重症多形滲出性紅斑に関する調査研究

文献情報

文献番号
202011067A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
20FC1035
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
浅田 秀夫(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部皮膚科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 末木 博彦(昭和大学 医学部 )
  • 阿部 理一郎(新潟大学医歯学総合研究科)
  • 橋爪 秀夫(浜松医科大学 医学部 皮膚科)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学医学部)
  • 莚田 泰誠(国立研究開発法人 理化学研究所 統合生命医科学研究センター)
  • 大山 学(杏林大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 高橋 勇人(慶應義塾大学 医学部)
  • 藤山 幹子(愛媛大学医学部附属病院)
  • 川村 龍吉(山梨大学 医学部附属病院)
  • 山口 由衣(横浜市立大学 大学院医学研究科 環境免疫病態皮膚科学)
  • 野村 尚史(京都大学医学研究科皮膚科学)
  • 新原 寛之(島根大学医学部皮膚科)
  • 乾 あやの(済生会横浜市東部病院こどもセンター 小児科)
  • 金子 美子(京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
  • 藤枝 幹也(高知大学 医学部)
  • 宮川 史(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、重症多形滲出性紅斑であるStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)及び薬剤性過敏症症候群(DIHS)を対象として、治療法、予後、合併症・後遺症に着目して疫学調査による実態把握を進めるとともに、国内外で経験的に行われてきた治療法の有用性を評価し、診療ガイドラインの策定・改定に資することを目的とする。同時に、講習会の開催を通して、全国の重症薬疹診療拠点病院を中心とした適切な診療提供体制の構築を進めるとともに、疾患・診療情報のホームページへの公開を継続することにより、国民への正しい知識の普及・啓発を図る。
研究方法
1.SJS/TEN、DIHS等の重症薬疹の適切な診療に必要な一定基準を満たす施設について診療拠点病院の新規認定および認定更新を行う。2. 診療ガイドラインの改訂・策定に向けて、SJS/TENの臓器合併症・後遺症(呼吸器障害、肝障害、腎症害)の実態把握のための疫学調査、免疫チェックポイント阻害薬による多型滲出性紅斑の実態を把握するための疫学調査、DIHSの診断・治療・合併症・予後に関する疫学調査を計画、実行する。3.重症多形滲出性紅斑患者およびその対照者のDNAおよび診療情報の収集を行い、重症薬疹発症症例の遺伝情報及び診療情報に基づいてデータベースを構築し、それを基に重症薬疹発症に関与する遺伝的要因を解析する。4.(1)特定臨床研究「重症薬疹に対するステロイドパルス療法の有用性に関する多施設共同臨床研究」のデータを解析し、早期のステロイドパルス療法の有効性・安全性を評価する。(2)SJS/TEN 132症例について予後に影響を与える因子を検討する。(3)SJS/TENの新規のバイオマーカーの検索を目的として、患者の末梢血単核球から産生されるタンパクの解析、皮疹部浸潤細胞の解析を行う。(4)DIHSにおけるサイトメガロウイルス再活性化を予測するバイオマーカーの検討、DIHS後の自己抗体出現や自己免疫疾患発症の予測因子に関する研究、ステロイド治療と合併症に関する研究、T細胞上のHHV-6受容体がDIHSの病態に果たす役割の研究、皮疹部浸潤細胞の免疫組織学的解析を行う。
結果と考察
重症薬疹診療拠点病院認定のための講習会をハイブリッド開催し59施設の認定更新、2施設の新規認定を行った。認定された病院は重症多型滲出性紅斑の診療レベルの向上、疫学調査、情報収集の拠点としての役割を担う。SJS/ TENの臓器合併症・後遺症に関する全国疫学調査、免疫チェックポイント阻害薬による多型滲出性紅斑の実態調査、DIHSの診断・治療・合併症・予後に関する疫学調査を開始した。眼の後遺症に影響を及ぼす因子として発症時年齢、全身重症度スコア、急性期眼重症度スコア、被疑薬(総合感冒薬)が同定された。今回の疫学調査の結果を踏まえて診療ガイドラインの策定・改訂を進める予定である。重症多形滲出性紅斑の発症に関わる遺伝的背景に関して、スルフォンアミドによるSJS/TEN、DIHSの発症にHLA-A*11:01が関連していることが判明し、発症予防への応用が期待される。またこれまでに収集した319症例についてカルテ情報、SNP情報、HLA遺伝子型情報を合わせて「臨床ゲノム薬疹情報統合データベース」を整備した。「重症薬疹に対するステロイドパルス療法の有用性に関する多施設共同臨床研究」の解析の結果、ステロイドパルス療法の有効性を検証することはできなかった。SJS/TENのバイオマーカー候補としてGalectin-7及びRIP-3が同定され、皮膚に浸潤した好中球によるNETs形成が病態に関与していることが示された。DIHSにおけるCMV再活性化予測に特定の血清サイトカイン値が有用であること、またDIHSに対するステロイドの初期投与量が、ニューモシスチス肺炎、CMV再活性化のリスクと相関する可能性が示された。
結論
重症薬疹診療拠点病院については継続的な講習会の開催により、診療レベルの向上・診療体制の充実を図るとともに、本政策班と拠点病院が連携して情報収集活動を進めてゆく予定である。SJS/TEN、DIHSに関する疫学調査を開始したが、本調査結果を踏まえて診療ガイドラインの策定・改訂を進める予定である。重症多形滲出性紅斑の発症に関わる遺伝的背景の研究については「臨床ゲノム薬疹情報統合データベース」が整備されたことにより今後さらなる薬疹関連遺伝子の同定が進むものと期待される。本研究で得られた重症多形滲出性紅斑の新規治療法、診断、病態に関する知見は、今後の臨床応用、診療ガイドラインの策定・改訂に資するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2022-03-30

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011067Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,000,000円
(2)補助金確定額
24,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,491,767円
人件費・謝金 5,317,468円
旅費 0円
その他 5,704,768円
間接経費 4,500,000円
合計 24,014,003円

備考

備考
自己資金14,002円
その他(利息) 1円

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-12-15