運動失調症の医療水準,患者QOLの向上に資する研究班

文献情報

文献番号
202011073A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の医療水準,患者QOLの向上に資する研究班
課題番号
20FC1041
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(国立大学法人新潟大学 脳研究所脳神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究院)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 石川 欽也(東京医科歯科大学医学部附属病院)
  • 桑原 聡(千葉大学大学院医学研究院神経内科学)
  • 戸田 達史(東京大学)
  • 田中 章景(横浜市立)
  • 勝野 雅央(名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 下畑 享良(岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野)
  • 吉田 邦広(信州大学医学部)
  • 二村 直伸(国立病院機構 兵庫中央病院 神経内科)
  • 花島 律子(東京大学 医学部 神経内科)
  • 和泉 唯信(徳島大学病院 神経内科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学 大学院 総合研究部 医学域)
  • 金谷 泰宏(東海大学医学部基盤診療学系臨床薬理学)
  • 佐々木 征行(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科)
  • 高尾 昌樹(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病院 臨床検査部)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会森之宮病院)
  • 高橋 祐二(国立精神・神経医療研究センター・病院・神経内科)
  • 丸山 博文(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 渡辺 宏久(藤田医科大学 脳神経内科)
  • 池田 佳生(群馬大学大学院医学系研究科 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
26,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
変性機序による運動失調症とくに脊髄小脳変性症・多系統萎縮症・脳表ヘモジデリン沈着症について、医療基盤の構築と医療水準、患者QOLの向上を目的とし、オールジャパン体制で、①小児例を含めた実態調査、②発症前診断、早期診断システムの確立、③失調全般および疾患毎の症状評価方法の確立、④欧米研究組織との連携強化と、国際治験推進の基盤作り、⑤既存の薬物療法、リハビリテーション療法、進行期治療方法の標準化、⑥早期診断もしくは重症度の判定に資するバイオマーカー研究の推進、⑦生体試料研究の基盤整備、⑧既存レジストリの拡充整備、を実施する。
研究方法
各目的に応じた方法を用いた。
結果と考察
脊髄小脳変性症については、全国的な脊髄小脳失調症のレジストリーとしてJ-CATで,家族性 860 例(54.5%)、孤発性 625 例(39.6%)、不明 94 例(6%)である。MJD、SCA6、DRPLA の 3 疾患での発症年齢とリピート数の分布について検討した。SCA6 に関しては、比較的高齢発症で CAG リピートは比較的均一であった。MJD と比べ、DRPLA では発症年齢の分布に広がりある点と 2 峰性の分布である点が特徴的であった。J-CAT 登録情報を活用して、IDCA(特発性小脳萎縮症) 候補症例の抽出を行い48 例であった。JASPACではこれまでにHSP 623例の解析を行った。現在までに既知の遺伝子変異を同定できたのは336例 (53.9%) である。症状評価方法として、上肢の運動失調を評価するため、ヘッドマウントディスプレイである Oculus Rift とハンドトラッキングデバイスである Leap Motion を組み合わせた方法を開発した。また手袋型デバイスである Hi5 VR Glove を用いた方法も開発した。また構音動態を定量評価する、解析方法も開発した。 欧米研究組織との連携としては、ARCA、EuroSCAとの国際連携を推進するためZOOMによる国際会議に参加した。治療法の標準化では、集中リハビリプログラムの実態を調査した。集中リハは多面的なアプローチによって構成されていた。多系統萎縮症については、北海道にて、MSA 診断基準の確認など概要調査を行った。また新潟での調査でMSA-C の発症年齢が有意に高齢化していた。早期診断システムとして、individual voxel-based morphometry adjusting covariates (iVAC) において年齢、性別、頭蓋内容積を共変量として採択し、これらの影響を考慮した個別脳容積画像を検討し、MSA-PとPDの鑑別では感度95.0%、特異度96.2%であった。セロトニンの可視化については、一般診療で行われているドパミントランスポーター画像において、注射後3時間で撮像すること、半値幅を調整して分解能を高めること、更に撮像方法の最適化を重ねることなどにより可視化を試み、全例において肉眼的に中脳から橋にかけて集積を確認できる条件設定が可能となった。 MSA の予後因子を人工知能 B3(Hitachi)により解析を試みた。AUC は 0.975 と極めて高い精度が示された。治療法の標準化としては、TPPVを装着されなかった症例の平均発症年齢は58歳で、発症から死亡までの平均期間は12年。TPPVを装着された症例の平均発症年齢は55歳で、発症から死亡までの平均期間は16年であった。TPPV装着により予後延長の可能性が考えられる。TPPV装着後は肺炎以外の感染症で死亡する割合が高い。TPPV を装着しても突然死のリスクはある。集中リハにおけるリハプログラムの標準化を図るため、その実態を調査した。バイオマーカーについては、発症 2 年以内の MSA-CにsT1w/T2w 比マップを作成し、中小脳脚 sT1w/T2w 比値を算出した。 脳表ヘモジデリン沈着症については、臨床的にCBSを呈した症例の病理を報告した。
結論
①、②の成果は、遺伝性疾患の核酸、遺伝子治療に於ける、発症前診断等の倫理的問題や、経済や社会的諸問題に対処する上でのプロトタイプとなり、厚生労働行政に、治療体制整備、疾患のスクリーニング体制、治療前後でのカウンセリング体制などにおいて提言を与える。①、③、④、⑥、⑦、⑧の成果は、企業治験を推進する波及効果が望まれる。また⑤の成果は、希少疾患に対するリハビリテーションのエビデンス作成に資する。既存レジストリの拡充により、平等な医療機会を与える体制が整備され、難病施策を平等に広めるプロトタイプとなりうる。小児から成人までを対象とするため、難病の移行期医療提供体制についても成果の活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011073Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
34,999,000円
(2)補助金確定額
34,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 15,261,563円
人件費・謝金 1,670,447円
旅費 63,473円
その他 9,956,132円
間接経費 8,076,000円
合計 35,027,615円

備考

備考
自己資金 28,613円を充当し、課題遂行に努めた。一部利息
利息 2円が付いた。

公開日・更新日

公開日
2021-12-24
更新日
-