介護保険制度改正にともなう予防重視効果の検証 -介護予防ケアマネジメントシステムの構築を目指して

文献情報

文献番号
200801005A
報告書区分
総括
研究課題名
介護保険制度改正にともなう予防重視効果の検証 -介護予防ケアマネジメントシステムの構築を目指して
課題番号
H18-政策・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大川 弥生(国立長寿医療センター 研究所 生活機能賦活研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 隆次(日本介護支援専門員協会)
  • 楠 正(日本薬剤疫学会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,629,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 最終年度の本年は、これまでに明らかになった、生活機能向上にむけた介護予防の課題である、従来改善の対象とされてきたが、新たな課題が生じた脳卒中モデルと、医療の関与に重点をおき、また最終年にあたり「よくする」介護(含:ケアマネジメント)のあるべき姿をまとめた。
研究方法
○一自治体が設置した「生活機能相談窓口」にて、相談・指導等の介入を受けた脳卒中の既往を有する利用者111名の生活機能低下の経過の分析及び介入内容と結果の分析を行った。
○「廃用症候群モデル」患者(N=249)の生活機能低下の経過分析と向上にむけての働きかけの内容と効果を分析し、2医療機関と1自治体で生活機能向上を目的とした医療と介護の連携の実現にむけてのとりくみを実施した。
○本研究班での生活機能調査結果や介護現場の実地調査などにもとづき、現在の介護の課題の解決やあるべき姿に関してまとめ、それへの意見等をもとに再度内容を検討した。
結果と考察
○脳卒中においても「廃用症候群モデル」の時期があることを認識して働きかけるシステム・プログラムの再構築が必要である。
○医療機関からの退院時や疾患発症・増悪時において、「生活機能相談窓口」(具体的「活動」項目向上と生活不活発病予防・改善に重点)での、介護予防の「水際作戦」の短期間での顕著な効果が立証された。一方で医療・介護ともに、生活機能(特に活動)と生活不活発病予防・改善)の観点からの各々の取り組みと連携は不十分であった。
○具体的には「活動」項目を留意し、生活不活発病改善にむけた「よくする介護」の観点からの介入が効果的であり、その実施が今後の介護予防として課題である。
○特に1)単に不自由さを手伝う(補う介護)ではなく、介護予防の観点重視、2)介護マネジメント全体の中での機能発揮、3)利用者の尊厳重視、自己決定権重視、の問題意識をもって介護のあり方をまとめた。
結論
○今後介護予防がより効果をあげるためのポイントとして、1)従来改善の対象とされてきたはずの脳卒中での「廃用症候群モデル」の時期を認識したシステム・プログラムの再構築。2)「治し支える医療」と「よくする介護」の連携の構築が必要(特に疾患発症・増悪時での実践は急務)。
○最終年度のまとめとして、介護予防として、システム及びケアプランとしても不十分といえる「要介護状態進行」を予防・改善するために「よくする介護」のあり方についてまとめた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200801005B
報告書区分
総合
研究課題名
介護保険制度改正にともなう予防重視効果の検証 -介護予防ケアマネジメントシステムの構築を目指して
課題番号
H18-政策・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大川 弥生(国立長寿医療センター 研究所 生活機能賦活研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 隆次(日本介護支援専門員協会)
  • 楠 正(日本薬剤疫学会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)平成17年の介護保険制度改正における予防重視の方向性の効果を、介護予防の要と位置づけられた「生活機能」(WHO・国際生活機能分類)及び「生活不活発病(廃用症候群)」への効果について検証し、現状と課題を明らかとし、それを通じて、2)生活機能向上にむけた介護予防ケアマネジメントシステム構築のあり方を明らかにする。
研究方法
