格差と社会保障のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200801012A
報告書区分
総括
研究課題名
格差と社会保障のあり方に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
駒村 康平(慶應義塾大学 経済学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊池 馨実(早稲田大学 法学学術院)
  • 沼尾 波子(日本大学 経済学部)
  • 丸山 桂(成蹊大学 経済学部)
  • 山田 篤裕(慶應義塾大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,792,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 2年目の本年度はより政策志向の研究として、1)格差・貧困に関する実証研究、2)生活保護行政及び自立支援プログラムの地域特性の研究・生活保護改革の法的基盤から研究を構成した。
研究方法
「格差・貧困に関する実証研究について」は、生活保護改革動向の評価とあり方を検証するために必要な基礎的な指標を整備すべく、『全国消費実態調査』を用いたデータ分析を実施した。所得だけではなく資産についての貧困の検証を行い、加えて住民税非課税世帯基準などの多様な貧困線による検証も行った。また資産については、特に低所得層の資産保有状況の分析を行った。さらに、WEB調査のデータを用いて、主観的貧困指標の作成を試みた。 生活保護行政及び自立支援プログラムの地域特性の研究・生活保護改革の法的基盤」については、1年度からの継続の福祉事務所におけるヒアリング調査、データ分析から、生活保護制度が持つ課題を明らかにした。
結果と考察
 貧困線として、生活保護の定める最低生活費を設定し、ワーキングプア率、貧困率を年齢別、地域別に測定した。さらに、貯蓄、乗用車、住宅なども考慮した貧困率を推計したところ、生活保護制度による所得基準の貧困基準に資産基準を加えると貧困率は大幅に変動する。またその一方、課税最低限基準では、高齢者の非課税世帯率が大きく上昇する。このほか、国民側が評価する貧困線については、インターネット調査を行い、その水準を左右する要素を抽出し、主観的貧困線の可能性を探った。
 生活保護行政および自立支援プログラムに関する研究は、データ分析、福祉事務所のヒアリング、ケースワーカーに対するアンケート調査を行った結果、生活保護受給世帯の増加とケースワーカーの専門性、経験の低下により、福祉事務所には過大な負荷がかかっていること、このため、制度全体に対する評価が低下していること、さらに現場における様々な取り組み、工夫の実態をまとめた。自立支援プログラムについても、財政的不安定や評価方法の問題がネックになっていることを確認した。
結論
 多様な基準で見た貧困率の測定により、基準によってどの程度変動するかという基礎的なデータ研究の成果を得ることができた。また、生活保護制度と自立支援プログラムについて、その地域特性に応じた現状と課題について整理できた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200801012B
報告書区分
総合
研究課題名
格差と社会保障のあり方に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
駒村 康平(慶應義塾大学 経済学部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊池 馨実(早稲田大学 法学学術院)
  • 沼尾 波子(日本大学 経済学部)
  • 丸山 桂(成蹊大学 経済学部)
  • 山田 篤裕(慶應義塾大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、多様な貧困概念による実証研究を行い、格差・貧困の拡大と経済・社会の相互関係を分析し、所得保障に関する政策的含意を得ることを目的とする。政策に直結した基礎的情報を提供することを意識し、低所得者あるいは生活保護基準以下の貧困者の統計的検証と最低所得保障制度・生活保護制度のあり方についての検討を行う。
研究方法
 本研究のアプローチは、経済学による貧困の実証研究と、法学による貧困に関する規範的研究による総合的研究である。研究体制として、1)格差・貧困に関する実証研究班、2)生活保護改革の法的基盤・自立支援プログラムの地域特性の研究班を設置し、体制を整えた。1年目を基礎的研究、2年目を政策研究と位置づけ、基礎的研究としては、『全国消費実態調査』の個票データを使用し多様な貧困実態を明らかにした。政策研究としては、生活保護改革の法律学的検討、生活保護実施体制の地域特性のヒアリング調査、福祉事務所データを用いた自立支援プログラムの効果分析を行った。
結果と考察
「格差・貧困に関する実証研究」は多様な基準で見た貧困率の測定を行い、生活保護制度の定める最低生活費を基準にした場合、各種資産を考慮した場合、課税最低限を基準にした場合、OECD基準とした場合の貧困率がどの程度変動するか検証した。資産考慮による貧困率の変動、国際比較で採用されているOECD基準と生活保護基準の重なりについても確認できた。また、アンケート調査から、主観的貧困線の可能性についても分析できた。「生活保護改革の法的基盤・自立支援プログラムの地域特性研究」としては、法律学的な規範分析や生活保護行政の課題、自立支援プログラムの効果と課題について取りまとめた。特に、福祉事務所やケースワーカーに対する調査から、受給者増加やスタッフの経験年数の低下から生活保護行政において様々なひずみが起きており、それに対しての現場の取り組み状況を詳細に把握することができた。
結論
 多様な基準による貧困の統計的把握を行い、世帯類型や就業状況、資産考慮など細かな生活実態に即した貧困の計測が行われた。そうした基礎的分析に即した最低所得保障の制度設計が必要となる。地域特性研究からは、自立支援プログラムの実施において、専門職員の雇用状況やセーフティーネット補助金の継続が課題として残されていることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200801012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究は、全国消費実態調査の個票データを用いて、多様な貧困(OECD相対的貧困基準、生活保護基準、資産考慮した貧困率、住民税非課税基準、ワーキングプア)の統計的検証、生活保護改革の法的基盤、生活保護行政・自立支援プログラムの地域特性の検証を行った。経済学的な実証研究と法律学的な規範研究の相互の基礎付けを行った貧困と最低所得保障・生活保護制度の総合的研究として、事実に基づいた政策的含意を提供している。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
現時点では特になし
その他のインパクト
現時点では特になし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
駒村康平
貧困問題と社会保障制度
社会政策研究 , 9 , 10-37  (2009)
原著論文2
沼尾波子
自治体における生活保護行政をめぐる現状と課題
社会政策研究 , 9 , 159-178  (2009)
原著論文3
丸山桂
生活保護とモラルハザード
成蹊大学経済学部論集 , 39 (2) , 50-64  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-