一時預かり事業のあり方に関する調査研究

文献情報

文献番号
200801009A
報告書区分
総括
研究課題名
一時預かり事業のあり方に関する調査研究
課題番号
H19-政策・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
尾木 まり(有限会社エムアンドエムインク 子どもの領域研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,904,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅子育て家庭にとって実施場所や利用形態などの点で利便性が高く、一時的な保育を受ける子どものニーズに十分に対応しうる保育従事者を配置する仕組みを構築し、それを安定的に供給することを目的とし、今後の一時預かり事業のあり方を検討する。具体的には、国が平成19年に創設した在宅子育て家庭一時預かりパイロット事業に焦点をあて、調査研究を進めた。
研究方法
1)2年間で実施したヒアリング調査の結果及び資料を分析することにより、「一時預かり事業(地域密着型)の手引きを作成した(運営編、実務編)。
2)モデル研修を実施の上、研修体系試案の作成。
3)一時預かりパイロット事業の利用者・未利用者を対象とした質問紙調査の実施により、本事業への意識や利用の効果について把握した。
結果と考察
一時預かり事業(地域密着型及び地域密着Ⅱ型)を対象とし、12カテゴリー、36項目で構成される手引きを作成した。カテゴリーは、総則的事項、事業の枠組み、適切な整備と運営に向けて、施設・設備・備品、職員体制、職業倫理、研修、一時預かり事業の実施、保護者への利用促進・支援などである。また、一時預かり事業従事者を対象し、基礎研修、スキルアップ研修からなる研修体系試案を提示した。
さらに、利用者には一時預かり事業に対して子どもへの良い影響や親子関係の調整機能が評価されており、子どもの健やかな育ちを保障する観点からの一時預かり事業の意義への認識と保育の質の確保が不可欠であることが示唆された。その際、本研究で示した保護者の子どもを預ける抵抗感を軽減するための配慮も考慮する必要がある。
結論
希望するすべての家庭が利用できるように一時預かり事業を整備・普及させるという目的を達成するため、量的な整備拡大と、質を確保するための研修体系がすべての一時預かり従事者を対象として構築される必要性、安定的な運営を行う上で必要最小限担保されるべき経費を指摘した。また、一時預かり事業は保護者ニーズに着目した支援と捉えられがちで、その必要性について社会的合意が形成されていない。しかし、一時預かり事業の利用が子どもの成長発達に寄与し、また親子関係を調整する機能を持つなど、保護者の親としての育ちを支え、地域子育て支援ネットワークにつなげる一つの方策であることが示唆されている。このような育児への第三者の関与が社会全体で子育てを支えていくことにつながることへの意識啓発が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200801009B
報告書区分
総合
研究課題名
一時預かり事業のあり方に関する調査研究
課題番号
H19-政策・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
尾木 まり(有限会社エムアンドエムインク 子どもの領域研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅子育て家庭にとって実施場所や利用形態などの点で利便性が高く、また一時的な保育を受ける子どものニーズに十分に対応しうる保育従事者を配置する仕組みを構築し、それを安定的に供給することを目的として、今後の一時預かり事業のあり方を検討した。
研究方法
平成19~20年度に在宅子育て家庭一時預かりパイロット事業を実施した10地方自治体及び13事業について実地調査を行い、その分析を行った。さらに、一時預かり類似事業の実績のある7団体へのヒアリング調査、類似事業の研修テキスト分析、パイロット事業保育従事者のためのモデル研修の実施及び研修体系試案の検討、パイロット事業利用者及び未利用者への質問紙調査等を実施した。
結果と考察
主な結果は以下の4点である。1)NPO法人など多様運営主体により、親子が行き慣れている場所や駅周辺など利便性の高いところでの一時預かり事業が広がりつつある。2)利用が不安定という特性を持ちながらも、利用者の希望を受け入れるためには、家賃と基本的な人件費の担保が必要であり、限られた財源の中で拡大するためには安定的な事業との併設・協働が有効である。3)質の確保のためには、資格や保育所保育経験の有無、職務内容にかかわらず,すべての一時預かり事業従事者への継続的な研修が必須であることから、必要な研修体系試案を作成し、科目名及び内容を提示した。4)一時預かり事業の利用は保護者ニーズの充足とともに、子どもの発達を促す効果や親子関係調整の機能があることが利用者に評価されていた。
これらの結果を踏まえ、一時預かり事業を全国に普遍化させる上で求められる機能と役割を理念として提示し、質を確保した安定的運営に必要な諸条件、研修体系試案及び具体的な方法を12カテゴリー36項目で構成される「一時預かり事業の手引き(地域密着型)」として示した。
結論
一時預かり事業の利用促進に向けての抜本的な意識改革が必要である。一時預かり事業は保護者のニーズに対応するだけでなく、子どもの成長発達に寄与し、親子関係の調節機能を持つなど、保護者の親としての育ちを支え、地域子育てネットワークにつなげる一つの方策であることへの認識を高める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200801009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 1)一時預かり事業に求められる機能や役割を明確にし、そのために必要となる配慮事項を提示した。2)保育者を含む一時預かり事業従事者に必要な研修体系の試案を提示した。特に研修内容を「研修後に獲得する知識・技術・態度」として示し、研修の実施体制により研修成果に差が生じないようにした。3)子育て家庭への質問紙調査により、特に未利用者の利用に対する抵抗感や利用者の効果等について分析し、利用促進の方策を検討した。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
 一時預かり事業(地域密着型及び地域密着Ⅱ型)を対象とし、12カテゴリー、36項目で構成される手引きを作成した(総則的事項、事業の枠組み、適切な整備と運営に向けて、施設・設備・備品、職員体制、職業倫理、研修、一時預かり事業の実施、保護者への利用促進・支援等)。また、一時預かり事業従事者を対象とし、基礎研修、スキルアップ研修からなる研修体系試案を提示した。
その他行政的観点からの成果
 本研究で示した「一時預かり事業(地域密着型)の手引き」は国が今後ガイドラインを策定するにあたり、その素案として活用しうるものである。また、一時預かり事業(地域密着型)を実施する地方自治体及び運営主体が実施にあたり配慮すべき事項が盛り込まれており、活用できると考えられる。
その他のインパクト
研究成果について、全国紙2社、幼児教育専門誌1社より取材を受け、一時預かり事業の取り組みと方向性についての記事が新聞、幼児教育・保育に関する専門誌に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
「子ども家庭福祉行政機関の機構改革と運営に関する研究(2)-保育・子育て支援、児童健全育成分野を中心に」、「多様な保育サービスにおける保護者支援と保育指導」
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
日本子ども家庭福祉学会(2008年2本)、日本社会福祉学会(2008年1本)、日本保育学会(2009年1本)、日本子ども家庭福祉学会(2009年2本)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-