文献情報
文献番号
202011074A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児消化器疾患の医療水準向上および移行期・成人期のQOL向上に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20FC1042
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
田口 智章(学校法人福岡学園 福岡医療短期大学)
研究分担者(所属機関)
- 松藤 凡(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
- 中島 淳(横浜市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学)
- 武藤 充(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 金森 豊(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部外科・診療部長(主任))
- 吉丸 耕一朗(国立大学法人九州大学 医学研究院)
- 家入 里志(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 小児外科学分野)
- 小幡 聡(九州大学 大学病院)
- 黒田 達夫(慶應義塾大学 医学部)
- 内田 恵一(三重大学医学部附属病院 小児外科)
- 松本 主之(岩手医科大学医学部 内科学講座消化器内科消化管分野)
- 加藤 聖子(九州大学大学院医学研究院 生殖病態生理学)
- 木下 義晶(新潟大学大学院医歯学総合研究科小児外科)
- 江頭 活子(九州大学病院)
- 浅沼 宏(慶應義塾大学 医学部)
- 虫明 聡太郎(近畿大学医学部奈良病院 小児科)
- 新井 勝大(国立成育医療研究センター 消化器科)
- 水落 建輝(久留米大学医学部小児科)
- 虻川 大樹(宮城県立こども病院 総合診療科)
- 工藤 孝広(順天堂大学 小児科)
- 田尻 達郎(京都府立医科大学 大学院医学研究科小児外科学 小児外科学)
- 臼井 規朗(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 小児外科)
- 奥山 宏臣(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 小児成育外科学)
- 仁尾 正記(東北大学 大学院医学系研究科)
- 松浦 俊治(九州大学 医学研究院)
- 藤野 明浩(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部 外科)
- 野坂 俊介(独立行政法人 国立成育医療研究センター 放射線診療部 放射線診断科)
- 八木 実(久留米大学医学部外科学講座小児外科部門)
- 川原 央好(浜松医科大学 小児外科)
- 越永 從道(日本大学 医学部)
- 藤代 準(東京大学 医学部附属病院)
- 渕本 康史(国立成育医療研究センター(臓器・運動器病態外科部外科))
- 廣瀬 龍一郎(福岡大学 医学部外科学講座 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科)
- 尾花 和子(埼玉医科大学小児外科)
- 掛江 直子(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 成育政策科学研究部 成育保健政策科学研究室)
- 窪田 満(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部)
- 森 正樹(九州大学大学院消化器・総合外科)
- 桐野 浩輔(九州大学 大学病院小児外科)
- 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 北岡 有喜(独立行政法人国立病院機構京都医療センター 医療情報部)
- 小林 徹(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 臨床研究センター 企画運営部 部長)
- 小田 義直(九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学)
- 義岡 孝子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病理診断部)
- 増本 幸二(筑波大学 医学医療系 臨床医学域 小児外科)
- 米倉 竹夫(近畿大学 医学部 奈良病院)
- 上野 豪久(大阪大学医学系研究科 小児成育外科)
- 大賀 正一(九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野)
- 猪股 裕紀洋(熊本大学 大学院 医学薬学研究部)
- 岡 暁子(福岡歯科大学 口腔歯学部)
- 玉井 浩(大阪医科大学 医学部)
- 中村 友彦(地方独立行政法人長野県立病院機構長野県立こども病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児期から移行期・成人期にまたがる希少難治性消化管疾患では、治療に難渋して長期的な経過を辿る症例が多く、患者のQOLが長期にわたり著しく脅かされている。これらの疾患に対し適切な医療政策を施行していくためには、実態と問題の把握と診断基準や診療ガイドラインの整備、小児期・移行期・成人期を包括した診療体制の構築が必要である。本研究では、『小児と成人を一体的に研究・診療できる体制づくり』を目指し、上記に該当する12の疾患についての多面的な政策研究を遂行する。
研究方法
疾患ごとに研究グループを構築し、疾患の状況に応じた問題設定を行い作業を進める。同時に疾患横断的なグループを構成して情報提供や検証を行い、研究の質の向上を図る。
結果と考察
ヒルシュスプルング病類縁疾患:H類縁(指定難病)
臨床情報に紐づく病理組織標本の収集と中央病理診断体制の構築、全国の患者を対象とした遺伝情報収集と遺伝子診断に向けた体制構築をすすめ、2021年度に新規レジストリーおよび中央病理診断、研究を目的とした遺伝子診断を開始する見込みとなった。
ヒルシュスプルング病:H病(指定難病)
診療ガイドライン策定へ向けて、本邦におけるエビデンスをを整理するとともに、昨年度までに策定したCQ案やSCOPE案をもとにシステマティックレビューを行い、推奨文の案文を作成した。
乳幼児巨大肝血管腫(指定難病)
