 保健学科)
- 野々山 恵章(防衛医科大学校 医学教育部医学科小児科学講座)
- 平家 俊男(京都大学 大学院医学研究科)
- 右田 清志(福島県立医科大学 医学部)
- 宮前 多佳子(東京女子医科大学 医学部)
- 向井 知之(川崎医科大学 免疫学)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野)
- 八角 高裕(京都大学大学院医学研究科発達小児科学)
- 山田 雅文(北海道大学大学院医学研究院小児科学教室)
- 和田 泰三(金沢大学医薬保健研究域医学系小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,693,000円
研究者交替、所属機関変更
該当せず
研究報告書(概要版)
研究目的
自己炎症性疾患は、自然免疫系遺伝子異常で発症する、全身炎症や多臓器障害を呈する稀少疾患群である。平成29-令和元年度“自己炎症性疾患とその類縁疾患の全国診療体制整備、重症度分類、診療ガイドライン確立に関する研究”班で、①自己炎症性疾患診療ガイドライ2017発刊、②日本免疫不全・自己炎症学会(JSIAD)と連携した保険診療による遺伝子検査体制整備、③WEBでの医師相談窓口の開設、④未保険収載遺伝子の研究による遺伝子解析系構築の開始、⑤難病プラットフォームでの患者登録体制構築、⑥ブラウ症候群、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)で患者数把握の完了、⑦慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)の全国疫学調査開始、⑧エビデンスの乏しい超稀少疾患の診療フローチャート作成、を行った。しかし、ガイドライン未整備疾患の存在、保険診療未対応遺伝子解析体制、患者登録、非遺伝性疾患の全国疫学調査等、が未達成である。以上の問題に取り組むべく、1)保険未収載疾患の遺伝子解析体制構築、2)国際遺伝子診断ガイドラインを基に本邦ガイドライン作成、3)遺伝子診断体制の整備、4)難病プラットフォームによる患者登録、5)新規疾患を含む診療ガイドライン等の作成・改訂、6)移行期医療指針の提案、7)WEBサイトによる疾患啓発、を行う。さらに難病プラットフォームを活用、患者アンメットニーズ等のエビデンスを前方視的に集積、診療ガイドラインへ反映させる。
本研究の独創的な点は、地域拠点病院に所属する自己炎症性疾患を専門とする、小児科・内科・皮膚科医師等と疫学統計の専門家が研究分担者に加わり、地域に根ざした小児から成人まで対応する診療体制とエビデンスに基づいた診療ガイドイランの作成を可能とする事である。また患者情報・検体により、他の横断的・創薬の研究班と連携し、自己炎症性疾患の診療エビデンス構築のみならず、自然科学発展に寄与する。このような包括的研究は国内・国外を通して存在せず、国民に対する質の高い医療の提供が期待できる。
本研究の独創的な点は、地域拠点病院に所属する自己炎症性疾患を専門とする、小児科・内科・皮膚科医師等と疫学統計の専門家が研究分担者に加わり、地域に根ざした小児から成人まで対応する診療体制とエビデンスに基づいた診療ガイドイランの作成を可能とする事である。また患者情報・検体により、他の横断的・創薬の研究班と連携し、自己炎症性疾患の診療エビデンス構築のみならず、自然科学発展に寄与する。このような包括的研究は国内・国外を通して存在せず、国民に対する質の高い医療の提供が期待できる。
研究方法
1)診療体制整備・移行期医療の指針作成、2)患者登録システムの推進・全国調査、3)診療ガイドライン/フローチャート作成 、4) 遺伝子検査の臨床的妥当性、有用性の評価と遺伝子診断に関する研究、を行う。
結果と考察
1)自己炎症性疾患の診療体制の整備、移行期医療に関する研究
JSIADと連携、保険診療による遺伝子解析結果に対する専門医による診断、WEBでの医師への患者相談・コンサルト事業を継続して行った。小児・成人をシームレスに診療する体制構築のため、CAPSと家族性地中海熱の移行医療指針、遺伝に関するガイドを作成した。アンメットニーズを拾い把握するため、厚生労働省“難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究”班(代表、宮前多佳子)と連携、調査票の検討を行った。
