先天異常症候群のライフステージ全体の自然歴と合併症の把握:Reverse phenotypingを包含したアプローチ

文献情報

文献番号
202011078A
報告書区分
総括
研究課題名
先天異常症候群のライフステージ全体の自然歴と合併症の把握:Reverse phenotypingを包含したアプローチ
課題番号
20FC1046
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 洋一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 研究所)
  • 森崎 裕子(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 臨床遺伝科)
  • 仁科 幸子(蓮江 幸子)(国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部 眼科)
  • 松永 達雄(独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター聴覚・平衡覚研究部)
  • 小崎 里華(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 生体防御系内科部遺伝診療科)
  • 青木 洋子(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 森山 啓司(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面頸部機能再建学系 顎顔面機能修復学講座 顎顔面矯正学分野)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 遺伝科)
  • 古庄 知己(国立大学法人信州大学 医学部 遺伝医学教室)
  • 緒方 勤(国立大学法人浜松医科大学 )
  • 齋藤 伸治(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野)
  • 水野 誠司(愛知県医療療育医療総合センター 中央病院遺伝診療科 兼 発達障害研究所遺伝子医療研究部門)
  • 岡本 伸彦(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
  • 松浦 伸也(広島大学原爆放射線医科学研究所)
  • 副島 英伸(国立大学法人佐賀大学 医学部 分子生命科学講座)
  • 吉浦 孝一郎(長崎大学 原爆後障害医療研究所)
  • 沼部 博直(東京医科大学 遺伝子診療センター)
  • 樋野村 亜希子(国立大学法人滋賀医科大学 倫理審査室)
  • 難波 栄二(国立大学法人鳥取大学 研究推進機構)
  • 渡邉 淳(金沢大学附属病院)
  • 加藤 光広(昭和大学 医学部)
  • 増井 徹(国立精神・神経医療研究センター メディカル・ゲノムセンター)
  • 上原 朋子(愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 遺伝子医療研究部)
  • 渡辺 智子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 遺伝子診療部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
31,192,000円
研究者交替、所属機関変更
・所属機関異動 研究分担者 上原朋子 慶應義塾大学医学部(令和2年4月1日~令和2年9月30日) →愛知県医療療育総合センター発達障害研究所・遺伝子医療研究部・非常勤研究員(令和2年10月1日以降) ・職名変更 研究分担者 沼部博直 東京医科大学・遺伝子診療センター・准教授(令和2年4月1日~令和2年6月30日) →東京医科大学・遺伝子診療センター・教授(令和2年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)分子遺伝学的に確定された先天異常症候群について、乳幼児期・成人期後期の臨床情報を収集・解析真の自然歴と合併症を明らかにすることを目的とする。Mindsガイドラインに則り指定難病の診断基準や重症度分類の見直しを図る。
(2)指定難病に類縁する症候群について指定難病としての適格性を評価する。
指定されている18疾患の原因遺伝子と、タンパク相互作用や信号伝達経路の観点から関連する遺伝子群の変異によって惹起される類縁疾患について先天異常症候群(310)としての要件を満たすかどうかを評価する。
(3)Good Registry Practiceに則り各先天異常症候群の自然歴を得る。ヒストン修飾酵素修飾薬・RAS経路阻害剤などシーズの開発が進んでいることから、ライフステージ全体の質の高い自然歴の把握は急務である。
研究方法
(1)全ライフステージを網羅する診断基準への改定
全ライフステージにおいて有効な診断基準となるべく改定することを目的とし、対象疾患について、特に乳幼児期・成人期後期の臨床症状を重点的に収集した。臨床診断が困難な場合は、AMED未診断疾患イニシアチブ(IRUD)研究事業等で遺伝子解析を利用して後方視的に情報収集を行った。先行研究や海外における研究成果との比較を行った。
(2)指定難病に類縁する症候群の指定難病としての適格性の評価
対象疾患の原因遺伝子以外の遺伝子に変異を認めた場合に、それぞれの遺伝子の蛋白相互作用などから、対象疾患の類縁疾患と考えられる症例を対象として臨床情報を収集した。
(3)乳児期から成人までの全自然歴を網羅した疾患レジストリの構築
疾患毎に患者ベースのレジストリを構築するため、今年度は全自然歴を網羅するため、外来診療等を通じて臨床情報の収集を行った。
結果と考察
1.全ライフステージを網羅する診断基準への改訂
CHARGE症候群の乳児における難聴の特徴や経過について検討した。多様な難聴の診断と治療・知的発達の遅れへの対応を生後早期から考慮することが重要であると考えられた。
ヌーナン症候群及びその類縁疾患患者と養育者に対して臨床像の検討を行った。MAPK1遺伝子が新たな原因遺伝子と考えられること、新規に原因遺伝子と報告されたRREB1遺伝子についてはさらなる検討が必要であること、原因遺伝子の一つとされてきたA2ML1遺伝子については疑義があることが示された。HRASの重症型について臨床症状の検討を行った。脊髄神経根の腫大や関節拘縮を伴う成人患者の詳細な症状の検討を行った。
ルビンシュタイン・テイビ症候群の患者が長期的には緑内障などの眼科的異常や整形外科的問題を高率に合併することをみいだした。
遺伝学的検査も併用して歌舞伎症候群患者の臨床情報を収集した。臨床的・遺伝学的な多様性を示した。約20%に頭蓋縫合早期癒合症が合併することを示した。
ソトス症候群における側弯の頻度について検討し、NSD1欠失を有する患者に高頻度であることが示された。エーラス・ダンロス症候群、コフィン・シリス症候群の遺伝学的検査を行い、非典型症例についての情報収集を行った。モワット・ウィルソン症候群の患者の疾患特異的表現型について検討した。ベックウィズ・ヴィーダマン症候群の患者について、スコアリングシステム及び遺伝学的検査を用いて検討した。ハーラマン・ストライフ症候群の患者の臨床像について情報収集した。
脆弱X症候群及びその関連疾患について臨床像を調査した。鑑別診断の内容と遺伝学的検査の内容等について診断基準の修正を行った。
早老症を呈するMVA症候群の新規原因遺伝子としてCDC20が明らかになるとともに、MVA症候群の診療ガイドラインの改訂が求められた。
2.指定難病に類縁する症候群の指定難病としての適格性の評価
顎顔面領域に構造異常を認める先天異常症候群患者から顎・顔面・口腔の硬軟組織形態の情報を採得した。Prader-Willi症候群類似表現型患者の解析によりTemple症候群、Schaaf-Yang症候群及び染色体微細欠失症候群が含まれていた。Angelman症候群類似表現型の患者により、Rett症候群、Pitt-Hopkins症候群、Christianson症候群が含まれていた。
BWSpスコアリングシステムを用いたスコア別分類と原因遺伝子異常および臨床症状の比較を行った。脳形成異常を有する患者のうち、透明中隔または目の異常を伴う患者について疾患背景と遺伝学的検査を行い検討した。
結論
今年度の研究成果に基づき、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、CASK異常症、ピット・ホプキンズ症候群について診断基準を策定したうえで、指定難病として申請した。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2021-09-07

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011078Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,499,000円
(2)補助金確定額
38,704,000円
差引額 [(1)-(2)]
795,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,860,227円
人件費・謝金 5,968,682円
旅費 54,740円
その他 11,514,053円
間接経費 8,307,000円
合計 38,704,702円

備考

備考
収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」に差異は、自己資金697円と利息5円の合計による差異です。

公開日・更新日

公開日
2022-01-25
更新日
-