 ICFにもとづき生活機能の実態把握を行い、ICFの生活機能モデルで生活機能低下者の特性、影響する要因、リスク因子などについて分析を加えた。その結果に立って生活機能向上にむけた介護予防システムのあり方を、プログラム・サービスメニューも含めて検討した。これらは自治体単位及びこれまで必ずしも重要視されてこなかった一般医療の関与のあり方を重視して進めた。また介護予防ケアマネジメントに関する認識調査なども行った。
結果と考察
○外来通院をしているにも関わらず生活機能(特に活動)低下者が多い。また入院・疾患増悪時の生活機能(特に活動)低下予防・改善の取り組みが不十分。
○「活動」項目に留意し、生活不活発病改善にむけた「よくする介護」の観点からの介入が効果的であり、その実施が今後の介護予防の課題である。
○自立を「普遍的自立」と「限定的自立」に区別することが、対象者発見及び効果判定に有益。
○介護予防ケアマネジメントに関与する専門職は、生活不活発病やICFの重要性は認識しているが、それらに対応する具体的技術面の向上が課題。
○「活動」の要である歩行向上(「つくられた歩行不能」予防)への働きかけが不十分。
○脳卒中モデルに廃用症候群モデルの時期があり、これを認識した取り組みが不十分。
結論
○「治し支える医療」と「よくする介護」との、生活機能向上にむけた連携が必要(特に疾患発症増悪時(含:入院→退院時)の連携が緊急の課題)。
○医療機関の介護予防への積極的取り組みが必要(病院は生活機能低下者を早期に発見する最適の場)。
○現行の“慢性期”の介護予防だけでなく、“急性期”に重点をおくことが必要。
○脳卒中モデル」に「廃用症候群モデル」の時期があることを認識したシステム・プログラムの再構築が必要。
○生活不活発病及び「よくする介護」についての啓発が国民全体へ必要。
○以上もふまえ、介護予防ケアプランとしても不十分ともいえる「要介護状態進行」を予防・改善するために「よくする介護」のあり方についてまとめた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200801005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
○今後介護予防がより効果をあげるためのポイントとして、以下の点を明確にした。1)従来改善の対象とされてきたはずの脳卒中で、これまで見落とされていた「廃用症候群モデル」の時期を認識したシステム・プログラムの再構築、2)「治し支える医療」と「よくする介護」の連携の構築(特に疾患発症・増悪時での実践は急務)。
○介護(含:ケアマネジメント)のあり方を特に1)単に不自由さを手伝う(補う介護)ではなく、2)介護予防の観点を重視した「よくする介護」としてまとめることができた。
臨床的観点からの成果
今後の介護予防のシステム・プログラム設計上次の点が重要。
○医療機関の積極的取り組みを重視した新たなシステム構築
○現行の“慢性期”の介護予防だけでなく“急性期”に重点をおく必要(介護予防の「水際作戦」)
○「脳卒中モデル」に「廃用症候群モデル」の時期があることの認識に立ったシステム(含:“維持期リハ”の再検討)
○生活不活発病及び「よくする介護」についての啓発が専門職と国民全体へ必要
○具体的にはターゲットとする「活動」項目を明確にし、生活不活発病改善にむけた「よくする介護」の観点からの介入。
ガイドライン等の開発
○厚生労働省の社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会で示された我が国におけるICFの「活動・参加の評価基準点(暫定案)」策定時の基礎資料となった。
○まとめた「よくする介護のあり方」は、平成20年度文部科学省介護福祉等に係る講習会テキストに活用された(平成21年度も予定)。
その他行政的観点からの成果
「安心と希望の介護ビジョン」(2008年9月17日)にて介護の理念に立った専門性について、従来の「補う介護」から「よくし、助ける介護」への転換、及び「治し支える医療」との連携、また脳卒中リハの再構築等を述べた。
その他のインパクト
○生活不活発病、及びその観点からの介護予防のあり方については各種新聞、テレビ等のメディアでとりあげられた。
○政策科学推進研究事業公開シンポジウム(2009年2月20日)にて「高齢者の『生活機能』向上の観点から環境を考える;人的・物的・制度的環境について」を発表した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
17件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-