診療ガイドライン改定のため策定した新しいCQをもとに、システマティックレビューを継続し、近年注目される新規治療(プロプラノロールやmTOR阻害剤)の有用性についてレビューを追加した。
非特異性多発性小腸潰瘍症(指定難病・小慢)
遺伝子診断を含めた新しい診断基準の策定を行った。成人と小児と共同でデータベースを拡充・維持し、成人研究班との密な連携を強化してトランジション体制の確立に向けた、移行期医療に関する手引き作成の立案を行った。
難治性下痢症(指定難病・小慢 未指定混在)
令和元年度に作成した『難治性下痢症の診断アルゴリズムとその解説』およびその『簡易版』を出版・公開するために、日本小児栄養消化器肝臓学会ガイドライン委員会の審査プロセスを経て内容の修正加筆を行い、改訂版を完成した。
総排泄腔遺残症・外反症・MRKH症候群(指定難病・小慢)
Web会議システムを利用した患者交流会および市民公開講座を開催し、患者の声を積極的に抽出した。小児・成人を問わずあらゆる年代の患者に対し、複数の診療科・複数の職種による包括的な医療提供方法を考案していく方針とした。
仙尾部奇形腫(小慢)
長期予後に関する調査を開始した。倫理手続きを経て国内の小児外科学会認定施設・教育関連施設(A・B)に対して一次調査票を送付し、回答を随時回収した。
短腸症(小慢)
診断基準、重症度区分を作成し、日本外科代謝栄養学会で承認を受けた。難病への疾患追加要望書類を作成し提出した。本邦における診療ガイドライン作成のため、SCOPEを作成し、CQ案を設定、文献検索を開始した。
腹部リンパ管疾患(小慢)
難病助成対象の拡大に向けた提言を行う準備を行った。『血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017』の改定作業が開始となり、腹部リンパ管疾患部を担当することとなった。該当する2つのCQに対してシステマティックレビューを行う準備を行った。
胃食道逆流症(未指定)
実態把握のための全国調査結果を解析した。
先天性食道閉鎖症(未指定)
実態把握のための全国調査結果を解析した。小慢申請の必要性について議論を行った
高位・中間位鎖肛(未指定)
全国調査結果を解析し、問題点の抽出を試みた。
ナショナルセンターとの連携・臨床研究支援
より良い臨床研究を遂行するたもの体制強化を目的として、国立成育医療研究センターの有する臨床・研究・政策機能との連携体制強化について議論を開始した。
臨床情報に紐づく病理組織標本の収集と中央病理診断体制の構築、全国の患者を対象とした遺伝情報収集と遺伝子診断に向けた体制構築をすすめ、2021年度に新規レジストリーおよび中央病理診断、研究を目的とした遺伝子診断を開始する見込みとなった。
ヒルシュスプルング病:H病(指定難病)
診療ガイドライン策定へ向けて、本邦におけるエビデンスをを整理するとともに、昨年度までに策定したCQ案やSCOPE案をもとにシステマティックレビューを行い、推奨文の案文を作成した。
乳幼児巨大肝血管腫(指定難病)
診療ガイドライン改定のため策定した新しいCQをもとに、システマティックレビューを継続し、近年注目される新規治療(プロプラノロールやmTOR阻害剤)の有用性についてレビューを追加した。
非特異性多発性小腸潰瘍症(指定難病・小慢)
遺伝子診断を含めた新しい診断基準の策定を行った。成人と小児と共同でデータベースを拡充・維持し、成人研究班との密な連携を強化してトランジション体制の確立に向けた、移行期医療に関する手引き作成の立案を行った。
難治性下痢症(指定難病・小慢 未指定混在)
令和元年度に作成した『難治性下痢症の診断アルゴリズムとその解説』およびその『簡易版』を出版・公開するために、日本小児栄養消化器肝臓学会ガイドライン委員会の審査プロセスを経て内容の修正加筆を行い、改訂版を完成した。
総排泄腔遺残症・外反症・MRKH症候群(指定難病・小慢)
Web会議システムを利用した患者交流会および市民公開講座を開催し、患者の声を積極的に抽出した。小児・成人を問わずあらゆる年代の患者に対し、複数の診療科・複数の職種による包括的な医療提供方法を考案していく方針とした。
仙尾部奇形腫(小慢)
長期予後に関する調査を開始した。倫理手続きを経て国内の小児外科学会認定施設・教育関連施設(A・B)に対して一次調査票を送付し、回答を随時回収した。
短腸症(小慢)
診断基準、重症度区分を作成し、日本外科代謝栄養学会で承認を受けた。難病への疾患追加要望書類を作成し提出した。本邦における診療ガイドライン作成のため、SCOPEを作成し、CQ案を設定、文献検索を開始した。
腹部リンパ管疾患(小慢)
難病助成対象の拡大に向けた提言を行う準備を行った。『血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017』の改定作業が開始となり、腹部リンパ管疾患部を担当することとなった。該当する2つのCQに対してシステマティックレビューを行う準備を行った。
胃食道逆流症(未指定)
実態把握のための全国調査結果を解析した。
先天性食道閉鎖症(未指定)
実態把握のための全国調査結果を解析した。小慢申請の必要性について議論を行った
高位・中間位鎖肛(未指定)
全国調査結果を解析し、問題点の抽出を試みた。
ナショナルセンターとの連携・臨床研究支援
より良い臨床研究を遂行するたもの体制強化を目的として、国立成育医療研究センターの有する臨床・研究・政策機能との連携体制強化について議論を開始した。
結論
研究対象12疾患に関し、既存ガイドラインや診療の手引き等の運用や改定のための作業、新たなガイドライン作成を進捗した。疾患毎の問題に対し横断的な議論をもとに研究計画の立案を行い、新たな調査研究の開始や調査結果からの問題抽出が可能であった。非特異性多発性小腸潰瘍症では小児・成人で同一の新たな診断基準を策定し、一元的データリポジトリを構築して症例を蓄積するとともに、移行期医療に関する手引き作成に着手した。総排泄腔遺残症・外反症では患者会を主体とした意見交換から情報を抽出し、小児・成人を問わずあらゆる年代の患者に対する複数の診療科・複数の職種による包括的な医療提供方法の考案に着手した。このように『小児と成人を一体的に研究・診療できる体制づくり』に向けた新たなアクションを起こした。加えて今後の臨床研究の質の向上に向けた体制強化に関し、有益な議論を行うことができた。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
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