2)患者登録システムの推進・全国調査
ブラウ症候群の全国調査を行い論文報告した(Ann Rheum Dis. 2020)。ADA2欠損症本邦8症例を同定、臨床症状・病態を報告した(J Allergy Clin Immunol. 2021)。 CRMOの全国調査で1次調査を完了、2次調査に移行した。CAPS全国調査を継続中である。また、難病プラットフォームへの患者登録を本格的に開始した。
3)診療ガイドライン/フローチャート作成
PAPA症候群、中條・西村症候群、A20ハプロ不全症の診療ガイドライン作成を開始、スコープが完成した。既存のガイドライン見直しでは、家族性地中海熱、PFAPA症候群に関しては改訂が必要と判断、スコープを作成した。PAAND、NLRP1異常症の診療フローチャートを作成した。
4)遺伝子検査の臨床的妥当性、有用性の評価と遺伝子診断に関する研究
厚生労働省“難病領域における検体検査の精度管理体制の整備に資する研究“班(難波班)と連携、NLRP3の変異情報集積、同検査に関する精度管理の検討を行った。また遺伝子検査結果解釈におけるコンセンサスを得るため、遺伝子解析結果解釈の情報収集を行った。
以上より、自己炎症性疾患診療体制を整備、小児・成人を連続的に診療するための移行医療指針作成した。全国調査も順調に進行中である。難病プラットフォームへの患者登録を本格的に開始、患者登録の推進が期待される。遺伝子変異の集積は進んでいるが、遺伝子変異解釈に関して、議論のある変異では今後コンセンサスを作る必要がある。
JSIADと連携、保険診療による遺伝子解析結果に対する専門医による診断、WEBでの医師への患者相談・コンサルト事業を継続して行った。小児・成人をシームレスに診療する体制構築のため、CAPSと家族性地中海熱の移行医療指針、遺伝に関するガイドを作成した。アンメットニーズを拾い把握するため、厚生労働省“難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究”班(代表、宮前多佳子)と連携、調査票の検討を行った。
2)患者登録システムの推進・全国調査
ブラウ症候群の全国調査を行い論文報告した(Ann Rheum Dis. 2020)。ADA2欠損症本邦8症例を同定、臨床症状・病態を報告した(J Allergy Clin Immunol. 2021)。 CRMOの全国調査で1次調査を完了、2次調査に移行した。CAPS全国調査を継続中である。また、難病プラットフォームへの患者登録を本格的に開始した。
3)診療ガイドライン/フローチャート作成
PAPA症候群、中條・西村症候群、A20ハプロ不全症の診療ガイドライン作成を開始、スコープが完成した。既存のガイドライン見直しでは、家族性地中海熱、PFAPA症候群に関しては改訂が必要と判断、スコープを作成した。PAAND、NLRP1異常症の診療フローチャートを作成した。
4)遺伝子検査の臨床的妥当性、有用性の評価と遺伝子診断に関する研究
厚生労働省“難病領域における検体検査の精度管理体制の整備に資する研究“班(難波班)と連携、NLRP3の変異情報集積、同検査に関する精度管理の検討を行った。また遺伝子検査結果解釈におけるコンセンサスを得るため、遺伝子解析結果解釈の情報収集を行った。
以上より、自己炎症性疾患診療体制を整備、小児・成人を連続的に診療するための移行医療指針作成した。全国調査も順調に進行中である。難病プラットフォームへの患者登録を本格的に開始、患者登録の推進が期待される。遺伝子変異の集積は進んでいるが、遺伝子変異解釈に関して、議論のある変異では今後コンセンサスを作る必要がある。
結論
1)診療体制整備・移行期医療の指針作成、2)患者登録システムの推進・全国調査、3)診療ガイドライン/フローチャート作成、4) 遺伝子検査の臨床的妥当性、有用性の評価と遺伝子診断に関する研究に関して、令和2年度はほぼ予定通りに行われた。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
-