文献情報
文献番号
202011071A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少てんかんに関する包括的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20FC1039
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
井上 有史(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 浜野 晋一郎(埼玉県立小児医療センター 神経科)
- 福山 哲広(信州大学医学部新生児学・療育学講座)
- 本田 涼子(国立病院機構長崎医療センター)
- 池田 昭夫(京都大学 大学院医学研究科 脳病態生理学講座 臨床神経学分野)
- 今井 克美(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター てんかん科)
- 石井 敦士(福岡大学医学部小児科学教室)
- 伊藤 進(東京女子医科大学 小児科)
- 神 一敬(東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野)
- 嘉田 晃子(国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)
- 柿田 明美(新潟大学 脳研究所)
- 加藤 光広(昭和大学 医学部)
- 川合 謙介(自治医科大学)
- 九鬼 一郎(大阪市立総合医療センター 小児神経内科)
- 小林 勝弘(岡山大学病院 小児神経科)
- 松石 豊次郎(久留米大学高次脳疾患研究所)
- 松尾 健(東京都立神経病院 脳神経外科)
- 青天目 信(大阪大学大学院医学系研究科)
- 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
- 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター 臨床研究企画部 臨床疫学研究室)
- 齋藤 貴志(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経診療部)
- 佐久間 啓(公益財団法人東京都医学総合研究所 脳発達・神経再生研究分野)
- 白石 秀明(北海道大学病院)
- 白水 洋史(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院 脳神経外科)
- 菅野 秀宣(順天堂大学 医学部)
- 高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治に経過するてんかん(20-30%)は稀少な症候群あるいは原因疾患によるものが多く、乳幼児・小児期にてんかん性脳症を来たし発達を重度に障害することがあり、また難治な発作は日常・社会生活に著しい支障を生じるため、適切な診療体制の普及と有効な治療法の開発、および予防とケアシステムの確立が喫緊の課題である。稀少てんかんの指定難病はこれらの代表的疾患である。
研究方法
当班は、先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、片側巨脳症、限局性皮質異形成、神経細胞移動異常症、ドラベ症候群、海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群、ウエスト症候群、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、片側痙攣片麻痺てんかん症候群、環状20番染色体症候群、ラスムッセン脳炎、PCDH19関連症候群、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症、ランドウ・クレフナー症候群、スタージ・ウェーバー症候群、アンジェルマン症候群、進行性ミオクローヌスてんかんを担当しており、疾患概要、診断基準、重症度分類を検証、診療ガイドライン作成に取り組んだ。
結果と考察
今年度より担当したアンジェルマン症候群については実態調査のため全国の専門医にアンケートを送付した。指定難病の10疾患(アイカルディ症候群、片側巨脳症、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、環状20番染色体症候群、PCDH19関連症候群、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症)とその他の2疾患(ビタミンB6依存性てんかん、視床下部過誤腫症候群)を小児慢性特定疾病に申請した。小児期から発病するこれらの疾患につき、他疾患と同様の処遇を求めるためである。また、指定難病に新たに1疾患(視床下部過誤腫症候群)を申請した。さらに指定難病につき、通知の変更に関する調査票(要望)を提出した。レノックス・ガストー症候群、ウエスト症候群、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかんについては、医師および患者に誤解を招かないように、また指定難病登録が円滑にすすむように、概要の大幅な修正を申請した。スタージ・ウェーバー症候群については、学会承認による診断基準と重症度分類の大きな変更を要請した。
指定難病以外の7疾患(自己免疫介在性脳炎・脳症、異形成性腫瘍、CDKL5遺伝子関連てんかん、血管奇形に伴うてんかん、ビタミンB6依存性てんかん、欠神を伴う眼瞼ミオクローヌス、外傷によるてんかん、各種遺伝子変異を持ちてんかんを発症する先天異常症候群)についても病状を分析し、ビタミンB6依存性てんかんと欠神を伴う眼瞼ミオクローヌスではアンケート調査を行い、診断基準案の作成を考慮中である。レット症候群や結節性硬化症についてもてんかんの側面から研究をすすめている。
3疾患(先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、神経細胞移動異常症)についてCQ作成、システマティックレビューを完了し、診療ガイドライン案を作成した。他の疾患についてもすすめている。
疾患レジストリでは、横断的疫学研究を継続した。現在までに3194症例が登録され、今後、二次調査も予定している。死因研究のレジストリを継続し、62症例が登録され、突然死が3割を占めていた。てんかん難病にかかわる遺伝子解析結果をジストリに積極的に登録することとし、既知遺伝子として 166 遺伝子を抽出し、クリニカルエクソーム解析の結果を登録する準備を整えた。
移行医療および地域難病ケアシステムの構築について研究をすすめた。成長に応じた心身の変化に対応する体制、地域内の病院間格差の是正、疾病学習や啓発活動の重要性を考察した。ケトン食についての全国調査、患者家族会と溺水(入浴および水泳)に関するアンケート調査も行った。次年度に結果を解析する。なお、AMED班の医師主導治験の対照研究を行い、科学的に妥当な結果を得た。
指定難病以外の7疾患(自己免疫介在性脳炎・脳症、異形成性腫瘍、CDKL5遺伝子関連てんかん、血管奇形に伴うてんかん、ビタミンB6依存性てんかん、欠神を伴う眼瞼ミオクローヌス、外傷によるてんかん、各種遺伝子変異を持ちてんかんを発症する先天異常症候群)についても病状を分析し、ビタミンB6依存性てんかんと欠神を伴う眼瞼ミオクローヌスではアンケート調査を行い、診断基準案の作成を考慮中である。レット症候群や結節性硬化症についてもてんかんの側面から研究をすすめている。
3疾患(先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、神経細胞移動異常症)についてCQ作成、システマティックレビューを完了し、診療ガイドライン案を作成した。他の疾患についてもすすめている。
疾患レジストリでは、横断的疫学研究を継続した。現在までに3194症例が登録され、今後、二次調査も予定している。死因研究のレジストリを継続し、62症例が登録され、突然死が3割を占めていた。てんかん難病にかかわる遺伝子解析結果をジストリに積極的に登録することとし、既知遺伝子として 166 遺伝子を抽出し、クリニカルエクソーム解析の結果を登録する準備を整えた。
移行医療および地域難病ケアシステムの構築について研究をすすめた。成長に応じた心身の変化に対応する体制、地域内の病院間格差の是正、疾病学習や啓発活動の重要性を考察した。ケトン食についての全国調査、患者家族会と溺水(入浴および水泳)に関するアンケート調査も行った。次年度に結果を解析する。なお、AMED班の医師主導治験の対照研究を行い、科学的に妥当な結果を得た。
結論
指定難病23疾患につき、疾患概要、診断基準、重症度分類、臨床調査個人票、運用・利用状況を検証した。診断基準、疾患概要等、修正が必要な項目は要請を行った。小児慢性特定疾病から指定難病への円滑な移行が行われるよう、12疾患を小児慢性特定疾病に申請した。成人期へのシームレスな診療移行のために必要な事項の研究をすすめた。また、難病患児を有する家族生活および学校生活への影響、食事治療の現状を調査した。難病の教育・啓発活動の必要性を考察し、実践した。さらに他研究班との連携研究も行った。疾患レジストリ、死因研究は、遺伝子変異データベースとともに、今後もデータ蓄積が期待される。
公開日・更新日
公開日
2021-07-01
更新日
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